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図1 愛知万博(愛・地球博)で使われているICタグ入り入場券<BR>ICタグを使うことで,入場券によるパビリオンの観覧予約が可能になった。
図1 愛知万博(愛・地球博)で使われているICタグ入り入場券<BR>ICタグを使うことで,入場券によるパビリオンの観覧予約が可能になった。
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図2 ICタグのしくみ&lt;BR&gt;ICタグが持つ固有のIDをICタグ・リーダーで呼び出し,バックエンドのシステムと連携させることでさまざまな機能を実現する。下図は,ICタグ・リーダーから受信した電波を電力に変えて電波を送るパッシブ型のICタグの例。ICタグの中には,電池を内蔵して常にIDを送信するアクティブ型のものもある。
図2 ICタグのしくみ<BR>ICタグが持つ固有のIDをICタグ・リーダーで呼び出し,バックエンドのシステムと連携させることでさまざまな機能を実現する。下図は,ICタグ・リーダーから受信した電波を電力に変えて電波を送るパッシブ型のICタグの例。ICタグの中には,電池を内蔵して常にIDを送信するアクティブ型のものもある。
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ICタグは,小さなICチップにIDを組み込んだもの。さまざまなものに付けて,所在の確認などに使う。これまでは,工場や倉庫で使われることが多かったが,身の回りでもじわじわと使い始められているという。どういったところで使われているのか,課題はないのかを調べてみた。

 編集部で愛知万博(愛・地球博)が話題になった。ICタグを埋め込んだ入場券を使っているという。「実は,その入場券持っていますよ。今度愛知万博に遊びに行くつもりなんです」と,私。「そういえば,ICタグは身近なところで使われ始めているらしいね。どんなところでどうやって使われているんだろうか」とデスク。「それでは,ちょっと調べてきましょう。さっそく愛知万博から取材してみます」。

タグ付き入場券で観覧予約

 まずは,2005年日本国際博覧会協会の高木登・出展管理・市民参加支援室担当課長に話を聞いた。「入場券に埋め込んだICタグで実現していることはいろいろありますが,主なものは入退場の管理と,パビリオンの観覧予約です」(高木登さん)。

 一つめの入退場の管理は,鉄道の自動改札とよく似ている。入場口の改札機で入場の可否を瞬時に判断したり,入場者数をリアルタイムで把握するのに使っている。

 もう一つのパビリオンの観覧予約は,より万博らしい使い方だ。会場内の10のパビリオンで,ICタグを使って観覧を予約できるようにしている。

 実際に手順を見てみよう(図1[拡大表示])。入場客は,パビリオン前の予約端末に入場券をかざして,表示されるガイダンスに従って時間を指定する。これだけで予約は完了だ。観覧時間になったら,パビリオンの入り口で入場券に埋め込まれたICタグの情報を係員に読み取ってもらい,中に入る。「ICタグを使うことで,入場券だけで予約できます」(高木登さん)。

固有のIDを電波で呼び出す

 愛知万博で使われているように,ICタグは接触させなくても一つずつ識別できる*しくみになっている。このしくみは次のようなものだ。

 ICタグは,数十~数百ビットの固有のIDを持つICチップとアンテナを組み合わせたもの。広く使われているICタグの場合,ICタグ・リーダーから呼び出し用の電波を当てると,ICチップに内蔵された回路が共振して電力が発生し,その電力を使ってID情報を含んだ電波をリーダーに送信するしくみだ(図2[拡大表示])。

 こうやってICタグ・リーダーが読み取ったIDをバックエンドのシステムが処理して,予約や改札,入退管理などを実現する。例えば愛知万博の観覧予約の場合は,まず予約端末が会場内のパビリオン予約用のデータベースにアクセスして空き状況などを表示する。次に,入場者によって指定された予約時刻とICタグのIDをデータベースに書き込んで予約を完了させる。パビリオン入場時はIDを基にデータベースに登録された予約情報を確認している。

 ここまで見てきたICタグは,電源を内蔵せず,リーダーから送られる電波から電力を取り出すタイプのものだ。このようなICタグをパッシブ型という。パッシブ型のICタグでは,読み取り可能な距離はせいぜい1メートルほど。もっと遠いところから読み取る必要がある場合には,電池を内蔵し,自ら電波を発信するアクティブ型のICタグを使うことになる*

暗号化機能を備えない

 ICタグに良く似たものに,ICカードがある。電子マネーのEdy(エディ)*や鉄道会社が発行するSUICA(スイカ)やICOCA(イコカ)*などだ。ICタグもICカードも固有のIDを持つ。読み取るしくみも同じだ。では,ICタグとICカードにはどんな違いがあるのだろうか。

 すぐ思いつくのは,形状の違いだ。ICカードはカード型だが,ICタグはカード型とは限らない。ただし愛知万博の入場券のように,ICタグはカードに埋め込むこともある。

 形状以外の両者の差は,今のところ用途にある*。ICカードは人が持って,金券や鍵代わりに使うことを想定している。このためICカードのほとんどは,やりとりする情報の全部,または一部を暗号化する機能を備える。こうして,万一やりとりを読み取られても,成りすましができないようにしている。

 一方,ICタグは物の管理から発展してきた。離れた場所でも読み取れる無線版のバーコードという位置付けだ。高度な機能よりも,少し離れた距離からでも確実に読み取れることや,安価であることが重視されてきたのである。