PR

 米オラクルによる米シーベル・システムズの買収は、単にCRM(顧客関係管理)ソフトのシェア獲得を狙っただけではない。この買収劇は、データベース分野の“代理戦争”なのである。

 オラクルは単にCRMの顧客を獲得するだけでなく、その裏で動くデータベース管理システム(DBMS)の潜在顧客を開拓したかったはずだ。実際、DBMSの分野で競合する米IBMや米マイクロソフトは、自社や他社の業務アプリケーション・ソフトをうまく組み合わせて、DBMSを拡販している。

 もはやDBMS単体ではうまく顧客に売り込むことはできない。そうした中で、オラクルは適切な対抗手段を見いだせないでいた。オラクルは今回のシーベルの買収で、新たなDBMSの販売先を獲得できたというわけだ。

気になるIBMにおけるシーベルの扱い

 今回のオラクルによるシーベル買収で、IBMと、IBM経由でシーベルを導入したユーザー企業は落ち着かないことだろう。IBMはシーベルと提携し、積極的にシーベル製品を販売してきた。IBMが今後シーベルの販売についてどんな姿勢を取るのかが、ユーザー企業にとって気になるところだ。

 IBM関係者によると、IBMがユーザー企業に納めてきたCRMシステムで、ソフトのライセンス数の9割がシーベルだと言われている。この数字が示すように、IBMはシーベルにとって無視できない重要な販売パートナーである。ちなみに、IBMはシーベルのライセンスを全世界で6万以上使っているビッグ・ユーザーでもある。

 一方で、先に述べたようにシーベルを買収したオラクルとIBMは、データベース分野で競合している。主力製品であるDBMS「DB2」を扱うIBMとしては、いずれシーベルの販売を止めるか弱めるかして、代替製品を模索する方向に進むだろう。

 そんなIBMは面白い動きを見せている。8月2日(米国時間)、CRM分野で特に注目を集めているソフトを開発・販売する、カナダのDWLというソフト会社を買収したのだ。

 DWLの主力ソフト製品は「DWL Customer」。カスタマー・データ・マネジメント(顧客データ管理)ソフトという分野に属する。複数のアプリケーションやデータベース間で、データを同期連携させるソフトだ。あるアプリケーションで顧客データを追加・更新すると、他のアプリケーションにもそれを反映させる。

 DWL Customerは面白い機能を備えている。取引などのトランザクションが発生するたびに順次、別のアプリケーションにそのトランザクションが扱う顧客データを追加・更新する。新たにCRMアプリケーションを導入する際に、顧客データの移行作業を大きく軽減できるわけだ。

 「IBMによるDWLの買収は、IBMがDB2をあらゆるCRMソフトに適用することを狙った戦略的なもの」。これがCRM関係者の共通の解釈だ。いずれIBMがシーベルの代替製品を主力CRM製品に据えるとき、DWL Customerが“暗躍”するに違いない。

■多田 正行(ただ まさゆき)
1947年生まれ。ロッテリア、チーズブロー・ポンズ・ジャパン・リミティッド、日本タッパウェアなどでシステム企画に携わった後、93年に独立。現在「eCRM塾」(http://www11.ocn.ne.jp/~slowlife/)主宰。著書に「売れるしくみづくり」(ダイヤモンド社)、「コールセンター・マネジメント入門」(悠々社)、「コトラーのマーケティング戦略」(PHP研究所)など。