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 2006年のパソコンを占ううえで、まずは次のスペックを見てほしい。

(1)次世代Pentium D(3.8G~4GHz)、メモリー1GB、ハードディスク800GB
(2)次世代Celeron D(3G~3.2GHz)、メモリー1GB、ハードディスク600GB
(3)次世代Pentium M(1.8G~2GHz)、メモリー1GB、ハードディスク120GB

 これは、日経パソコンが2005年11~12月に実施した「2006年末のパソコンの基本スペックに関するアンケート調査」の結果である。(1)がハイエンドデスクトップ機、(2)がスタンダードデスクトップ機、(3)がA4スタンダードノートパソコンの基本スペックを示している。パソコンのマーケティングや開発、ソフトウエアの開発に携わる関係者を対象に調査し、最も多くの票を集めたスペックをパソコンのタイプ別に列記した。

 まとめると、パソコンメーカーやソフトハウスの多くは、デスクトップ機かノートパソコンにかかわらずメモリーは標準で1GBになり、デスクトップ機では500GBを超えるハードディスクを搭載することが当たり前になると見ている。(1)のハイエンドデスクトップ機にいたっては、「1TBのハードディスクを標準で搭載」という意見も多数あった(得票数は800GBに次いで2位)。メモリーは「ギガ」、ハードディスクは「テラ」が当たり前になるのは、時間の問題と見てまず間違いない。

 この結果を見て、ITpro読者のみなさんは何を感じるだろうか。「そこまで進むのか」とハードウエアの進化の速さに驚く人もいれば、「パソコンは相変わらずの肥大化の道を進むのか」と冷静に見る人もいるだろう。確かに、パソコンはこれまでの歩を止めることなく、2006年も高速・大容量化に向けまい進していく。これは従来と変わらない。

すべては映像をスムーズに処理するために

 ただ、2006年はこれまでとは違った年になる。高速・大容量化といった量的変化だけにはとどまらない。その量的変化を生かすための環境整備や、キラーアプリケーションの登場・成熟が期待される1年になるのだ。パソコンは新たな活躍の場を創造し、質的変化を起こす——いや、起こさなければならない年になる。

 2006年は、これを実現するためにキモとなる製品や技術が相次いで登場する。代表は、5年ぶりにメジャーバージョンアップするWindows Vistaである。ハードウエア面では、Blu-rayやHD DVDといった大容量の次期DVD、垂直磁気記録のハードディスクが離陸する。デュアルコアCPUが普及期に入るのも、ワイヤレスUSBや高速の無線LAN規格IEEE802.11nなどの無線通信技術が登場するのも2006年だ。近年まれに見る“豊作”の年にあって、これらのキーテクノロジーを十分に使いこす環境を整えることができるか、その環境がユーザーに受け入れられるのかが、今後のパソコンの行く末に大きな影響を与えることになるのだ。

 質的変化のキーとなるのは、パソコンメーカーの長年の“悲願”である「リビングへの進出」である。着々と進むデジタル社会の中でパソコンが主役を務め、パソコンあってのデジタル社会を創造する。身近な目標をいえば、パソコンをリビングに据え、ハイビジョン放送やブロードバンド放送の視聴・録画を楽しむという“文化”を国内に着実に根づかせる。この文化の創造がパソコンの今後を占ううえでの大きな鍵を握っているのだ。

 極論すれば、デュアルコアCPUも、大容量ハードディスクも、次期DVDも、すべては映像の処理・録画・再生のためにある。地上波デジタル放送に代表されるハイビジョン放送を視聴・録画する環境を整備するための大きな役割を果たす。加えて2006年は、これまでの地デジ対応パソコンの多くが抱えていた、録画時にハイビジョン番組を標準画質に落とさざるを得ないなどの制限も解消される。対応テレビチューナーの大手開発元であるピクセラは、「2006年は、地デジがパソコンに本格的に搭載される記念すべき年になる」と見ており、パソコンメーカーに納入する数は4倍以上に膨らむと予測する。

 Windows Vistaも、ウリの一つである検索機能で、この流れを後押しする。ネットやデジタル放送の環境が整備されると、ユーザーの扱うデータ量はどんどん増えていく。映像だけでなく、電子メールやデジカメ写真などのコンテンツがパソコン内にあふれかえる。自分のハードディスクの中に、どのようなデータが、どこに入っているのか正確に把握できなくなるデジタル社会では、目的のファイルをすぐに探し出せる検索機能が大きな意味を持つのだ。

2005年の成功をさらに強固にするために

 2005年、パソコンは「リビング進出」という面で大きく前進した。大画面の液晶ディスプレイを備え、ハイビジョン放送を視聴・録画できるパソコンが富士通やシャープ、NECなどから相次いで発売され、予想以上にユーザーの支持を得た。リビングでの使用を想定した大画面パソコンは10年近くも前から製品化されているが、こういったコンセプトの製品がこんなにもユーザーに受け入れられたのは2005年が初めてである。

 ただ、この追い風を素直に喜ぶことはできない。2005年、リビングPCがユーザーの支持を得た大きな理由は「液晶テレビとハードディスクレコーダーを買うよりも割安感がある」ということにある。液晶テレビの価格は日を追うごとに下落し、今では32インチの液晶テレビが20万円を切った価格で手に入る。2006年、価格競争力の面で、パソコンが2005年と同じような強さを発揮できるのか予断を許さない。

 今求められているのは「リビングにパソコンを据えるメリットは?」に対して、分かりやすく答えていくことだろう。現状でパソコンを導入するメリットは、(1)放送だけでなくネット映像も楽しめる、(2)録画領域が満杯になっても容易にHDDを増設できる、など。これに加えて、多くの人が「欲しい」と感じるさらなる利点を創造していかなくてはならない。

 パソコンの長所は、豊かな拡張性と自由度の高さである。「いろいろなことができる」という可能性だけを考えればテレビよりも魅力的なはずだ。例えば、家庭の防犯体制を強固にしたいと考えた場合、パソコンなら、玄関付近の映像を記録したい、施錠を集中管理したい、地域の防災情報をチェックしたいなどの要望に、ちょっとしたオプションを加えるだけで応えられる。良くも悪くも「何でもできる」がパソコンの最大のウリである。

 2005年の成功に浮かれることなく、「リビングへの流れ」を文化として根づかせるために、2006年は新しい可能性を感じさせるキラーアプリの創造が期待される。登場するキーテクノロジーを有機的に結びつけ、パソコンの活躍の場を広げることができるのか——2006年は興味の尽きない年になりそうである。