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英TTPComの池田清秀・日本事務所代表
英TTPComの池田清秀・日本事務所代表
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「AJAR」の開発ツールの例 外部のハードウエア・チップを利用せずにパソコン上ですべての動作をシミュレーションできる。
「AJAR」の開発ツールの例 外部のハードウエア・チップを利用せずにパソコン上ですべての動作をシミュレーションできる。
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 携帯電話関連の技術を様々なベンダーに提供する英TTPCom。そのTTPComが「AJAR」と呼ぶ携帯電話の開発用プラットフォームを発表した。AJARは,携帯電話の基本システムに加えて,ブラウザ,メールといった標準的なアプリケーションをあらかじめ用意することで,端末ベンダーの開発コスト削減に役立つという。日本での「AJAR(アジャール)」の本格展開をこの9月から始めた,英TTPCom日本事務所代表の池田清秀氏(写真上)に,同社の日本戦略と携帯端末開発の動向を聞いた。(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション)

--TTPComの概要を教えてほしい。

 英国ケンブリッジに本社がある携帯電話技術そのものを開発する会社だ。携帯電話に使う半導体やソフトウエアに関連する技術を,携帯電話関連ベンダーに提供している。主な顧客には,米アナログデバイセズ,米インテル,ルネサステクノロジー,韓国LG電子,米モトローラ,台湾BenQなどが含まれる。

 2004年に世界で出荷された携帯電話の約20%にTTPComの半導体技術が,約9%にソフトウエア技術が搭載された実績を持つ。TTPComは,大手ベンダーからのれん分けされたのではなく,完全に独立系ベンダーとして成長してきた点も特徴だろう。

--日本での活動状況は。

 日本では10年ほど前から活動している。これまで,ルネサステクノロジーに携帯電話に使うRFIC(radio frequency integrated circuits)の技術を,シャープにGSM端末用のソフトウエア技術を提供してきた。日本事務所を正式に開設したのは2001年11月。2005年9月から日本の端末メーカー向けに携帯電話開発用プラットフォームである「AJAR」の本格展開を始めたところだ。

--「AJAR(アジャール)」とは何か。

 AJARは,GSM/W-CDMA携帯電話の開発用プラットフォームでありフレームワーク(写真下)。携帯電話の基本システムのほか,ブラウザやメール,メディア・プレーヤーなど,携帯電話に必要な検証済みのアプリケーションを提供する。既に米モトローラなど海外の端末ベンダー十数社が,AJARの導入を決めている。来年にかけて,AJARを使った端末も市場に出てくる見込みだ。

 端末メーカーは,携帯電話に搭載するソフトウエアの開発コスト増大に苦しめられている。AJARを使えば,開発コスト,開発期間ともに半減が可能だ。また第3世代携帯電話(3G)の時代に本格的に突入すると,今のように上位機種ばかりではなく,中位機種,下位機種も求められるようになる。シンビアンやLinuxといったプラットフォームでは,安く開発するのはまだ難しい。中下位機種向けの開発プラットフォームとしても,AJARは役立つはずだ。

 「AJAR」とは「半開き」という意味。シンビアンやLinuxは,どんなサードパーティ・ベンダーでもアプリケーションを追加できる「フルオープン」なプラットフォームと言えるだろう。一方の「AJAR」は,要望の高いアプリケーションを,TTPComとサードパーティが提携することで追加していく。アプリケーションはすべてTTPComで実証済みなので,検証作業の必要もない。例えば今後は,Push to Talkやインスタント・メッセージ機能も用意する予定だ。

--しかし「AJAR」では端末メーカーの個性を出すのが難しいのでは。

 そんなことはない。メールやブラウザなど差異化が難しくなった部分をこちらで用意することで,逆に端末メーカーはそれぞれが得意とするアプリケーション開発に専念できる。その部分で差異化するほうが開発の効率もよい。

 もちろんAJARでは,アプリケーションのメニュー構成,遷移画面なども細かくカスタマイズできる。この部分でも個性は出せるだろう。

--日本の端末メーカーは「AJAR」に対して興味を持っているのか。

 今年度下半期で日本の大手端末メーカー4社への採用を目指し,既にアプローチを始めている。そのうちの2社は,海外向けの端末用にAJARの導入を積極的に検討している。

 3G時代に入ると,日本と海外市場の垣根は無くなる。これは世界市場で後れを取った日本のメーカーにとってもよいタイミングだろう。日本市場で先行的に培った3G向けアプリケーションのノウハウを,世界市場に向けて応用できるからだ。GSMとW-CDMAという形式に対応したAJARの登場は,世界戦略を狙う日本メーカーにとっても朗報だと思う。