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図1
図1
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図2
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顧客化プロセス

 顧客との関係醸成(リレーション)には図1[拡大表示]のプロセスがある。つまり、顧客として獲得されても、すべての顧客が最優良なパートナー(協働顧客)にはならない。厄介なことに、ある比率で顧客は必ず休眠化する。さらに、潜在見込み客がすべて顕在化して見込み客化するわけでも、見込み客のすべてがトライアル顧客化するわけでもない。

 顧客化プロセスを進化させて顧客をパートナー化するためのカギは、広義のマーケティング・コミュニケーション活動である。一般には、テレビや新聞、雑誌などの広告宣伝ととらえられるが、特に、B2Bのマーケティング・コミュニケーションにおいては、理論の全ぼうはそんなに単純ではない。

 顧客化プロセスという概念は、基本的には、マーケティング・プランの計量的な評価と立案や、活動プラン作成に使う。

 例えば、潜在見込み客数というのは市場規模だが、その潜在見込み客数のうちのどれほどの数を顕在化した見込み客数にするのか?そのためには、どのようなコミュニケーション活動が必要なのか?という具合である。

 実際にマーケティング・コミュニケーション活動を展開し、一定程度の成果を得たとする。それは当初に設定した目標に到達したのか?目標に到達できなかったとしたら、なぜそうだったのか?では次に何をどう行わなければならないのか。そういうロジカル・シンキング(論理思考)はアプリケーションの取扱説明書には解説されていない。

 例えばシーベルやPS8・CRMなどのアプリケーションで「パイプライン」とか「ロート」とか説明されているのは、顧客化プロセスの概念の一端である。またリード・ジェネレーション(見込み客生成)・プログラムと説明されるのも顧客化のプロセスの概念だ。これらを専門的に詳細に取り上げているのはセールス・マネジメントやマーケティング・コミュニケーションの専門書だ。

リレーションシップ・マーケティングの適用

 リレーションシップ・マーケティングという言葉に光を当てたのはレジス・マッケンナで、1991年に同名の著作を発表した。

 マッケンナの近著は「Real Time: Preparing for the Age of the Never Satisfied Customer」だが、マッケンナがリレーションシップ・マーケティングを刊行した頃から、米国でこれを実現する手段としてのアプリケーションが目立つようになった。ただ、これらの2冊は、どちらかといえば予言書か提案書で、理論を解説しているとは言えないだろう。

 コトラーはマーケティング・マネジメントの中で、リレーションシップ・マーケティングの論理を、明解に解説している。リレーションシップ・マーケティングには、以下に示した5タイプのマーケティング活動があって、それぞれに適用の仕方があると説く。

■基本的なマーケティング:セールスパーソンは単に製品を売る。
■リアクティブ・マーケティング:セールスパーソンは単に製品を売る。ただ、顧客からの質問やコメント、苦情などがあればそれに対応する。
■アカウンタブル・マーケティング:セールスパーソンは単に製品を売る。そして、販売後の短い期間内に、販売した製品が顧客の期待に沿っているかどうか、顧客に接触して確認する。
■プロアクティブ・マーケティング:セールスパーソンは適時、適切に顧客に接触し、製品の使用や利用について様々な助言を行うとともに、顧客のより高い期待の実現を助ける製品の販売も行う。
■パートナーシップ・マーケティング:企業は顧客と協働して、よりよい遂行の方法を見つけ出す。

 それぞれのタイプのリレーションシップ・マーケティングは、対象とする顧客や流通業者の数、そしてマージンが多いか少ないかによって適用できる分野が決まる。それを表したのが図2[拡大表示]である。これと合わせて推考すれば、成果が生み出せる製品やサービス分野はどれかが明らかになる。

 こう考えてくると、リレーションシップ・マーケティングの適用の仕方は、企業や製品、サービスによって様々で、一様な戦略ではないと分かる。ましてや、アプリケーションの導入・適用でリレーションシップ・マーケティングが実現でき、成果が生まれるなどというのは幻影である。

ステークホルダーの概念

 リレーションシップ・マーケティングが難しいのはB2B(企業対企業)の分野である。B2C(企業対消費者)の分野とは明解に区分けして考えると分かりやすい。何を区分けしなければならないのかというと、購入の意思決定の仕方である。

 マーケティング・コミュニケーション論やマーケティング・チャネル論では一般にステークホルダー(stakeholder)と言うが、日本語では利害関係者と呼ぶ。

 この、利害関係者が寄り集まった意思決定の仕方がB2Bでは顕著である。

 以前説明したコンタクト・トラッキング&マネジメントを使ったとして、それを利害関係者集団に適用する場合には、どうしても基盤となるアプリケーションが必要になる。集団内での関係や、集団同士の関係が複雑だからだ。つまり追跡する情報量が格段に多いためである。この頃、あまり聞かれなくなったSFA(セールス・フォース・オートメーション)製品の一部は、この複雑な集団内関係を分析する機能を備えている。

 ちなみに利害関係者には、起案者、利用者、影響者、ゲートキーパー(日本語訳がない)、購入者、意思決定者、に分類するのが定説だ。

 顧客リレーションについてもっと学びたい読者に対しては、あらためてマッケンナのリレーションシップ・マーケティングを読み返すとともに、Neil Rackhamの「Major Account Sales Strategy」を参照されることを勧めたい。筆者にはそこに、米国型のセールス・マネジメントの原点があると思えるからである。

 CRMは物売りの弁舌ではない。CRMビジネスの不調の主たる原因は、マーケティング理論欠乏症であるとも思える。

 次回は「コミュニケーションのIP化の影響」を考えてみる。

多田 正行(ただ まさゆき)氏:1947年生まれ。ロッテリア、チーズブロー・ポンズ・ジャパン・リミティッド、日本タッパウェアなどでシステム企画に携わった後、93年に独立。現在「eCRM塾」主宰。著書に「売れるしくみづくり」(ダイヤモンド社)、「コールセンター・マネジメント入門」(悠々社)、「コトラーのマーケティング戦略」(PHP研究所)など。「ITpro Watcher」で「CRM Watchdog」を連載中。