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図3  メーカーの視点からユーザーの視点へ<BR>ユーザーの使い勝手を考えると,これまでのメーカー主導の考え方は通用しなくなる。大きく三つの変化がある。
図3 メーカーの視点からユーザーの視点へ<BR>ユーザーの使い勝手を考えると,これまでのメーカー主導の考え方は通用しなくなる。大きく三つの変化がある。
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写真1  エレベータのボタン&lt;BR&gt;ボタンの絵柄を変えるよりも,「ひらく」と1行加える方が有効だった。
写真1 エレベータのボタン<BR>ボタンの絵柄を変えるよりも,「ひらく」と1行加える方が有効だった。
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写真2  数字の書体&lt;BR&gt;見栄えの良いものと,人間が識別しやすいものは必ずしも一致しない。識別のしやすさを重視して,書体を変更した。
写真2 数字の書体<BR>見栄えの良いものと,人間が識別しやすいものは必ずしも一致しない。識別のしやすさを重視して,書体を変更した。
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図4  ユーザーの利用状況を考えてパネルを設計&lt;BR&gt;同じFAX機能なしのインクジェット複合機だが,パネルのデザインは大きく異なる。FAX付きの機器をそのまま流用すると,ボタンが多すぎて分かりにくくなる(上)。FAXなしのものを購入するユーザーは,家庭などで少部数の印刷やコピーをするのが主目的だと判断し,ボタンの数を減らした(下)。
図4 ユーザーの利用状況を考えてパネルを設計<BR>同じFAX機能なしのインクジェット複合機だが,パネルのデザインは大きく異なる。FAX付きの機器をそのまま流用すると,ボタンが多すぎて分かりにくくなる(上)。FAXなしのものを購入するユーザーは,家庭などで少部数の印刷やコピーをするのが主目的だと判断し,ボタンの数を減らした(下)。
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UCDの三つの成果

 ユーザーにとって分かりやすいUIは,メーカーの視点とは違った考えから生まれる(図3[拡大表示])。これまでの成果は,大きく三つの考え方に基づいている。(1)見栄えより識別しやすさを重視,(2)情報の整理方法がユーザーにとって自然,(3)適切に機能を隠す。それぞれ実例を挙げて見ていこう。

見栄えより分かりやすさを優先

 見た目が良い製品は人目を引くし,最初の印象は良い。だからできるだけ見栄えのする製品を作ろうとするのは当然である。しかし,それが分かりやすいとは限らない。そこで,見栄えよりも分かりやすさを優先したデザインを心がけようというのが(1)である。

 三菱電機が開発したエレベータ「AXIEZ」がその一例。エレベータは,多種多様な人が使う公共機器である。多くの人にとって使いやすいものにするため,エレベータの操作で間違えやすいものを実地調査した。

 その結果,最も間違えやすいのはエレベータの開閉ボタンだった。「開く」「閉じる」の押し間違えだ。ボタンの表示を変えれば間違えにくくなるかもしれないと考え,さまざまな開閉ボタンの絵柄を用意して被験者に使ってもらった。しかし「ボタンの絵柄を変えても結果は大差なかった」(三菱電機 デザイン研究所 インタフェースデザイン部 沢田久美子インタフェース第1グループマネージャー)。一番効果的だったのは,開くボタンの下に「ひらく」と文字を入れることだった(写真1[拡大表示])。見栄えが良いとは言い難いが,一目瞭然で分かりやすい。開閉のどちらにも入れるのでなく,急いで押す必要がある開ボタンの下だけに書き加えるのでさらに目立つ。

 もう一つ改良したのが,数字の書体。これまでは,デザイン的に見栄えの良い書体を使ってきた(写真2上[拡大表示])。これを触って分かりやすいか,見て分かりやすいかの二つの観点で調査した。すると「これまで使ってきた書体は全体的に丸みを帯びているので,3と8などが識別しにくい」(沢田氏)ことが分かった。最も識別しやすかったのは,デザインはそれほど派手でない書体(写真2下)。エレベータから導入を始め,携帯電話や家電製品にもその書体を採り入れている。

豪華さよりもシンプルさが重要

 同じく見栄えの良さより分かりやすさを重視した例に,ブラザー工業が開発するインクジェット複合機がある。最初に開発されたのはFAX機能付きのモデルで,操作パネルにはFAX番号を押すためのテンキーが付いていた。その後FAX機能を削ったものを開発し,欧州で発売した。操作パネルはFAX付きのものとほぼ同じ(図4上[拡大表示])。新たにパネルを作り直さなくて済むため開発コストを抑えられる。それに「パネルが大きく,キーがたくさんある方が豪華に見える」(ブラザー工業 総合デザイン部 ユーザーインタフェイスグループの永田司プロフェッショナル・マネジャー)メリットがある。テンキーはコピー部数を入力したり,デジタルカメラから印刷する画像を選ぶ場面で使う。FAX機能がなくてもテンキーがあれば便利になると判断した。

 しかしユーザーからは,ボタンが多すぎて分かりにくいという評価が返ってきた。見た目の豪華さより「シンプルな機種にはシンプルな操作性が求められる」(ブラザー工業 インフォメーション・アンド・ドキュメントカンパニー 商品企画部 商品企画グループの安松幸子プロフェッショナル・マネジャー)ことに気づいた。

 そこで,どんなユーザーがどのように製品を使うかを改めて考え直した。FAXなしの複合機を購入するのは,ホームユーザーが多い。そうなると「コピーを大量に取ることはあまりない。1~2枚がほとんどだろう。あまりない状況のために多くのボタンを用意するより,よく使う操作をシンプルにできることが重要」(ブラザー工業の安松氏)。最新機種ではボタン数を大幅に減らし,シンプルなデザインのパネルを開発した(図4下)。