商社2社の合併で誕生した双日が,社内網の統合を3月に完了させた。国内のネットワークは広域イーサネットをベースに一新。海外はフレーム・リレーとIP-VPNの採用などで統合したが,さらなるネットワーク効率化の検討も始めている。

 双日は,ニチメンと日商岩井が合併して2004年4月に誕生した総合商社である。合併に伴って,異なる通信事業者のサービスを使うなどしていた旧2社の社内ネットワークを一つに統合した。2社とも拠点が国内外に広く散らばっていたため,統合までの作業は非常に大掛かりなものになった。

 両社ともに国内のネットワークは,ATM(非同期転送モード)をベースにしていたが,合併後は広域イーサネットをベースとした構成に一新。海外は,フレーム・リレーと専用線を組み合わせていた旧・日商岩井のネットワークをベースに,フレーム・リレーとIP-VPNの組み合わせに変更した。

 ネットワーク統合により,双日は年間の通信コストを合併前の約41%に当たる2億2000万円削減することに成功した。国内と海外を合わせて統合前は年間で約5億4000万円(2002年度)かかっていた通信コストは,現在約3億2000万円に収まっている。

国内は広域イーサをメインに選択

 ニチメンと日商岩井が合併を発表したのは2002年12月。2004年1月には,海外ネットワークの統合を完了させた。国内は2004年7~8月の本社移転を経て,2005年3月に統合作業を実施した。

 双日のネットワーク構成は,国内と海外で大きく異なっている。現在,国内では複数の通信事業者の広域イーサネットを利用している。ATMをメインとしたネットワークには,コストと帯域の両面で課題があると判断したからだ。

 刷新前のネットワークは,日商岩井が日本テレコムの「ATM専用線サービス」を主に採用。KDDIのIP-VPN「アンドロメガ」などを組み合わせて運用していた。ニチメンでは,NTT東日本と西日本の「ATMメガリンク」がメイン。国内の支店や関連会社では,NTTコミュニケーションズの「スーパーリレーFR」やKDDIのフレームリレーサービスを採用していた。

 新しく導入した広域イーサネットは,KVHが提供する「Ether-MAN Plus」である。東京・赤坂にある本社や六本木にある事業所,新宿のデータ・センターなど主要な拠点で採用した。

 Ether-MAN PlusはMPLS(multiprotocol label switching)のネットワーク上でイーサネットのフレームを転送する「EoMPLS」と呼ぶ仕組みを使う。複数の拠点間で張るパスに個別に帯域制御をかけたり,ネットワーク内で複数の通信経路を確保できるなどの特徴を持つ。さらに,Ether-MAN Plus網へのアクセス回線をすべて2重化した。

決め手は安さと運用のしやすさ

福山 恵大
双日
情報企画部情報企画課課長補佐

 双日はKVHのほかに,ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC(当時,現・日本テレコム)の「Customer Access Network高速イーサネットサービス」とNTT東日本の「メトロイーサ」の導入を検討したという。「決め手となったのは費用。KVHの提案が最も安価だった」と,情報企画課の福山恵大課長補佐(写真)は説明する。

 メイン回線とバックアップ回線は,KVHのシングル・キャリア構成とした。メインとバックアップを別の通信事業者の広域イーサネット・サービスに接続するという提案もあったが,障害発生時の対応といった運用のしやすさで,KVHの提案を評価した。KVHのサービスが金融機関で採用された実績も考慮したという。

 双日の関連会社のネットワークは,パワードコムの「Powered Ethernet」と日本テレコムの「高速イーサネットサービス」を採用している。関連会社のネットワークを任せている双日システムズが選んだサービスが,この二つだった。

 また今後閉鎖する予定の拠点では,統合前に使っていたNTTコミュニケーションズの「e-VLAN」をそのまま使っているケースがある。

移転した拠点にIP内線電話を導入

 合併によって移転・開設した拠点には,IP内線電話を導入した。対象となったのは東京・赤坂の本社と六本木の事業所。東京・台場のマシン・ルームにあるIP-PBXを利用して,この3拠点で自営のIPセントレックス内線網を構築した。

 具体的には,旧・日商岩井の本社があった台場で使っていたPBX(富士通のES3380D)を,新本社に移設せずそのまま活用。モジュールを追加し,IP-PBXに移行させた。「赤坂の本社にPBXを購入すると費用がかかるうえ,台場のPBXは高価で使用期間も残っていた。PBXをIP化する世の中の流れも考慮した」(情報企画部の赤司一郎部長)結果である。

 赤坂と六本木にはIP電話機を350台購入した。さらに,この2拠点には構内PHSを整備。旧・日商岩井が本社内で使っていた1400台のPHS端末を転用,加えて800台を買い増した。合計で2200台のPHS端末を,基本的には赤坂と六本木の全社員に配布した。

サーバーなどは集約して運用

 双日の現在のネットワークは,ホスト・マシンで稼働させているアプリケーションやサーバーの集約計画を踏まえて構成している()。集約の狙いは,こうしたコンピュータ・システムを一元化して運用し,効率化とコスト削減をはかることである。

 コンピュータ・システムは現在,神奈川の新横浜と磯子,東京・新宿の3カ所のデータ・センターで運用している。ただし今後は,新宿のデータ・センターに集約していく計画。既に7~8割を新宿に集約し終えた。

 この方針は海外も同様だ。世界の18カ所に点在していたコンピュータ・システムを,新宿と米ニューヨークの2カ所に集約させている。

図 双日の国内ネットワーク KVHの広域イーサネット・サービス「Ether-MAN Plus」をベースにしている。サーバー類は新宿のデータ・センターに集約していく方向だ。