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写真1 ネット証券各社は“突風”への対策に追われている
写真1 ネット証券各社は“突風”への対策に追われている
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表1 主なインターネット証券会社やECサイトなどのWebサイトの高アクセス対策
表1 主なインターネット証券会社やECサイトなどのWebサイトの高アクセス対策
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図1 突発的なアクセス増への対策は悩みの種<BR>アクセスが増えることはビジネス面ではうれしい悲鳴。ただ,高負荷にシステムが耐えられるように対策を施さないと,ユーザーが離れていってしまう。例えば,レーベルモバイルが提供する携帯電話向け音楽ダウンロード・サイト「レコード会社直営♪サウンド」「絶対!洋楽」では,サービス開始からどんどんアクセス数が増加,次々と対策を打たなければアクセス増を乗り切れない状況だった。グラフのアクセス数比は,サービスを始めた2002年12月のアクセス数を1としたときの比率を示す。
図1 突発的なアクセス増への対策は悩みの種<BR>アクセスが増えることはビジネス面ではうれしい悲鳴。ただ,高負荷にシステムが耐えられるように対策を施さないと,ユーザーが離れていってしまう。例えば,レーベルモバイルが提供する携帯電話向け音楽ダウンロード・サイト「レコード会社直営♪サウンド」「絶対!洋楽」では,サービス開始からどんどんアクセス数が増加,次々と対策を打たなければアクセス増を乗り切れない状況だった。グラフのアクセス数比は,サービスを始めた2002年12月のアクセス数を1としたときの比率を示す。
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図2 Webシステムの処理性能が低下する要因はあらゆるところに潜む&lt;BR&gt;Webシステムを構成するネットワーク,負荷分散装置,Webサーバー,APサーバー,DBサーバーなどがボトルネックになり,性能低下を招く恐れがある。
図2 Webシステムの処理性能が低下する要因はあらゆるところに潜む<BR>Webシステムを構成するネットワーク,負荷分散装置,Webサーバー,APサーバー,DBサーバーなどがボトルネックになり,性能低下を招く恐れがある。
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表1 主なインターネット証券会社やECサイトなどのWebサイトの高アクセス対策
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図1 突発的なアクセス増への対策は悩みの種
アクセスが増えることはビジネス面ではうれしい悲鳴。ただ,高負荷にシステムが耐えられるように対策を施さないと,ユーザーが離れていってしまう。例えば,レーベルモバイルが提供する携帯電話向け音楽ダウンロード・サイト「レコード会社直営♪サウンド」「絶対!洋楽」では,サービス開始からどんどんアクセス数が増加,次々と対策を打たなければアクセス増を乗り切れない状況だった。グラフのアクセス数比は,サービスを始めた2002年12月のアクセス数を1としたときの比率を示す。
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図2 Webシステムの処理性能が低下する要因はあらゆるところに潜む
Webシステムを構成するネットワーク,負荷分散装置,Webサーバー,APサーバー,DBサーバーなどがボトルネックになり,性能低下を招く恐れがある。
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「アクセス増大の急場をしのげ」---。ネット証券各社は,取引増加に伴い,トラフィック急増への対応に追われている。他のEC(電子商取引)サイトでも,突発的なアクセスの集中に悩む例は少なくない。システム・ダウンやレスポンスの低下は,ビジネス上の機会損失に直結する。サイト運用の担当者は今日も頭を痛めている。

 「なんとか明朝の取引開始時までにシステムを強化しなければ」---。カブドットコム証券は7月3日,即座に対策に動いた。同等以上のトラフィックは,いつまた発生するか分からない。悪くすれば,翌朝も同じ状況に陥る。

 チームを編成し,問題点を分析。対策を練り始める。平常時の2倍のトラフィックに対応可能だったシステムの処理能力を,少なくとも3~4倍のトラフィックに耐えられるようにしなければならない。まず必要なのはWebサーバーとアプリケーション・サーバーの増強。一部のアプリケーションの見直しでも効果が出るかもしれない。午後2時には,サーバー・マシンの手配やチューニング方法の検討に取り掛かった。

まったく気が抜けないネット証券

 7月初旬のトラフィック急増をしのいだ証券会社も,さらなるシステムの増強やチューニングに取り組んでいる(写真1[拡大表示)。8月以降も市場の活況ぶりは衰えを見せないからだ。7月3日のような高いピーク・トラフィックへの不安は募る。

 DLJディレクトSFG証券のシステム部マネージャーである原田勉氏は,「秋に,もう一相場来そうな予感がする」という。当然,対策は不可欠。そこで,データベース・サーバーの負荷を下げるよう,データベース・アクセス手法の見直しなどのチューニングを実施している。

 Meネット証券も同様である。6月には,負荷分散装置のチューニングなどを実施し,7月初旬のピークをしのいだ。さらに,9月に実施する予定だったサーバー増強を約1カ月前倒しで実施するなど,対策に追われている。

「着うた」サイトにも顧客が殺到

 想定外のアクセス増に悩んでいるのはネット証券だけではない(表1[拡大表示])。インターネット通販サイトや,携帯電話向け音楽配信サイトなどでは,新商品キャンペーン,人気アーティストの新曲公開などがきっかけとなり,突発的に膨大なトラフィックが押し寄せるケースが少なくない。

