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日本IBM 次世代ネットワーク推進の星野裕理事
日本IBM 次世代ネットワーク推進の星野裕理事
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 IPをベースとした電話網である次世代ネットワーク(NGN)に通信事業者が取り組み始めている。この市場を狙い,各通信機器メーカーが水面下でしのぎを削っている。そんな中,従来の交換機メーカーとは異なる立場から日本IBMがNGN市場への参入に名乗りを上げた。同社がどのように日本市場でNGNにかかわっていくのか。その責任者である同社次世代ネットワーク推進の星野裕理事に話を聞いた。(聞き手は大谷 晃司=日経コミュニケーション)

−−IBMがなぜ今NGNに取り組むのか

 元々当社にはネットワークのハードウエアの開発から製造まで担う事業部があったが,戦略の変更を経てルーターなどの機器は米シスコシステムズと協業しながら取り組んでいくと決めた。そのため,通信事業者の市場は以前から意識はしていた。
 今NGNをきっかけに通信事業者向けの市場が交換機系の世界からITを使うものに変わってきている。IBMはエンタープライズ向けのサーバー・ビジネスでは実績がある。IP化によって再度参入するチャンスが生まれる。
 狙いはNTTグループを始めとした通信事業者のコア・ネットワークの部分。そこにIBMのブレード・サーバーを中心とした製品を活用してもらい,通信事業者のコスト削減を手伝いたい。

−−ブレード・サーバーは具体的にNGNの中でどう使われるのか

 例えばIMS(IP multimedia subsystem)には「コントロール」や「サービス」といったコンポーネントがある。そのためのプラットフォームとしてブレード・サーバーが使われる。ただし,IMSの標準に準拠した各コンポーネントをIBMが提供するのではなく,他のベンダーとパートナーを組んで進めていく。
 通信業界は今までどちらかと言えば垂直統合型の産業構造で,1メーカーがハードウエア,OS,ミドルウエアからアプリケーションまで全部作り込んで通信事業者に納めるといった事業モデルだった。
 だが,その事業モデルがNGNで変わりつつある。ITの世界の水平分業モデルが通信キャリアのコア・ネットワークにも入りつつある。下のレイヤーからハードウエア,OS,ミドルウエア,アプリケーションの4階層モデルに分けて考えると,その中で特にアプリケーションから下の部分の標準化が重要だと考えている。
 現状のミドルウエアは,通信キャリアが求める高可用性などのレベルにまだ達していない。独自対応部分が多く垂直統合型から抜けきれない。この構造が残る限りは,高コスト体制が維持される。こうした点を改善して通信事業者に直接提案していきたい。

−−NGNの標準化とIBMの関係は

 IBMは,NGNのアプリケーション・プラットフォーム(ハードウエアやOS,ミドルウエア)の標準化を進める組織であるOCAF(open communication architecture forum)の設立メンバーで,議長も送り込んでいる。日本からはNTTの第三部門の方も参加している。この中で例えばOSに取り込む仕様やAPI(application programming interface)の策定などを進めている。
 OSではIBMはLinuxの普及促進を促すOSDL(Open Source Development Labs)に積極的にかかわっている。OSDLの中では通信事業者が必要な機能の要望を出しており,そこで合意した仕様を「CGL(キャリア・グレードLinux)」という名称で公開している。NTTから出てきた要求仕様も入れていこうとしている。いずれは通信事業者向けの仕様を取り込んだLinuxディストリビューションも出てくるだろう。

−−今の電話網からNGNへの移行はどう考えているのか

 既存の電話網が一気にNGNに移行するわけではない。当初は並存するため,IT系と,既存の交換機のスキルの両方が必要となる。そのためには,IBMが既存の電話交換機の技術を持つメーカーと協業することも必要だろう。
 通信事業者側の考え方も変わってきている。ITの考え方を通信事業者のコア・ネットワークに持ち込むことで,エンドユーザーに対して迅速なサービス展開ができることやコスト削減効果などのメリットを感じてもらえるはずだ。