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図2 WiMAXには用途の異なる二つの仕様がある
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図3 WiMAXの仕様策定に大きな役割を持つWiMAX Forum
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図4 モバイルWiMAXが抱える課題
図4 モバイルWiMAXが抱える課題
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図5 モバイルWiMAXの電波利用のイメージ
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大阪でモバイルWiMAXを実験中

 そうはいっても,KDDIではすでにモバイルWiMAXの実験を進めているという。どんな実験をしているのだろうか。そこで,KDDIのau技術本部 ワイヤレスブロードバンド開発部長である渡辺文夫(わたなべふみお)さんに話を聞いた。

 「IEEE802.16eの規格案を基に,大阪でモバイルWiMAXの実用実験をしています。既存の3Gの基地局3局にWiMAXの基地局を併設し,自動車に積んだ端末との間で移動しながら通信したり,EV-DOとの間でハンドオーバーしたりしています」(渡辺さん)。

 写真を見せてもらうと,自動車にノートPCを積んでテレビ会議などのアプリケーションを利用している(図2の左下参照[拡大表示])。技術的にはもう確立しているように見える。

 「いやいや,モバイルWiMAXを実現するには技術的な課題があるんです。そういう意味では,同じWiMAXでもFWA版とモバイルWiMAXはまったく異なる技術と言っていいでしょう」(渡辺さん)。

段違いに複雑なモバイルWiMAX

 FWA版WiMAXには必要ないが,モバイルWiMAXには重要になる技術は,いくつかある。例えば,高速移動中の端末と基地局間で刻々と変化する電波状況の補正(図4の(1)[拡大表示])や,基地局と端末の間の距離の違いで必要となる補正(同(2)),多数の端末が同時に通信するときの調整(同(3)),面的にエリアをカバーしたときに基地局間で使う電波の調整やエリア間の移動時の電波の調整(同(4))などである。

 実は,これらの技術の中にはIEEEで標準化作業中の規格に含まれていないものもある。そこでWiMAX Forumでは,IEEE標準では足りない機能に関する規格を策定するために,ネットワーキングWGを新設した(図3[拡大表示])。

 IEEE802.16eの標準化が完了しても,すぐにモバイルWiMAXが実用化されるわけじゃないんだ。

モバイルで使える速度はどれくらい?

 これらの機能はモバイルWiMAXにとって不可欠だが,その半面こうした技術によって速度は低下してしまう。「WiMAXでよく75Mビット/秒という伝送速度が出てきますが,これはモバイルWiMAXでは現実的にありえない速度なんです」(渡辺さん)。

 WiMAXの伝送速度は,さまざまな要素で決まるという。この部分を理解するには,モバイルWiMAXの無線通信のしくみを詳しく見る必要がある。

 WiMAXではOFDM*という無線通信技術をベースとして電波をやりとりしている(図5[拡大表示])。OFDMは,広い周波数帯域を細かい周波数の電波(サブキャリア)に分け,それぞれにディジタル・データを乗せて送るという伝送方式。つまり,使える周波数の幅が広いほど高速で通信できる技術だ。

 WiMAXの規格では20MHz幅まで使えるようになっているが,「Forumで検討中のモバイルWiMAX用の実装仕様では,10MHz幅が主流になりそうな感じです」(渡辺さん)。

 さらにモバイルWiMAXは,端末との間の電波状況をチェックして,最適な変調方式を採用してから個々の端末との通信用にサブキャリアを割り当てて,データを送るしくみになっている*。電波状況が悪い端末との通信には,一度に送れるデータ量は少ないが確実に相手に届けられる変調方式のサブキャリアを割り当てる。一方,電波状況が良い端末との通信には,データを多く送れる変調方式のサブキャリアを使う。

 WiMAXの「75Mビット/秒」という伝送速度は,規格の上限である20MHz幅の帯域を使い,電波条件が最良の場合にしか出ない理想の値。しかも,一つのエリアでやりとりされる伝送容量の合計だ。この値は,帯域幅が10MHzになれば半分になるし,電波条件が悪くなれば下がる。また,同時に通信する端末が増えれば,それだけ端末当たりの伝送速度は低くなる。

 「当初のモバイルWiMAXでは,一つエリアでやりとりできるデータ量は,1Hz当たり1.5ビット/秒くらいの効率になると予測されています*」(渡辺さん)。これだと,10MHz幅で15Mビット/秒程度になる。