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 「クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、1999年に日産自動車のCEO(最高経営責任者)に就任し、同社を見事に再建したカルロス・ゴーン氏が採用したことによって有名になった企業改革手法だ。機能の異なる複数の部門から社員を集めてチームを作り、経営課題の解決に取り組ませる。

 部門間の壁が高くなりセクショナリズムの弊害が業績を悪化させている企業にとって、CFT手法は特に有効な処方せんとなり得る。最近では三菱自動車工業、三洋電機、am/pmジャパンなどが採用し、企業再建を図っている。am/pmジャパンでは早くも成果が出始めた。

 もちろん、CFTは企業再建だけに有効なわけではない。セクショナリズムの弊害は大なり小なり大半の企業で起こるからだ。世界的に有名な優良企業、米ゼネラル・エレクトリック(GE)も実質的にこの“日産流”の企業改革手法を実践し続けている。しかも、その組織体制はCFT活動を定常化させるための究極の形の1つだと言っていい。

 GEと言えば、「シックスシグマ」と呼ぶ企業改革手法を1995年から順次グループ各社に導入し、大きな業績効果を出し続けていることで知られる。日本にもGEキャピタルリーシングなど約30社の事業会社があり、各社はシックスシグマ手法を使って毎年度、経営課題を解決している。

 現在では、GEグループの多くの事業会社は「クオリティ部」という組織を置く。このクオリティ部こそ、究極のCFT活動推進体制の中核を成すのだ。

 クオリティ部は、各社CEOの直轄部門となっている。CEOが年度始めに掲げた経営課題を解くためのプロジェクトチームを、クオリティ部の社員がリーダーとなって結成する。課題の内容に応じて、チームのメンバーを全社から選ぶ。このため、「チームは結果的にCFTとなることが多い」(日本GEの山崎肇・社長付マスターブラックベルト)。

 クオリティ部という組織を置くメリットの1つは、「リーダーをプロジェクト専業とすることでスピーディーに活動できる点だ」(同氏)。リーダーが、ライン部門の業務を抱えているとプロジェクト活動に集中しきれない。また、リーダーはどのライン部門にも所属していないので、特定部門の利益に傾倒することなく、全体最適の視点で物事を考えるようになる。

 クオリティ部には、幹部候補生を育成するという効果もある。同部に配属される社員の大半は、ライン部門の優秀な中堅社員。クオリティ部で成果を出し、平均2~3年で現場に戻る。CEOをはじめ経営陣と綿密なコミュニケーションを取りながら、リーダーとして全社的なプロジェクトを指揮する経験を積むため、「1つ上のポジションに昇格してライン部門に戻ることが多い」(山崎マスターブラックベルト)。

 もっとも、GE流がすべての日本企業にとってベストな解だというわけではない。GEからほかの日本企業に転職した人から、「GE流は素晴らしいが、ほかにも優れた経営手法はある。GE流で奮起する社員も入れば、別のやり方が性に合う人もいる」という声を聞いたことがある。「GEのようなコングロマリット(複合企業体)なら経営課題は尽きないが、CFTをあえて組む必要のない企業もあるだろう」という意見もあった。

 「和をもって尊し」という風潮を重視する日本企業に、明確な配属基準も示さずにクオリティ部のような組織を置くと、他部門の社員の反感や不満を引き起こしかねない。だが、何も手を打たなければ、全社視点で自立的に行動できる社員はそう簡単に育たないのも確かだろう。CFT活動を成功させるポイントと豊富な事例を、日経情報ストラテジー11月号に掲載した。機会があればぜひ目を通してほしい。