日経ニューメディアは通信・放送分野の専門ニューズレターとして1983年に創刊し,今年10月で23周年を迎える。毎年恒例の新年特別版の記事をベースに,2006年の通信と放送業界を展望してみることにしよう。

「竹中懇談会」を軸に政策論議が加熱

 通信・放送業界は2006年に,従来型の事業モデルの見直しを迫られる大転換期を迎えそうだ。まず「通信・放送融合」を旗印に,政策論議が活発になる。竹中平蔵総務相が1月中に立ち上げる「通信・放送の在り方に関する懇談会」などが台風の目だ。同懇談会では,通信と放送のあるべき姿,それらの融合・連携に向けた問題点や,望ましい政策のあり方などについて検討する。約半年をかけて結論を出す予定だ。将来を見据えた,新たな通信・放送事業の枠組みが打ち出される可能性がある。

 既存の放送分野では,受信料の不払い問題を抱えるNHKの改革論議が過熱しそうだ。NHK(公共放送事業者)と民放(広告放送事業者)の「二元体制」を揺るがす制度改革に発展する可能性も否定できない。また,光ファイバー回線を使って地上デジタル放送をIP方式で配信する「IP再送信」の実現も,通信・放送融合政策を進める上でのポイントになる。

 通信分野ではNTTグループが事業再編に着手する。こうしたなか,NTTグループのあり方に関する議論も改めて浮上することになりそうだ。一方で,総務省は2006年を通じて従来型の通信分野における競争政策の見直しを進め,「オールIP」時代に適応した新たな制度について検討する方針である。このように2006年は,今後の日本の通信・放送事業の枠組みを形作る重要な年になる。場合によっては通信,放送と分野を分けることの意味すら薄れる可能性がある。

新たな事業モデル構築に迫られる放送業界

 既存の通信・放送業界でそれぞれ動きを見ていくと,まず放送業界ではNHKの改革に加えて,地上波民放事業者が引き続き「インターネット」に頭を悩ませることになる。パソコン向けとはいえ,USENの無料映像配信サービス「GyaO」などが台頭するなか,各社は新たな事業展開を迫られる。テレビ番組のネット配信はもとより,4月に始める携帯端末向け地上デジタル放送(ワンセグ)をどう展開するかなどがポイントになる。

 ワンセグを例にとると,同放送の番組は当面,通常の据え置き型テレビ向けの放送と同じになる。受信機となる携帯電話機は,もともと通信端末である。このため,番組で紹介した商品を購入できる双方向サービスを地上デジタル放送で提供するにしても,視聴者が居間の大画面テレビで番組を見ながら,ワンセグ対応携帯電話機で注文を出すといった使い方ができるようになる(携帯電話機を地上デジタル放送のデータ放送端末として使用)。これにより,テレビ放送と連動した通販事業などが進めやすくなると考えられる。

 また衛星放送分野では,民放キー局による地上波放送とBSデジタル放送の兼営を可能にする「1局2波体制」を認めるかどうかが制度的な焦点になりそうだ。東経110度CS放送の普及に向けて,同放送で複数のチャンネルを1社で運営する「大規模役務利用放送事業者」を認めるかどうかも検討項目になる。いずれも実現すれば,「メディアの寡占化」を進める一面を持つ。このほかケーブルテレビ(CATV)業界では,光ファイバー回線で地上デジタル放送のIP再送信を目指すNTTグループなどとの競合に備え,合従連衡が活発になりそうである。

通信業界は固定・移動統合で「クワトロプレー」へ

 通信業界では,固定通信分野でFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)サービスの普及が進み,大手各社がオールIPによる次世代網構築の動きを加速する。ブロードバンド(高速大容量)化やオールIP化の進展に伴って,NTT東西地域会社の加入電話網を前提とした従来型の競争の枠組みは崩れていく。こうしたなかNTT東西も,スカイパーフェクト・コミュニケーションズの子会社であるオプティキャストとの共同出資会社を通じて,インターネット接続と光IP電話,オプティキャストの多チャンネル放送をセットにしてFTTHサービス「Bフレッツ」をさらに売り込む計画だ。2006年には,NTT東西を含めた大手事業者各社がインターネットと電話,放送による「トリプルプレー」の事業展開に本腰を入れる。

 移動通信分野では11月に,ユーザーが事業者を変更しても同じ電話番号を継続して利用できる「番号ポータビリティ制度」が携帯電話で導入される。事業者間での加入者獲得競争が一気に激しさを増す。非接触ICカード技術「モバイルFeliCa」に対応した携帯電話機を使う決済サービスなど,新たな事業も進展する。さらに2006年秋以降,第3世代移動通信(3G)の新規参入事業者3社が順次サービスを開始する。また,総務省は「WiMAX」など新しい無線ブロードバンド通信方式への周波数割り当て方針を2006年にも決める予定で,参入を狙う通信事業者が出そろうことになる。

 3Gなどの新規参入事業者は,自社の移動通信回線をMVNO(移動通信再販事業者)となる固定通信事業者やコンテンツプロバイダーなどに提供することで販売チャンネルを拡大し,既存事業者に対抗していく方針を示している。これにより移動通信事業者と固定通信事業がグループを形成し,あるいは両事業を手がける大手通信グループが一体となり,「FMC(固定・移動融合)サービス」の提供を目指すことになる。こうして通信業界では,トリプルプレーに移動通信を加えた「クワトロプレー」の事業展開が進むと見込まれる。

 既存の通信・放送業界がそれぞれ大転換期を迎えるなか,2006年には両業界を横断した「複合メディアグループ」を形成しようとする動きが顕在化する可能性がある。いずれにしても,「融合」の潮流に通信・放送事業者各社が巻き込まれるのは確実だ。日経ニューメディアはこうした流れを見据えながら,2006年も注目のニュースや解説記事を提供し続けたいと考えている。新たなビジネスチャンスも生まれそうであり,こうした時期だからこそ,ぜひ多くの方々に日経ニューメディアをご購読いただければと思う。