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 総務省が携帯電話事業への新たな参入形態を摸索し始めた。既存の電気通信設備を持つ携帯/PHS事業者から設備を借り受けて携帯/PHS事業に参入するMVNO(仮想移動体通信事業者)だ(参照記事)。

 総務省の狙いは,携帯事業への“新規参入の敷居を下げること”。先月,ソフトバンク,イー・アクセス,アイピーモバイルの参入が認められたが,実に12年ぶりのことだった。携帯電話事業を行うには,無線周波数の割り当てを受け,多額の設備投資を行う必要がある。とても気軽に参入できる事業ではない。

 だが,MVNOなら無線の免許などに煩わされることなくモバイル事業に参入できる。参照記事の後半に列記された企業名を見ても,さまざまな業種の企業が興味を持っていることが分かる。そして,「MVNO的」なサービスも既にいくつか始まっている。トヨタ自動車がカーナビ用に利用しているデータ通信モジュール「DCM」,セコムが人や自動車の位置検索に利用する「ココセコム」などだ。

 実は,これらのサービスはMVNOではなく回線の再販とされる。回線の再販の場合,もともと音声通話用として設計された回線を1回線単位で卸してもらい,エンドユーザーに提供している。そのため,料金設定などを含め,サービス設計の自由度には限界がある。

 一方,正真正銘のMVNOとされるのが日本通信の「bモバイル」だ。このサービスはウィルコムと日本通信のネットワークを相互接続することで実現している。日本通信がウィルコムに支払う料金は,この両者を結ぶ回線速度で決まる。この条件下で,日本通信は「前払いした料金に応じて,一定時間使い放題」というサービスを開発した。ウィルコムのPHS回線は月単位での契約であり,これを卸売りしていているだけでは,前払い料金のメニューは開発できなかった訳だ。

 MVNOを活用すれば,提供元の携帯電話会社のサービス・メニューにとらわれず,自由にサービスを解説できる。だが,どの程度の自由度があればMVNOと呼べるのかなど,根幹的な部分の定義そのものはまだない。そこで,MVNOの定義をきちんと行い,参入ルールなどを整備しようと言うのが,総務省やテレコムサービス協会の狙いだ。

 携帯電話事業への新規参入がなかったこの12年間に,携帯電話端末はずいぶん進化したかに思える。「iモード」「着うた」「カメラ付き」「おサイフケータイ」などだ。だが,よく見れば,いずれもハンドセットの形をした「携帯電話機」だ。しかも,1社が成功すれば,他社もすぐ同じ機能を後追いで追加する。結果として,携帯電話メーカーの端末ライッナップは金太郎飴状態だ。

 例外的にPCカード型の端末もあるにはあるが,熱心なのはウィルコムとボーダフォンくらい。これ以外の事業者にとっては,店頭にハンドセット型だけ並べておけば,端末は右から左に売れていく。あえて,斬新なサービスや端末を開発する必然性は存在しない。

 だが,MVNOという参入形態が使いやすくなれば,3社どころか,より多くの企業がさまざまな業種から参入してくるだろう。通信業界に閉じこもっていた人間には想像も出来ないような端末やサービスを引っさげてくる可能性も高い。モバイル業界を活性化させるのは,こうした企業群かもしれない。