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 個人情報保護法施行に伴う混乱に始まり、アスベストによる健康被害、そして鳥インフルエンザをめぐる騒動---。2005年も話題に事欠かなかった医療界だが、2006年はどんな1年になるのだろうか。

 今年まず注目されるのは、4月から始まる医療制度改革の行方。

 厚生労働省はこの10数年、人口高齢化に伴う医療費の急激な伸びを抑えるため、様々な方策を打ち出した。しかし医療費の抑制は、医師をはじめとする医療従事者の収入を抑えることにほかならず、その度に、強い政治力を持つ日本医師会の猛烈な反対に遭い、“改革”は腰砕けに終わってきた。

 今回の“改革”がこれまでと一線を画すのは、小泉首相の強い求心力の下、官邸主導で進められているところ。2年1度実施される診療報酬(医療行為の公定価格)の改定率が、マイナス3.16%と過去最大の引き下げに決まったのはその象徴だ。

 従来、診療報酬の改定率をめぐっては、中央社会保険医療協議会(中医協)の内外で、医師会を中心とする「診療側」と、健康保険組合連合会などの「支払い側」の間で、族議員も交えた激しい綱引きが行われていた。だが、今回はそうしたやりとりはほとんどなく、ほぼ首相の一存で改定率が定まった。

 このまま小泉流の改革が一気に進みそうな勢いだが、厚労省が提案する改革の具体案に目を移すと、物足りないと言わざるを得ない。即効性がありそうなのは、この診療報酬の引き下げと、10月に実施される70歳以上の高所得高齢者の自己負担の2割から3割への引き上げだけ。これらは、当面の医療費財源を捻出するだけの策にすぎない。

 オールドファッションな“改革”案が並ぶ中で、唯一新味があるのは「医療費適正化計画」である。これは、都道府県ごとに平均入院期間の短縮など具体的な医療費適正化の数値目標を定め、達成度に応じて診療報酬上で評価しようというものだ。

 日本の医療の大きな問題は、サービスの提供が非効率で、かつ費用の配分に偏りがあること。医療費適正化計画が実際に動き出すのは来年以降になろうが、従来のように一律に給付を切り下げるのではなく、医療の提供局面で適正化と効率化を自律的に促そうという発想が根底にあり、どのように具現化されていくか注目されるところだ。

 臨床分野では、昨年に続き、鳥インフルエンザが主役にとどまることになるだろう。高病原性のH5N1型ウイルスのヒトからヒトへの感染はまだ確認されていないが、どこかでウイルスの変異が起こり、ヒト-ヒト感染の発生、そしてパンデミック(大流行)というシナリオは、いつ現実のものとなっても不思議はない。

 昨年末は、H5N1型にも効くとされるタミフルの備蓄が話題だったが、今年は発病後の対応など各論に主題が移ってくるだろう。

 インドネシアなどでH5N1型鳥インフルエンザに感染して死亡した患者の大半は、重症のウイルス性肺炎に罹患していたとされる。その原因として疑われているのがサイトカイン・ストーム。これは、免疫の過剰反応で細胞間の情報伝達物質であるサイトカインが過剰に分泌され、肺など様々な臓器を機能不全に陥らせるものだ。

 タミフルはウイルスの増殖を抑えることは期待できるが、このよう状態に陥ったら、それだけで救命できるとは考えにくい。今年は、H5N1型の重症患者に効果がある対症療法の研究も進むはずだ。当然、最も根本的な対策であるワクチンの開発をめぐる製薬各社の動きも見逃せない。

 Xデーがいつ来るかは神のみぞ知るだが、周辺ビジネスも含め、鳥インフルエンザが今年も世間の耳目を集め続けることは間違いなさそうだ。

 最後に、今年の医療分野でのヒット商品候補として、脱毛症治療薬「プロペシア」を挙げておこう。

 昨年末に発売されたプロペシアは、数年前に話題になった「リアップ」とは違い、飲み薬であることが一番の特徴だ。医師の処方が必要な医療用医薬品であり、専門医の間では発毛効果も上と評価されている。

 ハゲは成人男性が非常に気にする問題の一つ。「ED(勃起障害)にバイアグラ」が定番になったように、「AGA(Androgenetic Alopecia;男性型脱毛症)にプロペシア」となるかどうか?