「現在、オペレーターが3コール以内に電話をとる確率は99.7%に達している」(堂園正毅・消費者相談センター所長)。花王のコールセンター部門である消費者相談センターは、先進的な業務と情報システムの積極的な活用で、古くからよく知られる。
同センターで利用する顧客対応システム「エコーシステム」は1978年に稼働。今年1月に5度目の刷新を終えた。
花王はいち早く、顧客満足度(CS)の向上だけでなく商品改良や開発のために、コールセンターを活用してきた。消費者からの相談に丁寧に対応すると同時に、有用な情報を引き出し、相談内容を特定の運用ルールに則って文字情報としてシステムに保存。この情報を全社員が活用する。
今回のシステム刷新の狙いは、CSと商品開発力を従来よりも高いレベルに引き上げること。オペレーターの業務改善を後押しする狙いもある。
ログを記録して応答時間をKPIに
第6次エコーシステムは、例えば電話応答時間を自動的に記録できる。現在、オペレーターのKPI(重要業績評価指標)に電話応答時間を取り入れることを検討中だ。
一方CSや商品開発力向上のための強化点は、(1)情報検索機能、(2)原因調査機能、(3)今年4月に施行された改正薬事法への対応、(4)個人情報保護法への対応—などが挙げられる。
(1)の具体策は、フリーキーワードによって顧客対応履歴などを検索しやすくした点。商品の上下左右前後からの外観写真を一覧できるようにし、消費者がどの商品について相談してきたかをすぐ分かるようにした。「現行商品だけで1500種類あるので覚えきれない。ビジュアルを充実させれば、顧客対応が早くなる」(堂園所長)
(2)はID(識別符号)とパスワードを使って、商品不良などの原因に関する情報を多くのパソコンから見られるようにしたり、研究者などが原因を書き込めるようにした。(3)は消費者相談センターと安全性関連部門の間でリアルタイムに消費者から寄せられた情報を共有可能にしたことを指す。他部門の社員は、翌日から日報を見ることができる。(4)では、個人情報を適宜マスキングできるようにした。
昨年度の消費者からの問い合わせは12万件。10年前の2倍に増え、対応力と分析力が問われている。花王はオペレーターを原則、商品分野別に固定的に配置。事業本部長などが出席する製品品質向上委員会で、各オペレーターが消費者の視点で発言する。
例えば昨年、毛穴をきれいにするための鼻パックを、フィット性を高めるべく切り込みを入れた形に変更した。消費者の声は商品、容器、表示、広告など広く生かされている。