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 読者の皆様、明けましておめでとうございます。

 さて2006年のIT、特に企業情報システムの領域では、何が重要になるでしょうか?

 結論を先に言えば、SOA(サービス指向アーキテクチャ)と日本版SOX法(通称)が2大テーマになることは間違いないでしょう。SOAはまだバズワードに近い段階ですし、「オブジェクト指向やWebサービスと同様、既存システムのサービス化は絵に描いたモチでは?」という疑問もあるはずです。しかし今日、経営環境や事業モデルの変化に柔軟に追従できる情報システムの実現は、どの企業にとっても最優先課題の一つ。経営ニーズから見た必然性の高さという点で、Webサービスなどとは一線を画しています。日本版SOX法も、この4月の会社法施行を皮切りに、ユーザー企業、ITベンダーともに対応を迫られる存在になっていくはずです。

セキュリティ、システム・トラブル対応、オープンソース、仮想化・・・

 とはいえ、この二つのテーマだけで終わるわけではありません。例えば昨年11月以降、東京証券取引所でシステム関連のトラブルが続発し、東証の経営トップの辞任という事態に発展したのは記憶に新しいところ。情報漏洩や不正な預金引き出しなどの事件も収まるどころか、むしろ増加傾向にあります。こうした点で、セキィリティの強化やシステム・トラブル問題への対処は一層強化する必要があります。システムの設計パラダイムを「性善説」から「性悪説」に転換するのは、その一例です。

 一方で多くの企業や組織では、レガシー・マイグレーション、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)などへの取り組みも、もはや先送りできません。構造やロジックを誰も理解できず、管理もできていないシステムを運用し続けることは、日本版SOX法を持ち出すまでもなく、経営リスクそのものになりつつあるからです。システム・コストの効率化と最適化も、以前から続く重要テーマ。例えばパッケージ・ソフトの活用やオフショアリング、仮想化技術、ユーティリティ・コンピューティング・・・。キーワードだけとっても、枚挙にいとまがないほどです。

 まだ導入が進んでいないオープンソース・ソフトも、多くの企業にとって現実感のある選択肢になるでしょう。このほか、BPM(ビジネスプロセス管理)やビジネスルール・マネジメント、さらにBI(ビジネス・インテリジェンス)なども、やや地味ではありますが、「業務の見える化」を実現するためのITとして導入が進むと見ています。

 ここで「これだけ多くのことを同時にやれるのか?」という疑問が出てくるかもしれません。これに対しては「優先順位をつけながら、ある程度は同時にやる必要がある」と答えざるを得ません。数年前はいざ知らず、経営とITが一体化した現在および今後において、ITで後れを取ることは致命傷になりかねないからです。幸い、冷え込んでいたIT投資意欲は景気回復とともに上昇傾向にあります。この機会を逃すわけにはいかない--それが2006年だと筆者は見ています。

人材の育成、活用が重要テーマに

 実はもう一つ、特に重要なテーマがあります。「ITの専門家の育成、および処遇の改善」がそれです。団塊の世代が大量に退職する「2007年問題」を横においたとしても、先に挙げた様々な概念や技術、テーマを現実のシステムに適用し、経営に生かすために、何としても今年こそ、IT人材の問題解決に着手する必要があります。

 例えば、日経コンピュータが2005年6月に実施した調査では、「現在、プロマネでない人が将来プロマネになりたいと考える割合」は、わずかに9.1%。73.0%がプロマネにはなりたくないと回答しました。「責任の重さに対して報酬が少ない」「現場のプロマネをサポートする体制/制度が十分でない」「他職種の方が魅力的」「プロマネの専門性が尊重されない」などが理由です。しかし多数の利害関係者の意見を集約し、様々なリソースを自在に配分しながら、求められるシステムを実現するプロマネは、本来、達成感の大きい魅力的な仕事のはずです。

 2005年秋には、東京大学で情報工学関連の学部が定員割れになるという“事件”も起きています。定員120人に対し2006年4月から授業を受けるのは、わずかに84人。ITに対する学生の関心が急低下していることを象徴する出来事です。事実、経産省が主催する情報処理技術者試験の受験者数も年々、減っています。「IT技術者は3K職種」と言われる実態を、いつまでも放置しておくわけにはいきません。

 幸いなことに一般企業のIT投資回復を受けて、IT企業の経営者や事業責任者の表情は明るさを増しています。特に2005年末に懇親会などでお会いした方々は、異口同音に「仕事はあるのに、ともかく人が足りない。どこかにいい人材はいませんかね」とおっしゃっていました。全く同慶の至りですが、しかし、優秀な人材は自ら育成したり、処遇するものであって、どこかに隠れているわけではありません。

 この問題に対処する前提として、ユーザー企業とIT企業の関係の見直し、あるいはIT企業の元請けと下請けの関係見直しも、必須です。反面教師と見られるのが2005年末、建設業界で明らかになったは耐震強度偽造問題。あまりにもずさんでひどい事件であり、制度に問題があることが露呈しましたが、「露呈しただけまし」とも言えます。設計審査機関が存在せず、一級建築士のような存在もいないIT分野では、表面化すること自体が起きないからです。まずはきちんとした契約書やSLAを結ぶことが第一歩になるでしょう。

 一方、企業業績の回復は、多くの問題点を水面下に隠してしまう問題もあります。しかし足元をよく見れば、オフショアリングの進展、ITの高度化・複雑化など、ユーザー企業のIT部門やIT企業、あるいはIT技術者や担当者を取り巻く環境は、むしろ厳しさを増しています。「企業業績が向上している今こそ人材を正しく評価し、育成するチャンス」「ユーザーとベンダーの関係を見直す好機」と、とらえたいものです。