PR

 昨年を振り返ると,地震・台風など自然災害やJR福知山線の脱線をはじめとした事故,殺伐とした事件の多発が思い浮かぶ。IT領域においては,証券取引所など社会インフラといえるシステムに発生した障害が記憶に新しい。なお,主だったIT関連ニュースについては,「IT Pro 2005年重大ニュース」にまとめてあるので,参照していただきたい。

 重大なシステム障害が相次いだ原因の一つに,IT部門の弱体化が指摘されている(参考記事)。長らく続いた経済の低迷により,経営的側面からIT投資の削減が求められ,半ば強引に実践するケースがままあった。ROI重視の側面を離れ,単にIT投資をコストとしてとらえてしまうと,IT部門を萎縮させ,各所にきしみを生じさせる。場合によっては,予期せぬトラブル発生などの事態を招くことにつながるというわけである。

 実際のところ,IT関連の業務に携わるプロの間においては,行き過ぎたコスト削減に起因する閉塞感やコンピュータ技術の停滞感をより強く意識せざるを得なかった年ではなかっただろうか。

 システム開発の現場では,リースやサポート期間の終了等に伴って移行を余儀なくされた既存機能を,低コストで新システムに載せかえるというリプレース事例ばかりが目立った。低コストで開発でき,かつ短期間に成果がのぞめる案件にしか予算が付かなかったことの裏返しともいえる。ハードウエアやOSの開発においても同様で,短期間で成果が見込める既存技術の改良に明け暮れた。

 つまり,新しいことへの挑戦ができず,試行錯誤を通じて生み出される革新的な発見につながる可能性も乏しかった。これでは海外のIT専門家に比べた技術水準低下の懸念がより高まり,オフショア開発の勢いは増すばかり,となる。さらには,日本が予想よりも早く人口減少社会となったため,今後は若手の優秀な人材獲得が困難になる---。

 こうしたことが,閉塞感や停滞感を抱かせる要因になっているわけだが,ここにきて状況が変わってきた。まだら模様ではありながらも景気が底を打ち,IT投資にも明るさが見えてきた(参考記事)。2006年は,IT専門家にとって飛躍・変革の序章になる可能性が高いと考えている。

 景気回復に伴い,これまで水面下で準備を進めてきた各種の動きが成果となって現れ出す。筆者は次の3つに注目している。

 まずは,システム投資の“質”が大きく変化し,その重要性が言われながらも実行まで至らなかった「抜本的な見直し」と「戦略的な投資」が本格化すること。例えばEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)の推進,SOA(サービス指向アーキテクチャ)をはじめとした新しいテクノロジの導入などが挙げられる。通信業界に比べて躍動感に欠けるエンタープライズITの市場を大いに刺激することと思う。

 2つ目は,何をいまさらといわれそうだが,オープンソースである。全般的な動きには至っていないものの,オープンソースによる開発スタイルが業務アプリケーションの領域にも入ってきた。その原動力は,単純なコストの低さではなく,この開発スタイルが企業という境界を打ち破って,ノウハウや成果を共有するのに適すことが理解されてきたこと。

 そして最後は,ノンPCである。大型電器店のPC売り場に足を踏み入れると,TV売り場と見間違うばかりに大型画面を備える家庭用PCが所狭しと並ぶ。一方,一般的なビジネス用のPCは省スペース/エネルギーと高セキュリティが必須条件になっている。業務アプリケーションをシン・クライアントに対応させる技術・製品の充実や,ウィルコムのWindowsスマートフォン「W-ZERO3」へのユーザーの殺到(参考記事)を考えれば,省スペース/エネルギーと高セキュリティを満たすクライアント機がPCである必然性は極めて希薄なものとなる。

 以上,駆け足かつ独善的に2005年を総括し,2006年を展望した。なお,IT Proは今年,飛躍・変革を遂げる踏み切りの年となるよう精一杯頑張るので,引き続きご愛読いただければ幸いである。