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●ビデオ・コンファレンスに取り組むWebExコミュニケーション
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●米国マーケティング協会の参加者Q&A
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インターネットの評価

 以前やり玉に挙げた肉うどんを、筆者はインターネットで肉うどんを販売している業者を探し出して、このごろはケース単位で買っている。しかし、買うのは肉うどんだけである。その業者は、インターネット通販専業のようだ。ただ、このケースは筆者が常軌を逸するほどの肉うどん好きというのが前提だから、インターネット通販業者の商売が成立する。つまり、インターネットを販路として考察した場合、インターネットだけではよほどのパブリック・リレーションがない限り、容易には顧客を新しく獲得し、維持し続けるというのは困難なのだ。

 もっとも容易に理解できるのは、米国の事務用品スーパーストアの例だ。ステイプルズ、オフィスデポ、オフィスマックスが大手3社といわれる。これら3社は、インターネット上にバーチャル店舗を構えている。一方、それぞれに多数の店舗を展開している。それでもなお、顧客向けにカタログを発行、配布し続けている。一部には、大規模事業所内部に、インショップ形式のサテライト店舗も展開している。来店でも、インターネットでも、コンタクト・センターでも、顧客の注文を受け付けているし、専用の自社配送網も完備している。よほどのへき地でもない限り、宅配便業者などに配送を委託することはない。

 マーケティング・チャネルのミックスもコミュニケーション・メディアのミックスもきちんと存在していて、それが顧客側の購買行動、購買動機に適合(adapt)するように組み合わさっている。

 インターネットは、チャネルとしてもメディアとしても、単独では十分に市場機会をとらえられないのである。このあたりは、コトラーのマーケティング・マネジメント(10版)のthe themes for the millennium edition /e-commerce and the interrnet(リーディング・ガイドの1つ)にある32項目を慎重に読めば容易に理解できる。

Googleの刺激

 先ごろ、気になるニュースがあった。Googleが米国の大規模図書館の蔵書をデジタル化して検索できるようにする、というものだ。テレビ・ニュースのコメンタリーの中には、より書籍が売れなくなるのでは、と危惧するものもあった。

 筆者の認識はかなり違う。書籍はどこまでいっても書籍なのだ。読み捨ててしまう出版物はともかくとして、調査や研究のために必要な書籍を、読み捨てはしない。参照するためには前後の文脈も必要だし、章立ても見る。さらに、関連の別の章や節も読むかもしれない。もっと重要なのは、その論述はどのようなほかの論述を参照しているかである。

 簡単にインターネットで検索できるといっても、そういう参照をひも解くところまでには簡単にたどり着けない。これは、顧客調査や市場調査のリポートを一本読んで、それがすべてだと勝手に思い込むのと同じようなことだ。つまり、このごろよくいわれる多様化(diversify)とか多様性(diversity)とかを忘れている。

 IBMがインディアナ大学の付属図書館をデジタル化して、その蔵書を農村暮らしのご老人が参照しながら博士論文を書いたという印象的なテレビ・コマーシャルを思い出してみるとよい。

 インターネットの予言書にFrances Cairncrossが著した「The Death of Distance(ハーバード・ビジネス・スクール・プレス刊)」というのがある。この著作の副題は、「How the Communications Revolution will change our lives(コミュニケーション革命で我々の生活はどう変わるか)」というのだが、その「変わる」ということが、インターネットが広がったこの10年間に、細かいけれども随分と数多く積み重なって、予言書の最終章へたどり着きつつあるのが図書館蔵書のデジタル化、バーチャル化である。

 Google以外にも刺激的な変化は始まっている。例えば、米国ではテレコンファレンスというのが多用される。ほとんどの場合、企業のトップとジャーナリストやアナリストとの電話対談なのだが、このライブの対談を記者会見場に潜入するかのごとくに直接聞くことは可能だ。電話会議は傍聴できる。WebExコミュニケーション社などが取り組んでいるビデオ・コンファレンス、ウェブコンファレンス、オンライン・ミーティングという仕方は、広告宣伝活動、営業活動、そのほかのマーケティング諸活動を根底から変質させてしまうのではと思わせる。マーケティング・コミュニケーションの仕方が変わってしまうのだ。

 筆者はもう2年半以上前からAMA(米国マーケティング協会)主催のビデオ・コンファレンスに度々参加してきている。そこでは、スピーカーのプレゼンテーションと参加者のQ&Aが行われていて、その結果は、ライブラリーに一定期間、記録して保存されている。会場をしつらえていろいろ準備する、見込み顧客獲得を目的とした無料セミナーとはだいぶ様子が違う。ライブで参加しようとすると、深夜に起き出して机の前に座らなければならないのが少々苦痛なだけだ。

ネットをマーケティングに活用するために

 インターネットをチャネルとメディアの双方で評価して、政策的、戦略的にどう活用するのかというマーケティング計画を作る必要がある。チャネル・ミックス、メディア・ミックスという視点と観点を忘れずに。そうしないと、既に変化してしまっている市場に到達することも、獲得した顧客との関係を醸成しながら維持し続けることも、困難さが増大する。市場が変遷しているのだから、そこにadaptする必要がある。そんな情報技術の駆使の仕方がマーケティングに求められている。(次回に続く)

多田 正行(ただ まさゆき)氏:1947年生まれ。ロッテリア、チーズブロー・ポンズ・ジャパン・リミティッド、日本タッパウェアなどでシステム企画に携わった後、93年に独立。現在「eCRM塾」主宰。著書に「売れるしくみづくり」(ダイヤモンド社)、「コールセンター・マネジメント入門」(悠々社)、「コトラーのマーケティング戦略」(PHP研究所)など。「ITpro Watcher」で「CRM Watchdog」を連載中。