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主力商品「堂堂人生」のパンフレットと東京・有楽町にある本社ビル
主力商品「堂堂人生」のパンフレットと東京・有楽町にある本社ビル
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●WISE計画によるシステムインフラ再構築で運用コスト削減と営業力強化を実現<BR>視覚効果を重視したeNavit画面
●WISE計画によるシステムインフラ再構築で運用コスト削減と営業力強化を実現<BR>視覚効果を重視したeNavit画面
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生保業界の競争が激しくなるなか、第一生命保険が戦略的IT投資に踏み切った。ウェブ技術を採用し、全国に点在するサーバー約2000台を1カ所に集約。モバイル通信機能付きの端末に営業ノウハウを詰め込み、商品提案力を高めた。

 第一生命保険は今年8月に、営業職員(生涯設計デザイナー)用のパソコン端末「eNavit(イー・ナビット)」を刷新。約4万5000人の営業職員が利用を開始した(導入台数は約5万台)。訪問先での商品提案機能を強化したのが特徴である。

 新端末は「WISE(ワイズ)計画」と呼ぶ全社インフラ刷新プロジェクトの一環。営業用端末のほか、全国約1700カ所の支部にあるパソコン端末やそれらを結ぶ通信回線を総入れ替えする計画で、来年3月までに完了する。総投資額は約250億円に及ぶ。

 WISE計画が立案されたのは2002年から2003年にかけて。日経平均株価は1万円以下の水準で推移し、保有株値下がりのために「生保危機」が叫ばれた時期だ。

 「とにかくシステム予算を抑えたい。特に、新規開発の予算を確保できるようにインフラのランニングコストを極力抑えたいという意識があった」(IT企画部IT企画課の関沢均・次長)

 そこで、「標準品の利用」「センター集中」という方針を立てた。例えば、従来の営業職員用端末は、液晶画面だけでキーボードがない特注のパソコンだった。新しいeNavitは東芝製の市販ノートパソコンを利用している。

サーバー2000台を集約

 従来は、全国1700カ所にある支部ごとに1台サーバー機を設置し、顧客の個人情報などを管理していた。本社・支社も含めると約2000台ものサーバーがあり、日々のバックアップ作業など運用負担が大きかった。

 WISE計画では、ウェブ技術を全面採用。支部などのサーバーを廃止し、その機能を府中情報センター(東京都府中市)1カ所に集約した。

 これまで営業職員用パソコンや支部サーバーに点在していた個人情報も、センターで集中管理する設計にした。契約内容などの個人情報は、eNavitからモバイル通信機能(NTTドコモのFOMA)で引き出して使う。計画当初は個人情報保護を強く意識したわけではないというが、結果的に端末を紛失したり悪用されても個人情報が流出しにくい仕組みになった。

 eNavitの各種業務プログラムは、センター側にあるものをウェブブラウザー経由で使う。業務プログラムはブラウザーで動くように作り直したが、使い勝手が悪くなれば混乱を招く。そこでブラウザーの機能を補強するため、アクシスソフト(東京・豊島)の「Biz/Browser」というリッチクライアント製品を採用。「3ケタ入力したら入力位置が自動的に変わる」といった機能を実現した。

 ウェブ技術による集中管理は今でこそ当たり前だが、計画当時、端末5万台という規模で運用している例は少なかった。「抜本的に構造を変えるため、ちゃんと動くのかという不安があった」(関沢次長)。当初の半年は、こうした基本構造の検討に費やした。

 従来と違い、センターには5万台からのアクセスがすべて集中する。毎日、営業職員が朝の時間帯に一斉に利用する傾向なども踏まえ、部分運用をしながら検証を重ねた。実稼働に入ってからも、「(利用が増える)営業強化月間の様子も見ないといけない」(同)と気を引き締める。

トップセールスの手法を標準化

 eNavit端末には、各種営業ツールを搭載。営業職員の商品提案力向上も狙っている。ツール制作に当たって、成績優秀な営業職員を集めてヒアリングしたり、顧客訪問に同行して会話を分析し、うまく提案するための標準プロセスを作った。

 「保険はニーズが顕在化しづらい商品。優秀な営業職員には、ニーズをうまく引き出すスキルがある」(生涯設計推進部情報開発担当の吉留正・課長)。死亡に備えるニーズだけではなく、病気で働けなくなるリスクに備えるなど、多様なニーズがある。質問の仕方などをツールに落とし込み、一方的に説明しがちな営業職員でも、顧客に画面を見せながら双方向でやり取りできるように設計した。

 日中在宅率の低下や企業の入退館管理の強化で、営業職員が顧客に会いにくくなっている現状もある。そこで、「ビジネスチャンスを確実に生かす」(吉留課長)ことも考えた。

 従来は、顧客ニーズを引き出せても、具体的な提案をするには支部に戻って紙で印刷した設計書(保険金額や保険料を書いた資料)を用意する必要があった。その顧客がまた会って資料を見てくれるとは限らない。

 新端末では画面上で設計書を作成してその場で提案できる。既存の契約内容など最新情報も、モバイル通信で引き出して提案内容に反映できる。

決裁では営業効果盛り込まず

 第一生命ではIT(情報技術)投資案件は「システム投資会議」で議論・決裁する。この際、システムの目的などのほか、稼働後に追跡する指標を決める。WISE計画の場合、eNavitのメニューごとの利用件数などが該当する。「eNavitで提案力が向上していくら増収、というのは測りにくい」(関沢次長)ため、増収額などは追跡対象にしなかった。

 一方、低コストのインフラを作ることは至上命題。システム費用については厳しい目標を課した。実際、従来のシステムに比べて初期費用は半分程度に抑え、ランニングコストも1~2割減る見込みだという。