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日本ユニシス 籾井勝人社長
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日本ユニシスの業績
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 ITサービス会社の老舗、日本ユニシスの籾井勝人社長が5年後(2010年度)に売上高5000億円、営業利益300億円を目指すことを明らかにした。この10年間、3000億円超の売り上げに低迷したままの同社は、大株主である米ユニシスとの関係改善で大きく羽ばたけるチャンスをつかんだことが背景にある。製品選択の自由度は高まったが、問題は社内に潜む従来型固定観念を打破できるかだ。05年6月末に社長に就任した籾井氏は全産業に売り込みを図るとともに、海外進出に意欲的な考えを持つ。(聞き手:田中克己=編集委員室主任編集委員)

---過去、10年間、売り上げが伸び悩んだ理由はどこにあるのか。

籾井 当社は汎用機からスタートした会社だが、この売り上げが大きく落ち込んでしまった。その一方で、オープン・システムやサービスの売り上げは順調に増えたのだが、汎用機の落ち込みを補えなかった。これが伸び悩んだ最大の理由だ。

 違う観点から言えば、この10年間でバランスシートが小さくなってしまったことがある。確かに株主資本(96年度は744億円、04年度は968億円)が増えるなど財務的には良くなっているが、資産が増えていない。資産(96年度は2748億円、04年度は2221億円)が減る中で、業績を伸ばせる企業は稀にしかないだろう。つまり、無借金に近い経営なのだが、お金が遊んでいるという経営状態にあるということだ。

---10月6日に米ユニシスと商標使用料の改定を発表した。2年間で2億2500万ドル(約270億円)を支払うことで、永代使用の権利を獲得した。これまで年間100億円程度を支払い続けてきたが、そこから開放されることになる。

籾井 財務的なプレッシャーから早く出たいという気持ちがあり、歴代の社長も努力されてきた。相手側の事情もあるが、その機が熟したということだ。三井物産時代から年間100億円程度の商標使用料を支払っているという話は聞いていたが、社長就任が決まってから、その内容がひどいということもあって、なんとかしたいと思っていた。それなら一括で支払おうとなったのだ。

製品選択の自由度が高まるメリット

---これで日本ユニシスは製品選択の自由度を高めたことになる。

籾井 100億円という重みは大きかったし、今後はユニシス・ブランドを好きに使えるようになる。加えて、機材の選択も自由になる。そうは言っても気心を知っているし、手馴れていることもあるので、引き続きユニシス製品を扱っていく。ただし、扱う義務はないので、使えるものは使っていくという考えではある。当社は顧客第一なので、顧客にとって、この製品のほうがよい製品だとなれば、躊躇なくその製品を使う。

---籾井社長は成長路線の布石を打ち出す。そのカギは日本ユニシスの常識を取り払うことだ。

籾井 今期の売り上げは約3100億円の見込みだが、5年後に5000億円にしたいと思っている。営業利益は今の業界平均の6~7%を計画している。しかし、恐らく業界平均は下がるだろうが、その数字は確保したい。できるだけ早く達成したが、それを実現させには年率10%成長を遂げる必要がある。

 だが、業界の常識からすれば「ホラを吹くな」と言われるかもしれないが、具体策は2つある。1つは現在手掛けているサービス事業の売り上げを年率4%で伸ばすこと。これで増加の半分の1000億円プラスを達成させる。残りの1000億円はM&A(企業の買収・合併)で実現させたいと思っている。M&Aの対象は国内外の同業者で、その中にはユーザー系IT子会社も含まれている。例えば当社は金融系に強いので、そこに強い会社ならシナジー効果を期待できるし、まだ手掛けていない製造系なら補完関係を期待できるだろう。

---サービス面で三井物産との協業を強く訴える。籾井社長はここに特色があるという。

籾井 顧客第一主義は言葉だけでなく、ITを使って本当に顧客のビジネスに役立つ提案をすることが大切になる。その点からいろんなビジネスを手掛けている物産との提携は重要な意味を持つ。例えば、地方と首都圏を結びつけるようなことをITで実現させることだ。地方には大きなマーケットはないが、ITを活用することでマーケットのある首都圏に近寄れるだろう。通信販売会社などがコールセンターを使ってダイレクト・マーケティングを行っているが、そうしたことを地方企業に提案することも1つあるだろう。

