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 昨年後半から米国の通信事業者を中心に,「グーグルなどのネット企業がブロードバンドをただで使うのはけしからん」といった議論が起こっている。最初に言い出したのは米AT&T(旧米SBCコミュニケーションズ)のエド・ウィテイカーCEOでグーグルととIP電話のボネージ・ホールディングズをやり玉に挙げた。今年に入ってベライゾンのイワン・シーデンバーグCEOも同調する発言を行い,コストを負担すべきだとした。

 実は日本でも映像を無料配信するGyaOの急成長によって,プロバイダのトラフィックが急増しているらしいという話が出ている。ただ乗りは許さないという話がいつでてきても不思議ではない状況だ。

 これで思い出すのが2年ほど前の2004年に起きたインターネット崩壊説。WinnyなどPtoPソフトによってトラフィックが急増し,バックボーンが耐えられなくなるとされた問題だ。このときも「Winnyユーザーにはコストを負担してもらう」とか,「Winnyのトラフィックを絞る」といった話が出た。その後,Winnyのトラフィックが減ったということはないが,結局は何もなかったかのように今に至っている。

 しかし,今回はもしかしたらもっと本格的な議論に進むかもしれないと感じている。その背景にあるのはNGN。NTTグループは2010年までに固定電話の約半数である3000万ユーザーをIP電話に移行すると表明しており,その際の技術的基盤になるのがNGNである。今月にでもITU-Tでのリリース1の仕様が決まる見込みであり,2007年末ころから機器の導入も始まっていくと見られている。単なる電話網の置き換えではなく,将来はフレッツのサービスもNGN上に移行することになる。NGNは映像配信などの基盤にもなるのだ。

 GyaOやSkypeといった現在の映像配信やインターネット電話のサービスは,あくまでも何の保証もないベストエフォートの世界である。もし,GyaOやSkypeで十分ということになってしまうとNGNがもたらすはずの新たな世界はユーザーがいなくなってしまうかもしれない。通信事業者としてはNGNの世界に移行してユーザーが映像配信や電話用に品質保証されたネットワークに料金を払ってくれないと困ったことになる。GyaOがWinnyと根本的に違うのはここなのだ。

 ベライゾンのシーデンバーグCEOは既にグーグルと話し合いを進めていると認めている。日本の通信事業者の動きもこれから注視していく必要があるだろう。