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写真1 婦人靴売り場に無線ICタグのシステムを導入<br>店頭にプレート型の無線ICタグ・リーダーを設置し,顧客が自分で店舗の在庫を検索できるようにした。写真内で靴が置かれているプレートがリーダー。
写真1 婦人靴売り場に無線ICタグのシステムを導入<br>店頭にプレート型の無線ICタグ・リーダーを設置し,顧客が自分で店舗の在庫を検索できるようにした。写真内で靴が置かれているプレートがリーダー。
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図1 高島屋が構築した無線ICタグのシステムとネットワーク構成
図1 高島屋が構築した無線ICタグのシステムとネットワーク構成
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表1 採用した無線ICタグのスペック
表1 採用した無線ICタグのスペック
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図2 在庫管理が最も難しいと言われている婦人靴の販売効率化が狙い&lt;br&gt;最も効果が見込める婦人靴から無線ICタグを導入。婦人靴で成功すれば,他の商材にも適用できると考えた。
図2 在庫管理が最も難しいと言われている婦人靴の販売効率化が狙い<br>最も効果が見込める婦人靴から無線ICタグを導入。婦人靴で成功すれば,他の商材にも適用できると考えた。
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図3 無線ICタグの導入効果&lt;br&gt;無線ICタグの取り付けやJANコードとのひも付け作業などが余分に発生するが,店頭システムとの連携による商品管理の効率化や潜在需要の把握が図れる。
図3 無線ICタグの導入効果<br>無線ICタグの取り付けやJANコードとのひも付け作業などが余分に発生するが,店頭システムとの連携による商品管理の効率化や潜在需要の把握が図れる。
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写真2 PDA(携帯情報端末)で無線ICタグを読み取ることで他店舗の在庫確認も可能&lt;br&gt;店員には日立製作所製のPDAを配布。他店舗を含めて在庫確認ができるようにした。
写真2 PDA(携帯情報端末)で無線ICタグを読み取ることで他店舗の在庫確認も可能<br>店員には日立製作所製のPDAを配布。他店舗を含めて在庫確認ができるようにした。
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 店頭で気に入ったデザインの靴を見つけたら,専用端末を操作して顧客が自分で色やサイズの違う商品を検索できる——。

 1831年創業の老舗百貨店である高島屋は9月末,婦人靴売り場に「無線IC(RFID:radio frequency identification)タグ」を使う在庫管理・検索システムを導入した(写真1[拡大表示])。

 現在,東京都中央区日本橋にある東京店と新宿店,横浜店の3店舗で無線ICタグのシステムが稼働中だ。システムは,無線ICタグとタグを読み取るリーダー,そしてバックエンドにあるサーバー群で構成する。リーダーは無線LAN経由でサーバーにアクセスするため,無線LANアクセス・ポイントを各所に設置した(図1[拡大表示])。

 無線ICタグは,電波を使って接触することなくICの中身を読み取る技術(表1[拡大表示])。バーコードに代わる商品管理手法として利用が進んでいる。国内百貨店での無線ICタグの利用は,三越,阪急百貨店に続いて3番目。システム・インテグレーションはNTTコムウェアが担当した。

靴をプレートに乗せるだけで検索可能

 顧客自らで商品検索ができるように高島屋は,店舗にタッチパネル・ディスプレイを備えるプレート型の無線ICタグ・リーダーを設置した。展示してある靴を直接リーダーの上に載せれば,商品情報の表示や関連商品の検索が自由に行える。

 これは,商品に取り付けられた無線ICタグを読み取り,バックにあるサーバーやデータベースと連携することで実現した。タグを読み取ると,色やサイズの異なる商品を検索するためのボタンをディスプレイに表示。これらのボタンを操作することで,店舗の倉庫に在庫があるかどうかが分かる。

台帳から無線ICタグ利用の管理へ

 これまで高島屋は,在庫管理に昔ながらの紙の台帳を使ってきた。台帳への記入などを店員が手で行う方法で,効率が良いとは決して言えない。また店頭で顧客から商品の問い合わせを受けた際,在庫の確認作業で顧客を待たせることも多かった。

 今回,システムの導入を指揮した高島屋の新倉有文IT推進室IT推進担当次長は,「在庫管理の効率化とお客様へのサービス向上の二つが導入の目的」と説明する。無線ICタグによって在庫管理と販売という二つの業務の改善を目指す。

 管理・検索の対象となる婦人靴は約3万足。卸からの納品,店頭での陳列・販売までの流れを一元的に管理する。商品が卸から店舗の倉庫へ移動した際などの移動履歴も記録可能だ。

 タグは約4万枚購入した。一括発注したため1枚当たりの単価は100円を切ったが,タグは使い捨てにせず繰り返し使用する方針である。

少量多品種で管理が難しい婦人靴

 無線ICタグの導入に当たり,同社が管理する対象として婦人靴を選んだのには理由がある。婦人靴は典型的な少量多品種の商材で,その在庫管理は数ある商材の中でも最も難しいと言われているからだ(図2[拡大表示])。

