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表1●Office 12の主な新機能/強化点<BR>2005年12月時点で判明しているものを掲載した。ほかにもExcel関数を追加するなど数多くの強化を施す。
表1●Office 12の主な新機能/強化点<BR>2005年12月時点で判明しているものを掲載した。ほかにもExcel関数を追加するなど数多くの強化を施す。
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図1●Office Open XML Formatsのファイル構造&lt;BR&gt;ドキュメント本体やスタイルなどのXMLファイルと,画像,VBAマクロなどのバイナリ/非XMLファイルをZIPで圧縮して1つのファイルにまとめている。リレーションシップ・ファイル(.rel)は,各ファイルの依存関係を記述するXMLファイル。
図1●Office Open XML Formatsのファイル構造<BR>ドキュメント本体やスタイルなどのXMLファイルと,画像,VBAマクロなどのバイナリ/非XMLファイルをZIPで圧縮して1つのファイルにまとめている。リレーションシップ・ファイル(.rel)は,各ファイルの依存関係を記述するXMLファイル。
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図2●Word 12のドキュメント本体とリレーションシップ・ファイルの例&lt;BR&gt;「Hello, Nikkei Windows for IT Professionals!」という文字列とJPEG画像を埋め込んだドキュメント。公表されているスキーマなどを基に編集部で作成した。ドキュメント本体では画像をID(rId3)で参照しており,実際のファイル名などはリレーションシップとして定義している。
図2●Word 12のドキュメント本体とリレーションシップ・ファイルの例<BR>「Hello, Nikkei Windows for IT Professionals!」という文字列とJPEG画像を埋め込んだドキュメント。公表されているスキーマなどを基に編集部で作成した。ドキュメント本体では画像をID(rId3)で参照しており,実際のファイル名などはリレーションシップとして定義している。
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図3●Word 12の画面&lt;BR&gt;タイトルバーのすぐ下の領域がコマンド・タブ。通常の文書作成中に使用する[Write]タブには,クリップボード,フォント,パラグラフの書式などの設定項目が並んでいる。米Microsoftがプレス向けに公開した画像を使用した。
図3●Word 12の画面<BR>タイトルバーのすぐ下の領域がコマンド・タブ。通常の文書作成中に使用する[Write]タブには,クリップボード,フォント,パラグラフの書式などの設定項目が並んでいる。米Microsoftがプレス向けに公開した画像を使用した。
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図4●書式設定用のギャラリ&lt;BR&gt;見本を選択するだけでフォントの種類やサイズなどをまとめて設定できる。米Microsoftがプレス向けに公開した画像を使用。
図4●書式設定用のギャラリ<BR>見本を選択するだけでフォントの種類やサイズなどをまとめて設定できる。米Microsoftがプレス向けに公開した画像を使用。
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▼2006年後半以降に出荷予定のOffice次期版では,文書ファイルをこれまでの独自バイナリ形式からXML(拡張マークアップ言語)ベースのものに変更する。
▼新文書ファイル形式は,複数のXMLファイル/バイナリ・ファイルをZIPでまとめる。プログラムで簡単に内容を変更できるため,システム開発でのメリットが大きい。
▼ユーザー・インターフェースも刷新し,従来のメニューとツールバーに代わる「コマンド・タブ」「ギャラリ」などを搭載する。

 2006年後半以降に出荷が予定されているOffice次期版(開発コード名Office 12)の新機能が徐々に明らかになってきた。米Microsoftは,9月に開催した開発者向け会議「Professional Developer Conference 2005」でユーザー・インターフェースを刷新することを発表。Officeが新たに採用するXML文書形式の仕様も公開した。続いて10月には文書をPDF形式で保存する機能を搭載することや,ビジネス・インテリジェンス機能を強化することを発表した。公式発表以外にも,同社のWebサイトにあるOffice開発者のブログでは数多くの新機能について触れられている。

