17日間で150万人を集めた東京モーターショーが先週末に閉幕した。トヨタ自動車がレクサスブランドの旗艦車と噂される「LF-Sh」や日産自動車がスポーツカー「GT-R」を発表するなど、地元開催で日本の技術力を世界に示したショーだった。
日経情報ストラテジー12月号(発売中)は、日本の現場力をテーマにしている。キヤノンなど業務改善に熱心な企業の事例やキーパーソンを取材した。そのなかでトヨタ自動車の整備履歴情報の一元管理の話を取り上げた。整備情報の一元化は、ホンダやヤナセなどでも始まっている。華やかな新車販売の裏では、し烈な顧客の囲い込み合戦が本格的に始まっている。
各社が囲い込みを急ぐ理由は、国内における新車販売台数が頭打ちだからである。限られたパイを巡って各社がしのぎを削ることになり、新車販売は値引きを余儀なくされ収益を悪化させる要因が増えている。
自動車メーカーが主導して、新車だけでなく整備など販売会社の収益力を強化している。トヨタ自動車の取り組みのひとつが、車両情報の一元管理である。トヨタカードと呼ぶカードを顧客に配布している。8月に開業したトヨタ自動車の高級販売網「レクサス」でも同様のサービスが受けられるレクサスカードを発行している。トヨタカードは発行開始から4カ月間で320万枚、市場に流通している台数のうち約6分の1までに広がっている。
顧客はカードを提示すれば全国どの販売店に行っても同じようなサービスを受けられる。販売店にとっても、これまでの整備履歴が分かるため、作業に取りかかるまでの時間が短縮できる。顧客に対して大きな販売網を持つ安心感を提供して、作業工賃の安い大手量販店に顧客が流れないように必死なのである。
ヤナセの取り組みはトヨタとは少し異なる。営業担当者が顧客に対して最適なタイミングで連絡できるような仕組みを導入予定である。整備履歴から消耗品の交換時期が迫った顧客を抽出し、営業担当者に知らせる仕組み。ブレーキパッドやオイル交換は、主に高速道路を利用する顧客と都内を走る顧客では交換頻度は異なる。システムは営業担当者がいつ連絡すればよいのかを教えてくれる。
ホンダも自動車保険の更新日が近づいた顧客を抽出し、店長が担当者のアプローチ状況を把握できる仕組みを導入している。中堅営業担当者で、300~500人の顧客を抱えているといわれている。
業務の効率化と顧客の囲い込み。この“二兎”を追えた者が囲い込み合戦を制する。