 KDDIの「着うた」対応携帯電話向けに音楽の有料ダウンロード・サービスを提供しているレーベルモバイルも,ハイペースで増えていくアクセス数に頭を痛めていた。2002年12月のサービス開始から,うなぎ登りにアクセス数が増加。ピークとなる月初のアクセス数は,平常時の1.5~2倍に上る(図1[拡大表示])。

 サービス開始からわずか3カ月後の3月には,着うた対応の新機種が登場。端末の買い替えが多い時期だったことも手伝って,トラフィックの上昇カーブはさらに急勾配に。ピーク時には「システムの処理能力ぎりぎりの状態」(システム部テクニカルスーパーバイザーの牧野 一憲氏)に陥った。新曲を公開する時期などは,システム・ダウンへの不安に「夜もおちおち眠れなかった」(牧野氏)という。

「やむなく受注を打ち切った」

 オンラインで花を販売するイーフローラでは,5月11日の「母の日」を間近に控え,急な注文の殺到に悩んでいた。母の日や敬老の日,クリスマスなど,花を贈るイベントが間近に迫った繁忙期には,「通常の10倍というけた違いのアクセスが集中する」(マーケティンググループグループリーダーの曽我部完氏)。今年は,昨年の母の日の3倍のトランザクション量を予想し,Webサーバーを2台増設して計3台とし,負荷分散装置でアクセスを振り分けた。

 しかし,実際のアクセス数を見ると,それでも乗り切れるかどうかの瀬戸際だった。そのままサービスを提供し続けると,最悪の場合,システムがダウンしてしまう可能性がある。システムが止まると,店舗への注文書の送信などにも支障が出る。これを避けるため,注文受け付けを予定の6時間も前に打ち切らざるを得なかった。

 朝日新聞社の地方紙サイト「マイタウン・アサヒ」のシステムを運用しているソフトクリエイトもアクセスの急増に悩んだ。2002年夏には,高校野球の地方予選の試合経過のニュースにアクセスが殺到。特に,昼の12時から1時の間にトラフィックが集中。「管理画面の前に張り付いて,異常が発生したら再起動するような状況」(サーバーセンター課長の黒瀬泰広氏)だった。

間に合わなければ損失を招く

 当然,こうしたWebサイトの管理者は,突発的なトラフィック増加を前に手をこまねいているわけにはいかない。パフォーマンスの低下は取引の機会損失につながるからだ。

 アクセス数が多いということは,売り上げを伸ばすビジネス・チャンスが膨らんでいることにほかならない。ここでシステム・ダウンやレスポンス低下のためにアクセスを受け付けられなくなると,顧客を逃がしてしまう。

 イーフローラは,「1万件の注文をみすみす逃してしまった」(曽我部氏)。レーベルモバイルも,機会損失に神経をとがらす。同社の着うたサイトは,6月には月間300万曲のダウンロードを記録した。平均すると1日10万曲。着うたは1曲当たり100~200円程度だから,「サービスが半日止まると,500万円もの売り上げを逃してしまう計算になる」(牧野氏)。

 支出として実際に損失が出る場合もある。カブドットコム証券は,顧客と「発注から5分以内に約定する」という契約を結んでいる。このため,7月3日の処理遅延に伴って,5分以内に約定できなかった顧客に対し,逸した利益を補償しなければならなかった。

ハード増強だけでは対処しきれない

 では,突発的な大トラフィックに,どう対処したらよいか。

 一番単純な方法は,単体ハードウエアの能力増強である。CPUを動作速度の速いものに置き換えたり,サーバーをより速いマシンに置き換える。Webサーバーとアプリケーション・サーバーなら,負荷分散装置を使ってサーバーを並列に何台も並べるスケールアウトという手法も定石だ。サーバーを置き換えることなくシステム全体として処理性能を高められる。

 ただ,実際の対策は,ハードウエアの増強だけでは十分とは言えない。Webシステムのボトルネックの原因はさまざまで,サーバー・マシンを強化しても効果が得られない場合は少なくない(図2[拡大表示])。

 典型的なのがデータベース。データベース・サーバーはデータの整合性を保つために,1台に集約せざるを得ない場合がほとんど。スケールアウトは適用しにくい。ハードウエア的なアプローチでは,サーバー・マシンのアップグレード以外にほとんど手がない。

 また,急なトラフィック増加に対応しなければならない場合は,ハードウエアを新規に調達するのでは時間がかかり過ぎる。「UNIXマシンは,発注から納入までに3週間ほど時間がかかる」(Meネット証券 システム部長の田中 誠一氏)。これでは,急場をしのぎ切れない。

チューニングで急場をしのぐ

 ハードウエアの増強ではまったく効果が出ない場合もある。「データベース・アクセスなど,アプリケーションの作りが悪い場合は,ハードウエアを増強してもシステム全体の性能は上がらないことが多い」(大塚商会アプリケーションソリューションセンター コンサルタントの浜口 和也氏)。

 こうした場合は,アプリケーションの一部を変更して処理を効率化するなど,チューニングに取り組むことになる。キャッシュをうまく活用して,サーバーの処理負荷を軽減する手もある。これらの対策は,システム構築時に実施されていてしかるべき。ただ実際には,短期開発,低コストを目指すあまり,適切に構築・設定されていないケースが珍しくない。「ユーザーの対策」編では,突風に悩んだサイトの実例から対応ノウハウを探る。