 これまでに同社が発表したOffice 12の主要な新機能/強化点をまとめたのが表1[拡大表示]である。同社は,Officeを単なる文書作成ソフトではなく,業務システムや各種データ分析における標準的なクライアントとして位置付けている。ビジネス・インテリジェンス機能の強化は,この点を念頭においたものだ。

 デフォルトの文書ファイル形式をこれまでの独自バイナリ形式からXMLベースのものに変更するのも,業務システムのデータ交換などにOfficeの文書ファイルを利用することが目的である。このほかに自治体などが独自形式の文書ファイルを敬遠する傾向が強まっているのも理由の一つと見られる。MicrosoftはOffice 12の文書形式(「Office Open XML Formats」と呼ぶ)をオープンな文書仕様として標準化する考えで,11月にEcma Internationalに提出している。

 文書ファイル変換ソフトやXML関連製品を数多く開発/販売するアンテナハウスの小林 徳滋 代表取締役は,「Officeの文書ファイルがXMLベースになることは,システム開発に非常に大きなメリットをもたらす」とする。例えば,Wordで作成した請求書のテンプレートやExcelの帳票などにデータベースから読み出したデータを埋め込んで出力するといったシステムを構築する場合,バイナリ形式の文書ファイルを直接操作するプログラムを自分で開発するのは難しい。プログラムからOfficeのCOMコンポーネントを操作する,サード・パーティ製のツールを使う,といった方法もあるが,前者はサーバー上でOfficeを動かすためにパフォーマンスに難があり,後者はコストと互換性が問題になる。これに対して,文書ファイルがXML形式であれば,簡単にデータを参照したり書き換えたりできる。

 XML形式で文書ファイルを読み書きする機能はWord 2003,Excel 2003も備えているが,グラフやオートシェイプの情報が失われるなどの問題がある。.xlsファイルをXML形式に変換し,再び.xls形式に戻した場合の再現性は「20%程度しかない」(小林氏)という。対してOffice 12では,XMLタグのセット(スキーマ)を大幅に拡張することでバイナリ形式のファイルの内容を100%再現できるようにし,PowerPoint用のXML文書ファイル形式も追加する。さらにMicrosoftはOffice 12用XML文書ファイル形式をOffice 2000/XP/2003で読み書きするためのアップデートを無償で実施する予定であり,過去のOffice製品でも利用可能になる。

エディタで文書ファイルを変更できる

 Office 12が採用するOffice Open XML Formatsのファイル構造を図1[拡大表示]に示す。これまでの.docや.xlsに相当する文書ファイル(拡張子は.docx,.xlsx)で,実際には数多くのXMLファイルやバイナリ・ファイルをZIPで圧縮して1つにまとめたものである。同ファイル形式では,こうした個々のファイルをパーツと呼ぶ。

 パーツは,ドキュメント本体を格納するXMLファイル,見出しや本文などのスタイル情報を格納するXMLファイル,使用するフォントの情報を格納するXMLファイルなど,扱う情報に応じて細かく分けられている。ドキュメントに埋め込んだJPEG画像やOLEオブジェクトはバイナリ・ファイルのままZIPファイルに格納される。ファイル間の依存関係やWebページへのリンクなどの外部参照は,リレーションシップ・ファイルに記録される。

 このように複数のパーツに分けて情報を格納することは,必要な情報だけを抜き出したり修正したりする作業が簡単になるという利点がある。Office 2003のXML文書ファイル形式では,画像なども含めてすべての情報を1つのXMLファイルに格納するため,必要な情報を探し出すのに手間がかかり,プログラムで処理する際にも効率が悪い。Office 12では,リンク先や外部参照するOLEオブジェクトが変更された場合でも,リレーションシップ・ファイルをテキスト・エディタで書き換えるだけで修正できる。

 文書内容や書式などを記述するために,Office Open XML Formatsは,膨大な数のタグを定義している。ここでは例としてWord 12用の文書ファイルの中身を図2[拡大表示]に示す。「Hello,Nikkei Windows for IT Professionals!」という文字列とJPEG画像だけを含むごく簡単な文書ファイルである。

