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千村 保文 沖電気工業 IPソリューションカンパニー バイスプレジデント(兼)IP電話普及推進センタ長

図1 IPセントレックスに起こった二つの変化
写真1 沖電気工業のソフトフォン「Com@WILL」
写真2 モバイル・セントレックスで使えるデュアル端末 左はNTTドコモが提供するFOMAと無線LANのデュアル端末「N900iL」。右は米モトローラのGSM/GPRS(携帯電話網)と無線LANのデュアル端末「CN620」。
1年間にわたって,IPセントレックスとその周辺技術を解説してきました。最終回の今回はIPセントレックスの課題と将来像を検討します。今後のIPセントレックスの発展は「電話と連携した関連機能をどれだけ生み出せるか」にかかっていると,筆者は考えます。

 この1年間でIPセントレックス・サービスを取り巻く環境は大きく変化しました。前回説明した緊急通報への対応もその一つです。しかし,本質的には次の二つの変化が重要だったと考えます。

 一つは,ユーザーの導入目的が「コスト削減」中心から「業務効率の向上」中心に変わったことです。これはIPセントレックスの提供者側から見れば,「『コスト削減ができる』だけではユーザーのニーズに応えられなくなった」とも表現できます。そこで,コスト削減だけではない,IPセントレックスの新しい「付加価値」を創出する必要性が急激に高まっています。

 二つ目の変化は,無線IP電話を使うモバイル・セントレックスの登場で,IPセントレックスの適用範囲が拡大したことです(図1[拡大表示])。今回は,この二つの変化を切り口としてIPセントレックスの課題と将来像を考えたいと思います。

「安い」だけでは価値がない

 1年前,IPセントレックスは「機器の一元管理による安価な内線IP電話」という認識が主流でした。しかし,現在は「安さ」がそれほど注目されなくなっています。電話のコスト削減だけを追及するなら,新たに登場してきた安価な直加入電話サービスも選択肢に上がります。このような中で,IPセントレックスはコスト削減以外の価値の創出が期待されています。

 具体的には,IPセントレックスが提供できるPBX機能の充実や,テレビ電話,通話の暗号化などへの対応です。しかし,それ以上に,他のアプリケーションとの連携(アプリ連携)による業務効率の向上効果がより重要と考えます。IPセントレックスはSIPサーバーなどをデータ・センターで一元管理するので,アプリ連携が技術的には容易です。

 コンピュータ(サーバー)上で提供されるアプリケーションは,以前から全社レベルの一元管理が進んでいます。しかも多くの場合はデータ・センターでサーバーを運営しています。物理的にもコンピュータのアプリケーションとIPセントレックスのシステムは同一の場所に設置できるので,連携させやすいのです。加えて,「SIPサーブレット」のようなアプリ連携を支援するオープンなAPIも存在します。

「アプリ連携」が生き残る道

 しかし現時点で,一般のオフィスで使えるアプリ連携としては「ユニファイド・メッセージ」や「プレゼンス管理」,「グループウエア連携」,「ソフトフォン」(写真1)が主流です。グループウエア連携といっても「マウスで名前をクリックすると電話がかかる」といった極めて初歩的な機能に限られています。IPセントレックスの提供者側も,新しいアプリ連携の開発に努力しながらも,試行錯誤しているのが現状です。

 ただ最近は個人情報漏えい対策として再度注目を集めているシン・クライアントなど,IPセントレックスと連携できそうな技術が登場しています。特にパソコンの機能をデータ・センターで一元管理するシン・クライアントは,IPセントレックスと親和性が高いと考えます。また,電話端末も大型の液晶ディスプレイの搭載やJava実行環境の内蔵など,高機能化しています。端末が高機能になれば,新しいアプリ連携の可能性も広がるでしょう。

 新技術や高機能端末を活用し,IPセントレックスを単なる電話ではなく,「電話を含めた様々なアプリケーションを提供できるサービス」へと発展させることが,IPセントレックスを提供する側の責務です。もっと言えば,提供者側は電話としての品質を高めつつも,アプリ連携を創出することが生き残る道です。

固定-携帯融合時代の先駆

 IPセントレックスでの新しいアプリ連携の創出は,今後の「FMC(固定-携帯融合)」時代に向けても重要です。モバイル・セントレックスはFMCを先取りするシステムといえます(写真2)。また,FOMAと無線4LANのデュアル端末「N900iL」は国内におけるFMC端末の第一歩と位置付けられます。

 海外では既に英BTと韓国KTがFMCサービスを提供,または提供準備中です。今後,日本でもモバイル・セントレックスが企業利用の枠を越えて,個人ユーザーや家庭で使われるFMCサービスへと発展するでしょう。そうなれば,市場もシステムの規模も,ケタ違いに大きくなります。通信事業者や通信機器メーカーは現在のIPセントレックスやモバイル・セントレックスを通して,FMC時代に向けた技術や,アプリ連携の創出ノウハウを蓄積してゆく努力が必要だと考えます。