写真  SWEST<BR>静岡県浜松市で開催された。全国から,160人ほどの組み込みソフトウェア技術者が集まった。
写真 SWEST<BR>静岡県浜松市で開催された。全国から,160人ほどの組み込みソフトウェア技術者が集まった。
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 大規模化,短納期化が進む組み込みソフトウェアの品質をいかに向上させるか―。2005年8月25日から2日間にわたって,「第7回組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST:Summer Workshop on Embedded System Technologies)」が開催された。中心となった話題の一つはずばり品質。初日は深夜まで,2日目は早朝からさまざまなセッションが設けられ,講師の話に熱心に耳を傾けたり,参加者同士で議論を交わす場面が多く見られた。

事前の検証作業も重要

 品質をテーマにしたセッションの中で多くの聴衆を集めたものの一つが,東陽テクニカ ソフトウェア・システム研究部の二上貴夫部長が講師を務めた「組込みソフトウェアの信頼性を向上させる方法」。信頼性は「約束したことを確実にやれるかどうか」(二上氏)を示す言葉で,品質を決める重要な要素となる。

 そのための施策として二上氏が挙げた要素の一つがPlan/Do/Seeのサイクル。「言葉にすると当たり前だが,現場ではあまり実施されてこなかった。レビューをきちんとこなすと,信頼性は5~6倍向上できることを認識すべき」(二上氏)。また,既に実施済みの項目を後からチェックするレビューだけでなく「リハーサル(下稽古)や予習のように,本格的な活動の前に検証作業を実施することも重要」(二上氏)と指摘した。

 検証の手法についても,注目すべき提言が見られた。二上氏は優れた検証方法の一例として,航空機の「FAA Do178B」を紹介。この方法論は「審査官が良いと判断したら合格とする」という米国流の思想に基づいている。「特定の人に任せるのは危なそうにも見えるが,ある意味とても合理的。世界で最も安全な乗り物と言われる飛行機が,この方法で作られていることを無視してはならない」(二上氏)。

コストではなく品質で勝負

 複数の技術者や研究者がパネリストとして登場した「行列のできる組み込みセミナー&ディスカッション」でも,品質に関する話題が多くを占めた。パネリストの一人である電気通信大学の西康晴講師が力説したのは「品質で勝つ戦略」の必要性。現状ではコスト削減や開発期間短縮が最重視されがちだが,その結果品質が低下する。そして「手戻りが頻発する。これこそが失敗の本質だ」(西氏)。あるべき姿は,品質を向上させて手戻りを減らし,結果としてコスト削減や開発期間短縮を図ることだという。

 これを実現するためのキーワードとして西氏が挙げたのは「融合」。日本のものづくりの強みは,複数のドメイン(領域)の製品群をうまく融合させていること。ネットワーク家電,カメラ付き携帯電話などがその一例だ。組み込みソフトウェア開発もこれにならい,「業界で蓄積されてきた知見を自社に持ち帰り,組織にうまく融合させるにはどうすればよいかを議論すべき。そうすれば,独自の優れた開発手法が出来上がるはず」(西氏)。

 2日間を通して目立ったのは,技術者たちが活発に意見交換していたこと。研究成果をポスター展示した大学生に対して企業からの参加者が熱心に質問したり,ざっくばらんな座談の席が複数設けられて深夜まで議論が続くなど,企業や大学の枠を越えた技術交流が見られた。

 あるセッションで「組み込みの技術者は閉鎖的で自社から出ない人が多い。コミュニティに参加すればすぐにも手に入る技術情報に,なかなかたどり着けない」という問題点が指摘されていたが,SWESTはそうした状況に風穴を開ける場の一つと言えそうだ。