 Word文書用のXMLタグ仕様(WordMLと呼ぶ)では,パラグラフやテキスト・ラン(パラグラフの中の文字列)などの文書構造に応じて<p>,<r>などのタグを定義しており,これらの要素を組み合わせて文書を記述する。図2の各タグの最初にある「w:」は,WordMLの名前空間の中で定義されたタグであることを表す。HTMLを記述した経験がある人なら,理解するのは難しくない。

 画像を埋め込むには,<pict>タグを使用する。図2のドキュメント本体の中では,画像を「rId3」というIDで参照している点に注意してほしい。実際の画像ファイル名(image0.jpg)はリレーションシップ・ファイルの中で定義している。

 Officeの文書形式が公開されたことで,Office互換ソフトが雨後のたけのこのように登場するとの見方もある。これに対して小林氏は,「仕様が公開されているPDFの世界でサード・パーティ製の低価格PDF作成ソフトが数多く出荷されている点を考えると,Office互換ソフトが登場する可能性はある。ただし,出力(印刷)結果までOfficeと完全互換な製品を開発するのは難しい」という。

 理由の一つは,Officeの文書形式が,どのように出力するかまで正確に定めていないことである。出力結果を正確に記述することを最優先したPDFと違い,Officeの文書形式はあくまで編集を繰り返すことを念頭に設計されている。例えば行末の文字が1行の幅から少しだけはみ出す場合に,文字間隔を詰めてその行に入れるか,次の行に送るかといった判断は,文書を出力するアプリケーション次第だ。こうした組版上のアルゴリズムまでOfficeと完全互換なソフトを作るのは,リバース・エンジニアリングでもしない限り事実上不可能である。

 もっとも,こうした出力結果の非互換性はOfficeのバージョンの違いによっても発生する可能性があるので,そこまで要求するのは酷とも言える。実際,Office 2003互換をうたうOpenOffice.org 2.0も,出力結果は完全互換ではない。

メニューとツールバーはもう古い

 エンドユーザー向けの新機能としては,ユーザー・インターフェースの刷新が目玉となる。これも,Word for Windows 1.0以来20年近くにわたって採用してきたメニューとツールバーによるGUIを置き換える大掛かりなものだ。Office 12で新たに採用する「コマンド・タブ」(図3[拡大表示])は,[Write][Insert][Page Layout]といったタブごとに,関連するコマンドをまとめたもの。タブの中には,編集対象や現在選択中のオブジェクトの種類などに応じて表示が切り替わるものもある。これにより,膨大な数のコマンドの中からユーザーが必要とするものだけを整理して提示できる。これまでのOfficeもユーザーがよく使うメニュー項目だけを表示する機能を備えていたが,コンテキストに応じて全面的に表示を切り替えるのは初めてだ。

 コマンド・タブ上には,通常のボタンなどのほかに,「ギャラリ(Gallery)」と呼ぶ新たなユーザー・インターフェース要素を配置する。ギャラリは,書式などに関する典型的な設定の組を「見本」とともに表示する機能である(図4[拡大表示])。ユーザーは,設定ダイアログを開いて複数の項目を設定しなくても,これらの見本の中から選択するだけで望む結果を得ることができる。ギャラリの選択項目にマウス・ポインタを移動すると現在編集中のドキュメントに設定を適用した結果を表示する「ライブ・プレビュー」機能も用意する。

 Officeのユーザー・インターフェースの変更は,ほかのアプリケーション開発ベンダーへの影響も大きい。Officeが新たに搭載したユーザー・インターフェースを,サード・パーティ製アプリケーションが追従して採用するケースが少なくないからだ。開発者向けにソフトウエア部品を販売するグレープシティは,「現時点で決定しているわけではないが,Office 12形式のインターフェース部品を出すのはほぼ確実」(福地 雅之 マーケティング・コミュニケーション本部長)という。