図6  目的地ジャンルの情報構造<BR>ユーザー調査の結果,現行の情報構造について改善すべき点が明らかになった。例えば「温泉」は「スポーツ&レジャー」に分類されていたが,「観光」や「宿泊」の方が自然と考える人が多かった。
図6 目的地ジャンルの情報構造<BR>ユーザー調査の結果,現行の情報構造について改善すべき点が明らかになった。例えば「温泉」は「スポーツ&レジャー」に分類されていたが,「観光」や「宿泊」の方が自然と考える人が多かった。
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画面  快速ディスクナビ&lt;BR&gt;録画した番組を一覧する画面。初心者ユーザーは,自分が再生したい番組を選んで「決定」ボタンを押すだけでよい。編集などの上級者向けメニューは,「…」が描かれたボタンを押すと表示される。
画面 快速ディスクナビ<BR>録画した番組を一覧する画面。初心者ユーザーは,自分が再生したい番組を選んで「決定」ボタンを押すだけでよい。編集などの上級者向けメニューは,「…」が描かれたボタンを押すと表示される。
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図7  機器操作が苦手な人向けのATM&lt;BR&gt;画面上に表示する情報量は基本的に減らしながら,必要な部分は逆に情報を増やした。高齢者を対象に実験をしたところ,画面が遷移したことが分かりづらいという結果が得られた。そこで,紙芝居のように画面の移り変わりが分かるようにした。
図7 機器操作が苦手な人向けのATM<BR>画面上に表示する情報量は基本的に減らしながら,必要な部分は逆に情報を増やした。高齢者を対象に実験をしたところ,画面が遷移したことが分かりづらいという結果が得られた。そこで,紙芝居のように画面の移り変わりが分かるようにした。
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自然なジャンル分けを探る

 カーナビゲーション・システム(カーナビ)にも,ユーザーにとって不自然な情報の構造がある。産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門 ユビキタスインタラクショングループの北島宗雄研究グループ長は,日産自動車と共同で,カーナビにおける目的地のジャンル分けに関する研究に取り組んでいる。

 カーナビは,目的地を設定する際「ジャンルで選ぶ」メニューを備えているものが多い。観光地,レジャー施設,生活…などのジャンルを指定して,自分の行きたい場所を探す。例えば遊園地に行きたい場合。ユーザーはまずレジャー施設を選び,そこで表示される項目の中から遊園地を選択する。そして,さらにその中から具体的な遊園地名を指定する。

 このとき,ユーザーにとって不自然なジャンル分けになっていると,スムーズに目的地を設定できない。例えば「果樹園」が「買い物」ジャンルに分類されていたりする。果樹園で確かに買い物はできるが,観光やレジャーの場所というイメージの方が一般的ではないだろうか。

 そこでカーナビのユーザー108人を対象に,13の目的地についてどんなジャンルをイメージするかを調査した。その結果,既存のカーナビのジャンル分けが,多くの人が共通して抱くイメージと異なっていることが分かった(図6[拡大表示])。この結果を基に,改善案を作成した。

多機能より機能を隠す

 機能を適切に隠すという(3)のアプローチは,転換期の象徴である(別掲記事「同じ機械をさまざまな人が使うために」参照)。これまでは多機能を売りに,あれもできる,これもできると製品を宣伝していた。しかし「今後のデジタル家電は,何でもできるより,捨てるところをきちんと捨てることが大事」(パイオニアの土屋氏)。

 パイオニアは東京大学先端科学技術研究センターと共同で,DVDレコーダのユーザビリティ向上に取り組んだ。まず考えられる利用シーンを洗い出し,それぞれにどんな機能が使われているかを分析した。その結果,「見る」「録る」「残す」を基本機能と決めた。この三つを分かりやすくスムーズに使えることを優先し,それ以外の機能は,多少たどり着きにくくなっても仕方がないと割り切った。

 このUIは,DVR-530Hなど2005年5~6月に発売された3機種に搭載されている。例えば録った番組の一覧を表示する「快速ディスクナビ」にその考え方が見て取れる。この画面で表示されるのは,録画した番組の一覧のみ(画面[拡大表示])。「もっと多くの情報を表示することもできるが,ごちゃごちゃして見にくくなる。表示する文字は厳選した」(土屋氏)。この中から見たいものを選んで「決定」ボタンを押せば再生される。初心者でもすんなりと理解できる。

 録画した番組の編集など,上級者向けの機能もあるが,前面には出ていない。これらの操作メニューは,右横の「…」ボタンを押すと出てくる。「…」では分かりにくいようだが,あえて抽象的な表示を採用した。「『編集』などのように意味の分かる語をボタンに入れると,何だろうと思って初心者も押してしまう。すると複雑な階層に入り込み,迷ってしまう」(土屋氏)ためだ。

機器操作が苦手な人に合わせる

 同様のアプローチは,沖電気工業が開発したATMにも見られる。2005年秋に銀行の店頭に置かれる予定の機器で,高齢者など機械を使うのが苦手な人を対象としている。表示する情報を削り,分かりやすさを優先した。

 これまでのATMは,短時間に多くの人が使えるようにするため効率を重視してきた。1画面に多くのボタンを並べ,やりたいことにすぐに手が届くようになっている。これは,機器操作が苦手な人にとっては分かりにくい。従来はATMの横に係員がいて,使えない場合は助けを求めることができた。だが「ATMしか置いていない出張所が増えて,誰にも聞けないケースが出てきた。環境の変化に応じて,ATMも変わらなければならない」(沖電気工業 システム機器カンパニー システム機器開発本部 システム設計第二部 ATM SEチームの近藤和洋チームリーダ)。

 新たに開発したATMは,通常のものよりも表示する情報量を削って把握しやすくした。「以前は機器操作が苦手な人向けに,情報を足して説明しようとしていた。しかし混乱している人にいくら情報を追加しても,よけい混乱するだけ」(沖電気工業の三樹氏)。画面に表示するのは,各ステップで必要最小限の情報にとどめた。

 逆に情報を増やしたところもある。機械操作が苦手な高齢者を対象にしたユーザー調査の結果,ある特性が明らかになったからだ。例えば,画面が遷移したことに気づかない人が多数いる。またボタンを押すことに一生懸命になり,入力が終わると自分が何を入れたか忘れてしまう傾向がある。

 そこで,通常の機器にはない工夫を盛り込んだ。一つは画面を紙芝居状にスライドさせること(図7[拡大表示])。こうして,画面が切り替わったことを認識しやすくする。また一般の機器よりも,入力した情報の確認画面を増やした。例えば振り込みの場合,通常は自分の名前や振込先の口座番号,金額などを一度に表示して確認する。これを入力項目ごとに確認することで,自分が入力した内容をユーザーが意識しやすいようにした。