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●ハイブリッド・グリッド(Hybrid Grid)
●ハイブリッド・グリッド(Hybrid Grid)
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 この連載当初から関心を寄せてきたマーケティング・チャネル(販売経路・販路)について考える。結論は、「多チャネルの意図的、組織的な開拓と構築をせねばならない」である。

 「保険営業・縮む人海戦術」と題する解説記事を日本経済新聞が掲載していた(2005年2月24日、25日付)。生命保険と損害保険の販路についての解説だ。

 生命保険の販売は、いわゆる「生保レディー」による職域販売が機能不全に陥っており、これまでとは異なる販売方法、電話セールスで保険を販売している代理店が業績を伸ばしているとあった。

 ちなみに、この記事にあったコールセンターの写真を見た人が「鶏小屋みたい」と漏らしたのを聞いた。筆者の印象も同様で、もしこうした職場でセールスを断られ続けたとしたら、野放図な飛び込み訪問と同じに思えた。もう少し販売組織として専門的な組織運営に取り組む必要性を強く感じる。生保レディーによる人海戦術を墨守してきた保険会社と似た事態に立ち至ることがないように。

懸案だった販路の再構築

 生命保険会社の販路、つまり生保レディーによる訪問販売という販売方式は再構築するべきだと、10年以上も前から議論と検討が行われた。生命保険会社系のシンクタンクはダイレクト・マーケティングやテレマーケティングなど保険の新しい販売方式を調査研究し、筆者もそれに参画していた。1つの販売方式(単チャネル)では、広い市場と多数の顧客に到達できないし、販売生産性も効率も決してよくないと理解した。

 そのころの主な関心事は新たな販路構築の可能性で、販路全体を再構築して、複数の異なる質の販路で異なるセグメントの顧客に到達しようと構想した。だから先の記事を読む限り、あの時からの十数年は、「失われた10年」ということになる。必要な施策を講じてこなかった。外資系保険会社の業容拡大の理由の1つである。

ハイブリッド・チャネル

 コトラーが提唱するマーケティング・チャネルは、ハイブリッド・チャネルやマルチ・チャネルで、米国では1980年代から盛んに論議されるようになったアカウント・マネジメントと称する組織的な販売活動方式である。日本では、神戸大学の石井淳蔵教授が「組織営業」を提唱している。

 ハイブリッド・チャネルを解説するのが図[拡大表示]のハイブリッド・グリッドだ。この表の縦軸は販路の種類を示している。横軸は左から右へセールス・プロセスで、性格が異なる活動形態を示す。各販路はそれぞれに活動してプロセス段階を進展させ、顧客に到達(顧客化)する。一つひとつの販路が単独で活動して顧客化を実現できる場合も、異なる販路間で組織だった連携が必要な場合も、顧客や市場、それに製品・サービスによって様々だ。

 いずれにしても販路にもライフサイクル論的な色合いが濃くあって、販路は時代とともに衰退する。販路が衰退すると間違いなく販売力は減衰する。販路の再構築、新たな販路の開拓と構築、この2つを実現しないと事業の継続は困難だ。単一チャネルへの過度な依存は販路構造型不振に陥る。

インターネットは販路か?

 正確に検証するとインターネットは販路ではない。インターネットはあくまでマーケティング・コミュニケーション・メディア(媒体)の1つだ。アマゾンのような特異な業態は別として、大方の場合、販路のように錯覚している。

 筆者の仕事場近くにある酒販店が、楽天にショップを出した。10万余店の1つで、著名ブランドの日本酒を特約店契約して販売している。元々が地元の酒販店で、その販売先は個人宅と地元の飲食店である。電話をかけるか店頭に出向いて、好きな酒類を伝えれば届けてくれる。だから、よほどの物好きでない限り、わざわざ楽天にあるホームページを探して注文するということはしない。

 つまり、著名ブランドの酒造会社にとっては、酒販店も楽天も販路となり得るけれども、酒販店にとっては販路を拡大したことにはならない。(次回に続く)

多田 正行(ただ まさゆき)氏:1947年生まれ。ロッテリア、チーズブロー・ポンズ・ジャパン・リミティッド、日本タッパウェアなどでシステム企画に携わった後、93年に独立。現在「eCRM塾」主宰。著書に「売れるしくみづくり」(ダイヤモンド社)、「コールセンター・マネジメント入門」(悠々社)、「コトラーのマーケティング戦略」(PHP研究所)など。「ITpro Watcher」で「CRM Watchdog」を連載中。