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色とりどりのスパゲッティ。おいしそう・・・なわけがない。職場のサーバー・ラックの裏です。このケーブルをまとめるのに数時間かかりました。(写真:エイジ)

from 担当編集者(4件)
*1
エイジさんがよく使っているのはフリーの「SPP」だそうです。ダウンロードはこちらから。
*2
ping,netstat,nslookup,route print,telnetは,いずれもWindowsのネットワーク・コマンドです。コマンド・プロンプトから実行します。
*3
メールをやりとりするプロトコルであるSMTPは,メールを受け取る際に送信元を確認しません。そのため,送信者の名前やメール・アドレスは簡単に偽装できてしまいます。
*4
セキュリティ意識を持ってもらうために「ネットワーク管理者は,自分以外は全員敵です!」と言ったら爆笑されたそうな。エイジさんの気持ちはわかります。でも,ちょっと例えが大げさすぎません?

 

 僕は専門学校の先生なので,いつもは専門学生に授業をしています。主にネットワークがらみの授業ですけれど。こうした学生向けの授業は通常,半期(半年)にわたって週に何回かのペースで授業をするので,OSI基本参照モデルといった理論からTCPやIPといった実際のプロトコルまで,みっちり勉強できます。

 でもたまに,専門学生以外の外部の人向けの短期講座を受け持つこともあります。例えば,中学校や高校の先生向けの講座とか。こうした短期講座だと,教えられる時間は多くても8~10時間くらい。それなのに,「ネットワーク構築講座」なんてご大層な講座名が付いちゃったりしているので,こちらもそれなりの作戦で臨みます。

 短期決戦の授業では,ネットワークのしくみや動作がわかるようなエッセンスだけを取り出して,それを「実際に目で見せる」ことに勝負を賭けます。なんか,こう書くといい加減な講座をやってるように聞こえちゃいますね。そういうわけではないんですよ。でも,ネットワークって,しくみや動作を「目に見える」形にするのって難しいんです。そのために,あの手この手を使います。

 こういうときにわりと役に立つのがリピータ・ハブです。LEDランプがピカピカ点滅しているのを見せて,コリジョンの話ができるし。スイッチング・ハブだとなかなかこうはいかないわけで。流れてるパケットをキャプチャしやすいのもハブのいいところです。

 あと,ポートスキャナ*1を使ったデモは,なかなか好評です。Webサーバー・ソフトを稼働したときと停止したときの両方でサーバーに対してポートスキャンを実行して,「ポートの開け閉め」を見てもらうわけです。

 ネットワーク・コマンドもよく使います。ping,netstat,nslookup,route printなんかは定番中の定番ですね*2。あとよく使うのがtelnet。telnetを使ってHTTPやSMTPといったアプリケーションを手動で実行するわけです。プロトコルの動作を知るにはこれが一番。メールの送信元アドレスの偽装もtelnetなら目の前で見せられます。いかにSMTPが「ゆるい」*3プロトコルか目の当たりにできるわけです。

目的や用途が見えると楽しい

 学校の先生に一番評判が良かったのは,URLフィルタとか禁止ワードを設定できるプロキシ・ソフトですかね。これはもう大ウケ。これまで眠そうだった人も,目の色が変わりました。先生はみんな,学生のWebアクセスの管理に苦労してるんだなぁと思いました。

 逆にウケがよくなかったのがIDS(侵入検知ソフト)のデモ。サーバーに攻撃パケットを送って,それを検知したログを見せても,「へ~それで?」ぐらいな感じなんですよ。くそう,僕の教えている専門学生に見せたら大ウケだったのに。正直,学校の先生方ってセキュリティの考え方はちょっと甘いかも*4。それよりも,さっきのフィルタリングとかファイルのアクセス権の管理などには熱心だったりします。

 あとキツかったのが,ルーターのルーティングを見せるデモ。これは目に見える形にするのが難しかった。結局,ルーティングのパケットをキャプチャして見せたり,ルーティング・テーブルが作られていく過程を見せたんですけれど,いまいち反応が薄い。まあ,ルーターを何台も使うような環境の人達相手の講座じゃないからかも。

 これでわかるのは,自分と関係のあるものに対しては,勉強も積極的になれるということ。一見難しそうな技術でも,「この機能は使ったら便利かも」とか「この技術はこういう場面で使われているのか」などと思えると,楽しく勉強できるんじゃないかと思います。


筆者紹介
ネットワークの勉強サイトRoads to Nodeの管理人。Flashで作った動画の技術解説が好評。本職は,技術系専門学校の講師。IT Proでは「シスコ資格:CCNAへの道」と題したCCNA試験対策の記事を連載中(毎週火曜日更新)。網野衛二というペンネームで執筆活動も始めている。