▼マイクロソフトは,ハードディスクにバックアップするファイル・サーバー向けバックアップ・ソフト「System Center Data Protection Manager 2006(DPM)」を2005年10月に正式出荷する。
▼DPMは,エンドユーザーに復元作業を任せるのが特徴。誤って共有ファイルを上書きしてしまった場合,管理者の手を煩わせることなく,エンドユーザーがクライアントのエクスプローラからファイルを復元できる。
マイクロソフトが2005年10月に正式出荷する「System Center Data Protection Manager 2006(DPM)」は,従来のテープ・バックアップの欠点を補うバックアップ・ソフトである。テープ・バックアップは,いったん設定しておけば作業を自動化できるが,データの復元は管理者が行わなければならない。復元作業は,該当するテープをテープ装置にセットし,バックアップ・ソフトのコンソールから復元したいファイルを指定するなど,手間がかかる。DPMはエンドユーザーにリストア作業を任せることで,管理者の負担を軽減できる(図1[拡大表示])。
DPMを利用するには,Windows Server 2003またはWindows Storage Server 2003のサーバーに同製品をインストールするか,サーバー・ベンダーが出荷を予定しているDPMのプリインストール・マシンを購入する。
DPMによるバックアップは,Windows Server 2003が備えるボリューム・シャドウ・コピー・サービス*(VSS)をインフラとして利用しているが,さらに付加価値がある。例えば,ネットワーク経由で遠隔にあるDPMサーバーにバックアップできる点,複数のファイル・サーバーのバックアップを統合管理できる点,Windows 2000サーバーもバックアップ対象にできる点などである。マイクロソフトは「DPMは単なるバックアップ・ソフトではなく,“データ復旧サーバー”と位置付けている。復元作業をするエンドユーザーに特別な教育は必要ない。いざというときは誰でも使える消火器のようなソフト」(井口倫子サーバープラットフォームビジネス本部エグゼクティブプロダクトマネージャ)と説明している。
ディスクに差分をバックアップ
ディスクにバックアップするDPMでは,大容量のハードディスクが必要になる。マイクロソフトの推奨では,ハードディスク容量はバックアップ対象となるデータ量の2~3倍,プロセッサの動作周波数は1GHz以上,メモリーは1Gバイト以上となっている。
DPMを使ってバックアップ/復元を実際に試してみた(図2[拡大表示])。DPMはActive Directoryで復元機能を利用するエンドユーザーなどを認証するため,最初にActive Directoryへ登録する。次に,バックアップ・データを保存するディスクを割り当てた後,バックアップ対象のファイル・サーバーに専用のエージェントをインストールする。管理者権限があれば,遠隔操作でファイル・サーバーにエージェントをインストールできる。
この後,ファイル・サーバー上のバックアップ対象の共有フォルダを指定すると,すべてのデータがDPMにコピーされる。これ以降は,差分データだけがDPMに送信され,DPM上のバックアップ・データと同期する。
バックアップのスケジュールでは,完全なコピーを作成するタイミングと,シャドウ・コピーを作成する時刻を設定する。DPMでは,最短で1時間おきに完全なコピーを作成可能できる。更新頻度が高いファイルは[1時間ごと]を選択すれば,最悪のケースでも1時間の更新が失われるだけで済む(図2の画面)。シャドウ・コピーは,1日に8個まで作成でき,最大で64個まで管理できる。例えば,1日当たり4個のシャドウ・コピーを作成する場合,最大で16日前のデータまでさかのぼって復元できることになる。
このほか,クライアントからの復元を有効にしたい場合は,DPMサーバーで[エンドユーザー回復]を有効にして,クライアントに復元用のエージェントをインストールしておく。DPMは,ウィザードやナビゲーション機能が充実しており,一連の設定はスムーズに進められた。
設定終了後,バックアップが順調に進むと,図3[拡大表示]に示したDPMサーバーのコンソール・画面上にシャドウ・コピーのリストが増えていく。コンソールでは,ファイルを復元したり,レポート機能でディスクの使用率などを表示したりできる。
図4[拡大表示]は,クライアントからファイルを復元する画面である。共有しているファイルを右クリックして[プロパティ]を開くと,インストールしたエージェントによって[以前のバージョン]タブが追加されており,ここでファイルを復元できる。
今後はExchangeなどにも対応
DPMのライセンスは,サーバー・ライセンスと,ファイル・サーバーに導入するエージェントのライセンスで構成する。クライアントにはWindowsのCAL*が必要だが,復元操作用のエージェントのライセンスは不要である。価格は未定だが,DPMサーバー1台とファイル・サーバー用エージェント3台分の場合で,10数万円になる見込み。
10月に出荷されるDPMは,ファイル・サーバーだけを対象にしたものだが,2007年以降に登場する次期版では,Exchange ServerやSQL Serverのほか,SharePoint Servicesなども稼働させたままバックアップできるようになる予定。このほか,OSをインストールしていない状態から復元できるベアメタル回復機能,負荷分散のためのクラスタ機能,大容量のディスクを利用するためのSAN*連携機能を搭載する計画がある。
一方,サーバー・ベンダーからはDPMをプリインストールしたサーバーが出荷される見込みだ。2005年9月時点では,日本HPが予定しているが,出荷時期は未定である。