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図4 作業同士の関連を<BR>モデル化する際の方法<BR>各作業の順序や依存関係は,図で示すと分かりやすい。一般によく用いる表記法には,「PDM(Precedence Diagram Method)」と「ADM(Arrow Diagram Method)」がある
図4 作業同士の関連を<BR>モデル化する際の方法<BR>各作業の順序や依存関係は,図で示すと分かりやすい。一般によく用いる表記法には,「PDM(Precedence Diagram Method)」と「ADM(Arrow Diagram Method)」がある
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図5 作業日程を示したガントチャートの例&lt;BR&gt;ガントチャートは,横軸に日程をとり,縦軸に作業名を明記し,作業の開始と終了を線(あるいは帯)で示す*。先にWBSで定義した小項目の作業について,順序や依存関係を考慮しながら開始日と終了日を設定する
図5 作業日程を示したガントチャートの例<BR>ガントチャートは,横軸に日程をとり,縦軸に作業名を明記し,作業の開始と終了を線(あるいは帯)で示す*。先にWBSで定義した小項目の作業について,順序や依存関係を考慮しながら開始日と終了日を設定する
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作業同士の「関連」を設定

 ここから大日程計画作成の後半のステップに移る。後半ではWBSで定義した作業項目を,時間軸に沿って効率的に実施できるように作業手順を定義していく。最初に行うのは,作業同士の関連を明確にすることだ(ステップ4)。効率的に作業を進めるようにするには,作業の順序や作業同士の依存関係をはっきりさせなければならない。

 作業同士の関連には,大きく4つのタイプがある。(1)前の作業が終わらないと,次の作業に着手できない関係,(2)作業を同時に開始できる関係(ただし,必ずしも同時に開始しなくてもよい),(3)作業の終了が同時になる関係(必ず同時に終了しなければならない),そして(4)互いの作業は完全に独立し,並行作業できる関係(作業同士が無関係),である注4)

 洗い出した作業について,これら4つの関係を明らかにすること自体は,さほど難しくはないだろう。ただし,作業同士の関連に影響する様々な制約事項を考慮することを忘れてはならない。例えば確保できる要員を明確にしておかなければ,並列化できる作業とできない作業を見極められない。他のプロジェクトと兼務する要員がいる場合も,着手する時期や完了時期を考慮する必要がある。機器や設備といったリソースを使える期間に制限がある場合も同様だ。

 作業の順序や作業同士の依存関係(これをプロジェクト・ネットワークと呼ぶ)を的確に定義するには,モデリング技法を使うとよい。代表的なモデリング技法には,「PDM(Precedence Diagram Method」と「ADM(Arrow Diagram Method)」の2種類がある(図4[拡大表示])。

 PDMでは長方形の中に作業名を記し,作業間の関係を矢印で表す。作業名とともに,各作業の開始日と完了日,期間,担当者名などを記載しておく。一方のADMでは,作業名を矢印の上に示し,矢印の前後に付加する丸印の「ノード」によって作業間の区切りを表す。矢印にも2種類あり,実線の矢印は作業の流れ,点線の矢印は作業同士の依存関係を表す。2つのモデリング技法は,表現できる内容に大きな違いはないので,好みで選んでも問題はない。

作業期間を見積もる

 次に,個々の作業項目の「期間」を見積もる(ステップ5)。ステップ3で個々の作業に要する工数を定義したが,これを要員数で割れば期間を算出できる。例えば,予定工数が12人日の作業に4人の要員を割り当てると「3日」,2人を割り当てると「6日」という具合だ。

 ただし,この時点では確保できる要員数や時期などが具体的に分からないケースが多い。また期間の設定は,外部の要因や機器・設備などの制約によっても影響を受ける。したがって,この時点で期間を確定することは難しいので,後ですべてのワークパッケージを対象に再度見直して調整することを前提に暫定的な期間を設定しておく。

ガントチャートを作成する

 作業ごとの期間を設定したら,次に各作業の「開始予定日」と「終了予定日」を決定し,日付入りのスケジュール表を作成する(ステップ6)。日付入りのスケジュール表は,「ガントチャート(バーチャートとも呼ぶ)」で表記することが多い(図5[拡大表示])。ガントチャートでは,縦軸に作業名,横軸に経過期間(日・週・月など)をとり,個々の作業の開始から終了までを1本の線や棒(バー)で表す。作業同士の依存関係は矢印で示す。

