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 「ソフト会社のビジネスモデルは崩壊した」。

 端的に言えば、受託ソフト開発から大きな収益を得るのが困難になってきたということ。ここ2~3年の有力ソフト会社の決算を見れば明らかで、減収減益に陥ったり、赤字に転落したりする企業は増加する一方だ。そこで運用などのアウトソーシングやコンサルティング事業に参入したり、プロジェクト管理を徹底化したりすることで売り上げや利益を確保しようとする。だが、中核となる受託ソフト開発のこれからの姿を描き切れていないのが実情。

 そこに危機感を抱くのが、6月末に野村総合研究所(NRI)取締役副会長から中堅ソフト会社アルゴ21の社長に就いた太田清史氏だ。受託ソフト開発を主体とするアルゴ21は2003年度に赤字に転落するなど“ソフト業界の縮図”ともいえる存在である。ある時は証券会社のオンラインシステム、ある時は製造会社の生産管理システムの開発といったような、何でも請け負うソフト会社は勝ち抜けないということだ。

 「倒産した会社は少ないし、経済産業省によると情報サービス産業の売り上げは増えている」と反論する関係者もいるだろう。しかし、そんな状況が20年以上も続いたのは、「人月単価が高く、開発期間が長かった」からだ。ユーザー企業が子会社のソフト会社を通じて元請けとなる大手コンピュータ・メーカーや大手ソフト会社に発注し、さらに下請けに一部を委託するという多重構造も残ったままだったことも1つの要因だ。

 しかも、ソフト会社独自の開発手法は確立しづらい。開発方法はユーザー企業、あるいは元請けとなるコンピュータ・メーカーに従わざるを得ないからだ。こうしたメインフレーム時代の体質を抜本的に見直すような流れが定着しない状況で、単価が引き下げられ、短期開発の要求が強まれば、従来型ビジネスモデルが通用しなくなるのは当然だろう。

ソフト産業の実力を心配する声

 その一方で、「日本のソフト産業は大丈夫なのか」といった実力低下を問う声が経済界や政府の間で高まっている。日本のソフト産業の技術力が製造業などの製品開発に大きな影響を与え始めてきたからでもある。

 そこでメーカーや大手ソフト会社は激しさを増す価格競争を少しでも回避するためにオフシェア開発に踏み切ろうとしている。派遣型に転換し生き残りを探るソフト会社も出てきそうな雲行きだ。だが「安いからオフシェア開発という短絡的な発想になると、コア技術も海外に移ってしまう。つくることを忘れたら日本のソフト産業は終わりだ」(太田氏)。日本に何を残すのか、何が強みなのかを考える必要もある。無計画に出せば、大変にことになるというのだ。

 NRI時代に「ソフト産業のあるべき姿」を議論してきた太田氏は、アルゴ21で実践することになる。「全く違うビジネスに仕立てていく必要がある」とする太田氏の答えは「グローバル展開できるような技術力と商品を持つことだ」という。詳細は未定だが、「世界に通用するパッケージ・ソフトを開発するぞ」という“意識”を持つことから始める。「志を持った人、エネルギーを持った人がいるかが勝負になる」(太田氏)。

 今日、明日のご飯を食べるために、中身は何でもいいというビジネスを続けるわけにはいかない。日本人がこだわる品質とそこから生まれる技術をもう一度考え直しながら、新しい事業を創造する。そんな発想がないと、ソフト産業の明日の姿は見えてこないだろう。

注)本記事は日経コンピュータ05年9月19日号「ITアスペクト」に加筆したものです。