---そうしたビジネスは以前から手掛けていたはずだし、分野を拡大させることは力を分散することにならないのだろうか。

籾井 確かにそうだが、当社の発想範囲が狭かった。これまでの日本ユニシスは自分の得意分野しかやってこなかった。それ以外にほとんど目を向けなかったともいえる。選択と集中とよく言うが、当社は選択するほど多くのことを手掛けてはいない。既に集中しているのだ。

 例えば当社は鉄をやっていないが、物産は鉄に強い。これを組み合わせて、新しい商品を作り上げることが考えられるだろう。製造業が物を作って販売し決済するという原理原則のところにITを取り入れるということは目新しいことではない。とすれば、ITを適用できる世界は無限に存在するということになる。私はそう信じている。

海外進出も視野にある

---しかし、マーケットを広げると、富士通やNECなど大手ITベンダーとの競合が増すことになる。
籾井 だからこそ物産との提携が大切なのだ。当社の親戚には物産があるが、富士通やNEC、日立にこうした親戚の会社はないだろう。

 それに海外にも出る。パッケージなどのソフト会社も買収の視野に入っている。ここでも同じで、日本ユニシスは自分で壁を作りすぎていた。(海外には出られないという)先入観念を捨ててやって見ることが必要だ。ただし海外に出る場合、ユニシス・ブランドは使えない。決めているわけではないが、例えば(100%出資の保守サービス会社の)ユニアデックスでもいいだろう。

 業種でもそうだ。金融、電力、製造業向けCAD/CAMなど限られた分野だけだったので、その壁を取っ払う。

---海外を含めた事業拡大を図るには、それなりの投資が必要になる。

籾井 一般的には借入れと増資という方法がある。だが、当社は1000億円近い資本があるので、当面、増資することはないだろう。元気よく伸びてきたら、その時に考えることになるだろうが、それはまだ先のことだと思う。

 それよりも一番大切なことは技術である。ここに向けての研究開発の投資をすることだ。年間80億円ほどの投資をしていた時代もあったが、最近は抑えてきたので50億円を切ってしまった。早く80億円程度に引き上げ、ミドルウエアやバンクビジョン(次世代オープン勘定系システム)のようなアプリケーションをどんどん開発していきたい。

---日本ユニシス本体からSE部隊を日本ユニシス・ソリューションに、保守サービス部隊をユニアデックスに分社した。このままの体制を続けていくのか。

籾井 一番のポイントは営業、開発、保守は切っても切れないものだということ。つまり三位一体で、どれが欠けても成り立たないのだが、別会社になっていることは問題ではない。なので2社を早急に本体に戻すということは今のところ考えていないし、それに見っともないだろう。私は、3社は(事実上)同じ会社だと思っている。だが、みんなは必ずしもその意識がないように感じている。

 だから3社の意識を一本化させるのか大きな経営課題になってきた。それに向けた行動を可及的すみやかに実行するが、具体的なことはまだ言える段階ではない。ただし、基本的な姿勢は顧客にワンストップでサービスを提供することだ。この10月に日本ユニシス・ソリューションとユニアデックスの社長が本体の取締役になったこともそうだ。非常勤取締役ではない。

---ユーザーはITコストが高いと思っている。

籾井 まずは正当な価値に正当な価格をつけることだ。何十億円ともなれば、経営者はそんなに金がかかるのかとなり、IT部門はITベンダーに「なんとかしてくれ」となる。営業が必死になって安くしようとする。そこに無理があるし、リスクもある。コストを下げれば、品質は下がる。その結果、動かないということにもなる。(例えばコストを半分にするということは)「こうなりますよ」「必要なコストはこれだけかかりますよ」といった説明をユーザーにきちんとすべきだ。だからこそ、ユーザーとのコミュニケーションが重要になるのだ。(文中敬称略)

■籾井勝人(もみいかつと)氏の経歴
1943年3月生まれ。65年3月九州大学経済学部卒業、同年4月三井物産入社。鉄鉱石部長、取締役・鉄鋼原料本部長、常務取締役・米国三井物産社長、専務取締役、代表取締役副社長などを経て、05年6月日本ユニシス社長に就任