 例えば,婦人靴は種類が非常に豊富。衣服であればS,M,Lの3サイズ程度だが,婦人靴は22cmから24.5cm程度まで0.5cm刻みで商品がある。色も紳士靴なら黒と茶色くらいだが,婦人靴は非常に多様。加えて,商品のライフサイクルが短く,早いものは10日~2週間で店頭から姿を消す。

 そこで高島屋は,管理が難しい婦人靴に無線ICタグを使えば明確な効果を期待できると考えた。また,「婦人靴で成功すれば他の商材でも大丈夫」(新倉次長)との読みもある。

箱に入った商品は無線ICタグに向く

 技術的にも,婦人靴は無線ICタグを使う管理に向いていた。婦人靴は倉庫では箱に入れて管理し,無線ICタグも箱に取り付ける。このため,タグの読み取りミスを防げるのだ。タグの読み取り時に問題になるのは電波干渉。婦人靴の場合は箱があるため,他のタグと一定の間隔を確保できる。この間隔が電波干渉を防ぐ。

 箱を使わない商材ではこうはいかない。例えば,衣料品を無線ICタグで在庫管理しようとすれば,タグ同士が隣接または重なる可能性が高い。その場合は電波干渉が生じ,リーダーで正しく読み取れないことがあるという。

 採用した無線ICタグはオランダのフィリップス・セミコンダクターズ製のICを内蔵するもの。13.56MHz帯の電波を使用するタイプだ。860M~960MHzのUHF(ultra high fidelity)帯などを使う無線ICタグに比べて電波干渉が少なく,機器もある程度成熟しているという。だがそれでも現時点では,電波干渉による読み取りエラーはゼロにできない。

JANコードとICタグをひも付ける

 無線ICタグの導入で狙う一つ目の効果は在庫管理の効率アップ。具体的には,商品の入荷時の検品や棚卸し,商品が売れたときの作業を大幅に効率化する。これらの作業は,リーダーをタグにかざすだけで完了する。

 もっとも,無線ICタグの導入によって新たに発生した作業もある。卸での無線ICタグの取り付けと,JAN(Japan Article Number)コードとタグの“ひも付け”だ。

 JANコードは流通システム開発センターが定めたもので,バーコードの下に記される13ケタの数字としてお馴染み。卸では商品に無線ICタグを取り付けた後,タグに記録されたシリアル番号とJANコードをひも付ける。

 ひも付け作業の流れは次のようになる。まず,無線ICタグとバーコードの両方を読み取れるリーダーで,タグのシリアル番号を読み取る。その後,商品属性を表すバーコードをスキャン。これで,データ制御サーバーが各商品(各無線ICタグ)とメーカー名など属性情報のひも付け処理を行う。

 これらのデータはインターネット経由でデータ・センター内のデータベースに送られる。データの送信時は暗号化を施し,同時に電子証明書を添付することでセキュリティを高めている。

PDAで他店舗の在庫検索も可能に

 もう一つの無線ICタグ導入の狙いは,顧客満足度の向上と販売機会損失の低減だ(図3[拡大表示])。顧客による商品検索以外に,店員が持つPDA(携帯情報端末)を使って他店舗の在庫状況を検索できるようにした(写真2[拡大表示])。サイズ違いなどの商品が他店舗に何個あるかが即座に分かる。これは,各店舗の在庫状況をデータベースで一元管理することで可能になった。

 PDAを使い,他店舗から商品を取り寄せられることが瞬時に分かれば,売り上げ増につながる。これまで他店舗の在庫状況を確認するには電話で問い合わせるしかなかった。

 加えて,店頭の検索システムにより,頻繁に検索される商品を把握できる。検索頻度を指標にして,商品の人気度を測定するのだ。人気度は商品発注時の参考となり,最適な在庫管理を助ける。また売り上げと比較することで,「検索されているのに売れない商品は何か,といった分析にも使えるだろう」(新倉次長)。

 店頭に置いた検索システムの具体的な効果については,まだ分からない。だが売り場の店員は,大きな可能性を感じているようだ。「システムを店舗に導入してデモを見せたところ,売り場の店員から歓声が上がった」(同)。

 もっとも,導入に至るまでには「無線ICタグがどのようなものであるのかを社内で説明するのに苦労した」。IT部門だけでなく,仕入れや売り場の管理部門と一体の社内体制を取らなければ,システムの導入はスムーズにいかないからだ。

今後は6店舗6万足の管理に拡大

 今回構築したシステムは「6万足までの管理に対応できる」(NTTコムウェアの島田智子エンタープライズ・ソリューション事業部RFID推進室担当課長)。高島屋は,2006年3月までにさらに3店鋪に無線ICタグを導入し,計6店舗で6万足を管理する予定だ。

 今後は,無線ICタグを他の商材にも適用したいとする。「次は雑貨関係の在庫管理に導入することになるだろう」(新倉次長)。衣料への導入も検討しているが,衣料分野ではノウハウや技術が確立していない点がネックだという。