 「営業日」にしか作業を実施しない場合でも,休日も含めてバーを引く。例えば,ある作業の期間が「7日」で土日を挟む場合,ガントチャート上にはその土日を含めた「9日」分の長さのバーを引く。

 スケジュール表に示した各作業には,作業ごとの完了基準である「マイルストーン」を設定することも忘れてはならない。マイルストーンは,作業を進めるうえで節目となる重要なポイントやイベントを示す。図5の例では,「業務フロー設計」という作業に,「レビュー」というマイルストーンを設定している。プロジェクトの実施段階では,作業が完了した時点で「▽」を「▼」にするなど,進ちょくが一目で分かるように工夫する注5)

 作成したスケジュール表は,大日程計画の素案(叩き台)と位置づける。大切なのは,納期を意識しすぎて,無理なスケジュールになっていないかどうかを確認することである。素案の段階では,仮に納期に納まらなくても,実現可能なスケジュールを立てればよい。

 また,スケジュール表を作成すると,プロジェクト全体の期間が見えてくる。プロジェクトは通常,複数の作業の流れ(経路)で構成されるが,これらの経路のうち総期間の決定に最も大きな影響を与える経路を「クリティカルパス」と呼ぶ。例えば合計10日かかる作業A~Cと,合計8日かかる作業D~Fを並行に実施する場合,必ずしも合計期間の長い作業A~Cがクリティカルパスになるわけではない。作業Cが作業Fの成果物を受け取ってからしか実施できないとすれば,作業D~Fがクリティカルパスとなる。この段階で,どの経路がクリティカルパスなのかを見極めておくことは極めて重要だ。

EVMの「PV」で現実性を評価

 最後に,納期を含む様々な制約条件を考慮してスケジュール表を見直し,現実的で,しかもステークホルダーが合意できる状態にまで持っていく。これがステップ7だ。

 特に「人的資源の配分は適切か」,「期間ごとの作業負荷のバランスはどうか」といったことに重点を置いてチェックする。そのためには,各作業の工数を月別に積み上げてバランスを見る「工数山積み表(グラフ)」などを用いるとよい。

 進ちょく管理手法としてEVMを用いる場合は,時間軸に沿って各作業の予定工数「PV(Planned Value)」を積み上げた折れ線グラフの形状を見ることによっても,作業負荷のバランスをチェックできる。PVは通常,S字カーブを描く。このため,PVがなだらかなS字を描いていない場合は,特定の時期に作業が集中している可能性があるので,計画を見直す必要がある。

 以上の検討を経て,スケジュール表の実現性を確保し,ステークホルダーの合意がとれた時点で,これを「大日程計画」とする。

 以上,大日程計画を中心に作業内容の定義とスケジュール作成の勘どころについて解説してきた。中日程計画と小日程計画も,基本的な作成作業の手順は同じである。大日程計画をもとに,対象となるサブシステムや工程,チームや個人ごとに,中日程計画と小日程計画を作成していく。

 現実には,プロジェクトのキックオフミーティングや,次の工程が始まる直前になっても,こうした日程計画ができていないケースがある。「納期を遵守するためには,まず実現性の高い計画作りから」。これを心がけて作業計画とスケジュール作成を実践してほしい。

初田 賢司/日立製作所 プロジェクトマネジメント本部 プロジェクトマネジメント技術センター長

1980年,日立製作所入社。製造業のSEを経てソフトウェア生産技術の開発に従事。現在はPMO(Project Management Office)に所属し,プロジェクトマネジメント分野のエンジニアリング化に取り組む。日本ファンクションポイントユーザ会副会長,プロジェクトマネジメント学会理事

神子 秀雄/日立製作所 プロジェクトマネジメント本部 産業・流通プロジェクトマネジメントエンジニアリング部 担当部長

1968年,日立製作所入社。信託銀行向け基幹システムのサポートSEを経て,地方銀行向け資金・証券パッケージの開発などに従事。現在はPMOに所属し,プロジェクトマネジメント技術の開発,プロジェクトの支援・指導に取り組む