会計では強いが生産管理機能がない。生産管理では実績は豊富だが、会計がない――。こんな状況にある国産パッケージ・ベンダーが手を組み、互いの製品を「一つのERP」として利用可能にする動きが加速している。ユーザーにとって現実的な選択肢の一つとなりそうだ。
手を組もうとしている企業の一例が、中堅企業向け業務パッケージ「Pro-Active E2」を販売する住商情報システム(SCS)と、同「MCFrame」を販売する東洋ビジネスエンジニアリング(B-ENG)(図[拡大表示])。両社は、両製品を連携する追加ソフト(アダプタ)を共同で開発。主にパートナ企業に向けて、10月末から無償で提供する。このアダプタを使うと、ProActive E2とMC-Frameを一つのERPパッケージ(統合業務パッケージ)のように利用可能になる。
SCSとB-ENGが提携したのは、「パッケージの機能をより増やしてほしい」という顧客からのニーズに応えるため。SCSのProActiveは3300社以上の導入実績を持つが、財務会計をはじめ管理会計や債権債務管理といった会計機能が中心で、生産管理は持たない。「最近、顧客から『生産管理はないのか』と聞かれることが多い」と、SCS ProActive事業部ProActive戦略ビジネス推進部の竹村慎輔部長は話す。
150社の導入実績を持つB-ENGのMCFrameも同様だ。生産管理に加え原価管理などの機能を持つが、財務会計はない。MCFrame事業本部マーケティング部の野池清文部長は、「生産管理と同時に会計を入れたいという要望が増えている」と説明する。
両社が提供するアダプタは、(1)両製品の機能が重複する場合に、どちらの機能で処理するかを指定する、(2)同じデータでケタ数や項目名などが異なる場合に整合性を確保する、(3)締め処理のタイミングが異なる場合に同期をとる、などの役割を果たす。
従来は、異なる製品同士を連携させるために追加開発が必要だった。アダプタを提供することで、「一つの製品を導入するのとほぼ同じ手間で導入できる」(B-ENGの野池部長)。SCSの竹村部長は、「アダプタを使うと、追加開発で両製品を連携させる場合に比べて導入期間が約25%短くなる。その分費用も安くなる」という。
もちろん、アダプタでデータを連携できても、基本的に別製品のまま。ユーザー・インタフェースやデータベースはそれぞれ異なり、パッケージのライセンスも別々に購入する必要がある。それでも各社は「ともに10年以上の販売実績を持ち、ユーザー数も多いので十分競争力はある」と見ている。
SCSは生産管理パッケージ「R-PiCS」(約450社が導入)を販売するリード・レックスとも、製品を連携させるアダプタを開発している。B-ENGも、会計・人事を中心とする「SuperStream」(同約4000社)を販売するエス・エス・ジェイ(SSJ)とアダプタを開発中。どちらも10月末に提供する見込みだ。R-PiCSやSuperStreamもやはり、10年以上販売している老舗の製品である。
SCSやB-ENGなどが提携した背景には、国産ERP製品である富士通の「GLOVIA-C」やオービックの「OBIC7」に対抗する狙いもある。「中堅企業のERPパッケージに対するニーズが高まるとともに、外資系の参入などで製品数が増えている。ユーザーの利便性を高め、その中で生き残りを目指す」とSCSの竹村部長はいう。