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 個人ユーザーに人気の無償のIP電話ソフト「Skype」だが,セキュリティ上の理由から多くの企業が社内利用を禁止している。勝手にファイアウォールを越えてファイル転送をできてしまうなどの機能があるためだ。だが,実質無料で世界中と通話できることは,企業ユーザーにとっても魅力的。海外など,内線化するほどではないが,それなりにコストが生じている拠点との通信用に利用する企業が登場しだした。そうしたニーズに応えるように,ゼッタテクノロジーなどがSkypeの利用を管理したり機能を制限できる製品を提供している。

 そして,NECがユーザー・サポートへのSkypeの採用に踏み切った(参照記事)。フリーダイヤルで負担している通話料の削減が狙いだ。個人向けのパソコン製品に無料のIP電話ソフト「Skype」をプリインストールして出荷する。サポート用Webページにあるボタンをクリックすると,オペレータと会話ができる仕組みだ。

 コール・センターにSkypeを活用できる可能性は以前から指摘されている。ソフトブレーン・インテグレーションやマイスターズコーポレーションなど,コール・センターに対応した製品やサービスを提供している企業もある。コール・センターでは,「代表着信」「保留応答」といった一般のオフィススでもおなじみの機能に加え,顧客データベースとの連携やACD(すべてのオペレータの仕事量が均一になるよう通話を割り振ったり統計情報を管理する機能)などの特別な機能も必要になる。逆に言えば,コール・センターで利用できるなら,企業の内線電話のニーズにはほぼ対応できることになる。

 むろん信頼性や既存の固定や携帯電話との相互通話性などを考慮するとSkypeが今の企業の内線電話に今すぐ取って代わることはないだろう。一方で,プレゼンスなど内線電話だけでは実現しにくい機能も,Skypeなら簡単に実現できる。電話とSkypeをうまく使い分ければ,さまざまな効果を期待できる。

 そして,12月に入ってすぐ,スカイプはビデオ・チャット機能「Skype Video」搭載のバージョン2ベータを公開した(参照記事)。現状は1対1のチャットのみだが,いずれは複数ユーザー同士の利用も可能にするという。「テレビ会議は大げさすぎる。だが,電話だけでは心もとない」こうしたニーズでの活用が期待できる。

 実は,こうした製品は「Web会議」などの名称で企業に入り始めている。これらの製品の多くはサーバー/クライアントの構成を採用する。参加可能なメンバーを限定したり,場合によっては途中で退出してもらう。企業用途なら,こうした議長への権限の集中が必要だ。サーバー/クライアント型システムなら容易に実現できるが,ピア・ツー・ピア型のSkypeで,どこまでこうしたニーズに対応できるかが課題だろう。

 ところで私事で恐縮だが,先日,記者の所属するあるメーリング・リストで忘年会の日程の打ち合わせを始めた。すると,ある常連メンバーが「海外赴任中だが,Skypeで参加する」と言い出した。SkypeVideoの発表が日本の忘年会シーズンを意識したかどうかは不明。だが,「酒・食い物がまずい」だけならともかく「無線LANの速度が出ない」ことまで非難されるようになっては,幹事はたまったものではない。