「ユビキタス・インフラとなる共通プラットフォームをおさえた企業が強くなる」。そこで、NTTデータの松本隆明技術開発本部長は共通プラットフォームに必要となる(1)システムを連携させるインテグレーション技術、(2)ソフトの開発生産性を高める生産技術、(3)蓄積した情報を分析するビジネス・インテリジェンス(BI)、の3つが重要なテーマになるとする。

 総勢230人弱の技術者を抱える技術開発本部は、年間に売り上げの1%弱にあたる70億から80億円を投じ数年先を睨んだ研究開発に取り組む部隊。これまでSI(システム・インテグレーション)サービスを展開するうえで必要となる個別の要素技術に注力してきた。セキュリティ分野なら認証ソフトといったSIサービスのコアとなる部品で差別化を図るためで、セキュリティやユーザー・インタフェースなど約10グループに分けて個別要素技術の研究開発を行ってきた。

 だが、オープン化が急速に進展してきたことに加えて、様々な分野で標準化が進んだことで個別要素技術や部品だけで勝負することが難しくなってきたという。なので、テーマを業種横断的な共通プラットフォームの構築技術に移すことを決断し、上記3テーマの研究開発に絞り込んだ。

 松本氏が最も重要視するのがインテグレーション技術。「単にシステム同士をつなぐということだけでなく、仮想化されたレベルで連携させる技術だ。SOA(サービス指向アーキテクチャ)がその1つになる」。多くのシステムは企業内に閉じた活用から、企業間、さらには消費者を含めた誰でもが使えるようものになってきたからだ。また、データベースの肥大化など処理する情報量が膨大になってきたこともあって、“つなぐ”という技術がクローズアップされてきた。しかも閉じたシステムで処理することから、分散して処理する時代にもなる。ここでは例えばグリッド技術が大きな役割を担う。

  共通プラットフォームの1つが05年4月に発表したIDコマース基盤になる。IDをキーとして複数のITシステムや機器を連携させるユビキタス時代の共通プラットフォームという位置付けで、富士通やNEC、日立製作所と共同で必要な機能要件やインタフェースの検討、さらには実証実験を行う。「業種横断的な基盤を作るのが狙い。例えばトレーサビリティを考えると、生産、流通、小売りのシステムを連携させる必要があるのは明白」(松本氏)。

生産技術やアーキテクチャの研究も

 いかに効率よく高品質なソフトを開発するうえで生産技術の重要性も増す。そこで技術開発本部内に05年7月に設置したソフトウェア工学推進センターがソフト工学的な手法で方法論やツール、アーキテクチャの研究に取り組む。「XMLやUMLといった標準仕様が固まり、かつ普及してきたことが背景にある。人手でプログラムを書き、デバッグし徹夜でテストをする。スマートではない」(松本氏)。ここで開発する生産技術は海外で通用するものにする。オフシェア開発を考えれば当然の成り行きだという。

  システム設計・構築やビジネス・アーキテクチャなどアーキテクチャの研究も重要なテーマに取り上げた。システムの全体像を描けるような技術者を育てるという大きな狙いもある。「個別システムを作ることにIT業界は特化したことで、全体像を描けなくなってしまった」(松本氏)。特に「“つなぐ”ためのプラットフォームを考えると、構造はこうしたほうがいいとか、それに必要な機能はこんなものになるだろうといったことを検討する」(同)。場合にとってはOSレベルから研究する可能性もあるという。

 つまり、再び個別要素技術や部品の開発が必要になる時代が来るかもしれないということだ。もちろん個別部品はプラグインの感覚で使えるようにする。連携したシステムの先にある機器や利用者の状況が分かる仕組みも要る。こうした技術も共有プラットフォーム作りに欠かせない。

 最後がBIの研究になる。請け負いから提案型ビジネスへの転換を図るうえでカナメのテーマになる。企業内に蓄積した様々なデータを分析し、そこから「御社のビジネス上の課題はここあり、こんな解決方法がある」と提案するために、データマイニングや大量データの検索などといった技術の研究に着手している。「現在、どうやって分析するのかといった技術を磨いているところだが、いくつかのパターンがあることが分かりつつある段階にきた。恐らくリスク予測など9パターンがありそうだ」(松本氏)。

 リスク予測とは、例えば携帯電話ユーザーの使用履歴から、こんな使い方をするユーザーは、いずれこのサービスを中止するだろうと予測するもの。その分析結果から、サービス離れを起こす前に、そのユーザーに徹底的に別のサービスのプロモーションをかけるといったことが可能になる。これまでも、こうした案件は個別システムとして受注した実績はあるが、技術開発本部は分析パターンのテンプレート化を考えている。そのため事例を収集しながら、3年から4年後にテンプレートを完成させる計画。

 こうした共通プラットフォームの上に、例えばオンラインバンキングなどのアプリケーションが乗せていくことになる。NTTデータは06年度に売上高1兆円を目指し、04年度から06年度までの3年間に成長路線に乗せる新施策を実行するために年間150億円を投資している(関連記事)が、技術開発本部の研究開発はこれとは別で将来に向けた投資という位置付けになる。

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