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 「RFC」(Request for Comments)は,インターネットに関する標準技術を記述した文書のことである。現在は,IETF(Internet Engineering Task Force)という国際的な標準化団体がRFCを作成し,Webページのオンライン・データとして世界中に公開している。


 今回NETWORK博物館で紹介するのは,記念すべき最初のRFC,すなわち「RFC 1」である。1969年4月7日に発行されたRFC 1の姿は,現在のRFCとまったく異なっていた。オンラインではなく,実際の紙に印刷された文書である。テキストはタイプライターで打ち,手書きの図も描き込んであった。その文書は,関係者に郵送されていたのである。


 「Request for Comments」は,「コメントをお待ちしております」といった意味である。なぜ標準技術の文書がこう命名されたのだろうか。それには,このRFC 1を書いたSteve Crocker(スティーブ クロッカー)という人物の,ある配慮があった。

自由な議論を守るための配慮


 1968年,現在のインターネットの起源となった「ARPANET(アーパネット)」の稼働準備が佳境に入っていた。ARPANETは世界初のパケット交換ネットワーク。米国防省の研究開発機関ARPAアーパ(Advanced Research Project Agency)の下で開発が進められていた。


 ARPANETの交換機を設置するのは,カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA),スタンフォード研究所(SRI),カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB),ユタ大学の4カ所のサイトである。それぞれに大学院生が集まり,データをやりとりするためのプロトコルの開発が,自由な雰囲気の中で進められていた(ちなみに通信用語としてのプロトコルはここで使われ始めた)。


 研究開発の中心メンバーだったCrockerは,研究開発の議論内容を文書にまとめようと思いついた。こうしておけば,議論の内容を忘れることがないし,議論に直接参加しなかったほかの研究者も読めるようになる。


 そのとき彼が懸念したのは,東海岸にいる政府の関係者にとがめられることだった。たとえメモ書きでも紙の形にすると,勝手に公式な文書を発行したと受け取られかねないからだ。


 そこでCrockerは「コメントをお待ちしています」という控えめな名前を採用したのである。結局,政府関係者からの横やりはなく,プロトコル開発は順調に進み,RFCも次々に作られていった。


 「RFC」は,もともと政府関係者への配慮として名付けられたが,誰もが自由にアイデアを提案できるという,インターネット標準のオープンな精神を表しているとも言えよう。