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ソフト技術者の集団だから受託開発、というだけでは足りない。NECソフト中部ならではの武器を作りたい。そう考えていた村上は96年、決定的な案件に出会う。大手自動車メーカーが、その顧客の大手飲料メーカー向けに開発した、自動販売機の商品補充業務支援システムである。
「これはいける」。自販機の設置場所や顧客管理に地図情報を活用したそのシステムの開発にかかわった村上は直感した。「GISは将来、社会を大きく変えるかもしれない」と思ったのだ。さらにはGISが当時、「特殊な技術が必要なわけでもないのに、『地図情報』と聞いた瞬間、大抵のSEがなぜか身を引く」という、一見とっつきにくい分野だったことも好都合と思えた。先行してノウハウを蓄積すれば、高い参入障壁を築けるはずと踏んだのだ。
村上はNEC本社のSI部隊、特に公共系やキャリア向けを担当する部門に通い詰め、GISの実績を売り込んだ。「いざというときに声がかかるようにするため」だ。当時の同社でGISに注目していたのは村上ただ1人。「あいつは何やってるんだ?」と周囲に言われた時期もあったが、諦めなかった。
追い風は吹いた。自治体の統合などが相次ぎ、公共分野での案件が急増した。国などが主導する実証実験にも積極的に参画した。GISは同社の重点事業の1つとなり、営業も5人体制になった。競合も出てきたが、先行して蓄積したノウハウが生きて、「他社では構築に1年かかるようなシステムでも数カ月で構築できる」という。
出会いから8年。GIS市場が開花しつつある。村上は今日も、鞄にノートPCや電源など一式を詰め込み全国を走り回る。
村上 卓己(むらかみ たくみ)氏 |