大型製品は冗長性に優れる
ここまで,おもにオフィスのフロアで使うボックス型のLANスイッチを見てきた。次に,企業LANの幹線やサーバー・ファームなどで利用されるシャーシ型スイッチの機能を見てみよう。
シャーシ型の大型LANスイッチ製品の数は少ない。というのも,大型スイッチになると,レイヤー3スイッチの機能が求められるようになるからだ。多くの機器ベンダーが,シャーシ型製品はすべてレイヤー3スイッチとしてラインナップを揃えている*。
レイヤー2機能だけにフォーカスしたシャーシ型スイッチとしては,日立電線のApresia8004/8007やNECのCX2600/220がある。また,ファウンドリ・ネットワークスのFastIron(ファストアイアン)シリーズのように,ソフトウエアでレイヤー3スイッチに拡張可能な製品もある。
こうした大型LANスイッチに求められるのが,LANを止めずに運用するための冗長化機能である。
その一つがハードウエアの冗長化である。電源を2個以上装備でき,複数装備したときに1個が故障してもLANスイッチ自体は動作するようになっている。電源は取り外し可能になっており,LANスイッチを動作させながら交換できる。
また,LANの回線に障害が起こったときに,自動的に障害のある部分をう回する機能も持つ(図8[拡大表示])。これを実現させるプロトコルとしては,スパニング・ツリーが有名であるが,このスパニング・ツリーには弱点がある。予備の経路に切り替わるのに最大で50秒程度もかかってしまうのである。そこで大型LANスイッチでは,スパニング・ツリーの収束時間を最大5秒程度に短縮したRSTP*や,ベンダー独自の経路冗長化プロトコルを採用している。
広域イーサで使う拡張VLAN
シャーシ型のLANスイッチは,通信事業者が広域イーサネットなどのサービスを提供するためにも使われる。最後に,広域イーサネット・サービスで使われるLANスイッチの機能を見ておこう。
広域イーサネットは,LANスイッチによって構築した*レイヤー2ネットワークを使って,遠隔地にある企業の拠点をつなぐサービスである。そのサービスを実現するために使われている機能が,拡張VLANである(図9[拡大表示])。
通常のタグVLANは,MACフレームにVLANを識別するための「タグ」と呼ばれる情報を付加する。LANスイッチはフレーム転送時にこのタグを見てVLANのグループを判断し,適切なポートにフレームを転送する。
広域イーサネットでは,通信事業者がユーザー企業を識別するために,網内のLANスイッチがタグをもう一つ付ける。これが拡張VLAN機能である。
帯域制御でポートの利用帯域を制限
サービス提供にもう一つ欠かせないのが,シェーピング機能である。フレームのやりとりを決められた帯域に制御する機能である。
イーサネットの速度としては,10M,100M,1G,10Gの4種類がある。ところが広域イーサネット・サービスの多くは,アクセス回線の帯域を1Mごとや10Mごとに細かくメニューを用意している。これは,LANスイッチのシェーピング機能を利用したものだ。こうすることで,20Mや30Mビット/秒といった中間速度のサービスを提供できるようになる。
さらに,トラフィックの種類ごとに保証する帯域を設定する帯域保証機能を使うと,「IP電話のトラフィックは必ず3Mビット/秒ぶんは確保する」といった使い方ができる。ユーザーにきめ細かなサービスを提供するために,LANスイッチのこうした機能が欠かせないわけだ。
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