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 中堅・中小企業に向けたERP(統合基幹業務システム)ビジネスが、成長期を迎えている。IT投資の凍結を解き始めたこともあり、残された潜在市場に寄せるソリューションプロバイダの期待は大きい。
 特に「2007年問題」などオフコンのリプレース商談を目当てに、今年は参入ベンダーが相次いだ。そして来年にはマイクロソフトも国内市場開拓に乗り出すなど、早くも市場は過熱気味、過当競争の気配すら漂っている。
 しかし中堅・中小企業は、人材や価格など大企業とは異なる側面を持つ。業務改革を打ち出して経営トップに訴求しても、現場からも支持されなければ、商談はなかなか決まらない。中堅・中小企業の攻略を目指すERP商談の最前線は、期待と不安が渦巻いている。顧客を説得する提案のコツを探った。



 もはや、市場は「活況」を通り越して「過熱」の域に入ったのかもしれない。そう印象付けたのが、ERP(統合基幹業務システム)分野に参入するマイクロソフトの動きだ。11月16日の記者会見で、マイクロソフトは米国で実績を持つ中堅・中小企業向け業務ソフト「Dynamicsシリーズ」を日本語化し、「ERPソフトについては2006年内にも国内で発売する」(ダレン・ヒューストン社長)という計画を明らかにした。

 国内の中堅・中小企業市場では、SAPジャパンなど外資系ERPベンダーが昨年から攻勢に本腰を入れ、オービックや大塚商会、住商情報システム、富士通といった国産ERPベンダーとしのぎを削る。いずれの企業もマイクロソフトにとっては重要なパートナーだが、今回の発表では「パートナーと競合しないように慎重に参入方法を検討する」と話しており、機能や提供方法など、何らかの違いを出すかもしれない。多くのパートナーがひしめく“すき間”を狙ってもうま味はまだある、と考えるほど日本の中堅・中小企業市場は魅力に映るのだろう。

 中堅・中小企業向けのERP市場は数年前から重視されてきた。大手ユーザーが一巡した次は「SMB」と呼ばれる中堅・中小企業の開拓になるといった声が多くのソリューションベンダーから聞こえた。しかし市場開拓はスムーズとは言いがたいようだ。「大手とは市場の特性が全く異なるし、中堅と中小でも市場が異なる。参入して1年たって、やっと分かってきた」という声もあった。しかしソリューションプロバイダにも、次第に市場開拓のノウハウが蓄積され始めている。今後、中堅・中小企業のERP商談はさらに活発になるだろう。

10年級のレガシーが4割も

 IT化で立ち遅れた日本の中堅・中小企業の基幹業務システムは、まだまだ開拓の余地が大きい潜在的な巨大市場だ。ノーク・リサーチが今春に実施した調査では、年商500億円未満の企業におけるERPソフトの普及率は13%強に過ぎない。しかも4割に迫る企業が1996年以前に導入したシステムを使い続けている。98年以前も加えると、過半数がリース満了のシステムである。

 こうしたケースのほとんどが、オフコンかメインフレームのユーザーだ。つまり中堅・中小企業の平均像は、レガシーシステム上で手組みの業務システムか、会計など単体の業務ソフトを利用しているといったものだ。「堅牢で安定性が高いレガシーに対する満足度が高い上、手組みのシステムは業務にフィットしている。経営トップにすれば、業務遂行に支障がないからシステムを捨てる必然性がない」(伊嶋謙二社長)。調査では、ERPの導入意向について「検討している」が21.3%あるが、「予定はない」とする回答も67.7%を占めた。

前向きな提案が求められる

 しかし今後はそうもいかない。いわゆる「2007年問題」やオフコンのサポート切れなどを背景に、中堅・中小企業もシステム更新を迫られるだろう。そのとき、単なるハードの入れ替えで終えてしまうのか、経営改革や業務改善の方向を示してERPソフトを提案するのかは、ソリューションプロバイダの腕の見せ所である。「基幹業務システムをIAサーバーとERPソフトで置き換えましょう」といった提案では価格競争に陥る。「レガシーシステムでは経営環境の変化に対応できないことは明らか。成長を目指すなら、環境変化に適応できるITインフラを整備する必要がある」といった前向きな提案を示す必要がある。

 特に今年は景気回復に実感が伴い、中堅・中小企業のIT投資マインドも上向いてきたようだ。長く続いた景気低迷でIT投資を凍結していた企業も意欲を見せており、来年こそ中堅・中小企業の市場開拓の好機と意気込むソリューションプロバイダは多い。

 「年商100億円以下の中小でも、次第にERPソフトを受け入れ始めている」(東洋ビジネスエンジニアリングの中村隆亮常務)、「特に製造業から中堅・中小がIT投資を再開している」(NEC第二国内SI推進本部の勝沼覚マネージャー)、「今年も既に前年比で2ケタ成長が見込める」(住商情報システムProActiveソリューション営業部の日置茂部長)など、各ERPベンダーも強気の見通しを示す。

5~6社の競合は当たり前

 中堅・中小企業向けERP市場への参入ベンダーも後を絶たない。今年に入って、キヤノン販売が日本オラクルとの協業で「DECISION SUITE」を6月に発売したほか、ミロク情報サービスも既存の中小向け製品「MJSLINK」に加えて、中堅企業を狙った「Galileopt」を10月に投入。ワークスプロダクツやグロービアインターナショナル、インフォア・グローバル・ソリューションズ・ジャパン、日本SSAグローバルなども相次いで新製品を発表した。NECネクサソリューションズのように新しい販売スタイルを打ち出した企業もある。規模にもよるが中堅・中小企業向けの製品は既に約40に上る。

 商談の競合も激しくなっており、「年商100億円を超えると都市圏の顧客では提案段階でも5~6社の競合はもう常識」(富士通GLOVIA事業本部プロジェクト統括部の渡辺雅彦部長)だ。

 価格も以前と比べると安くなっている。従来はテンプレート(ひな型)を活用して中堅・中小企業向けを狙っていても、数億円で販売しようとするソリューションプロバイダがほとんどだった。「これでは全く売れない。経営改革を提案しても、商談が2億円以上になると中堅・中小企業は関心を示さなくなる」(あるシステムインテグレータ)。実際、ほとんどが1億円以下の商談で、特に2000万円~5000万円ぐらいの商談が増えている。

 受注獲得を狙い、RFP(提案依頼書)以前にユーザーに入り込んでコンサルティングを行う方法もある。だが、ほとんどは無償で終わるか、200万円や300万円の実費程度。無償でも受注できない場合さえある。2~3日で終わるような無料の簡易診断を行うケースも多いが、それだけで経営トップの琴線にどこまで触れられるのか疑問視する向きもある。ERPソフト「SMILE ie」を販売する大塚商会の場合、これまでERP商談の半分がオフコンなどの単純なリプレースで、半分が経営改革を狙った商談だったという。しかし経営改革と言っても、有償でコンサルティングできたケースは、そのうちの15%程度だった。

 「この市場はユーザーが価格に敏感な上、製品の機能を向上させても、値上げをできたERPベンダーはいない。実質的には価格の下落傾向が続いている」(ノーク・リサーチの伊嶋社長)。今後は淘汰が進むのは必至だろう。

 そこで各社は、様々な方向から経営トップに対してアプローチを開始した。「現場の支持を得る」「ERP以外の効果を示す」「ブランドの活用」「新しいチャネルの活用」「導入しやすい価格設定」などである。