Edyを運営するビットワレットの川合成幸社長。手に持つのは全日空との提携Edyカード
Edyを運営するビットワレットの川合成幸社長。手に持つのは全日空との提携Edyカード
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 JR東日本は1月28日、携帯電話を利用して自動改札機を通過したり駅売店などで買い物ができる新サービス「モバイルSuica(スイカ)」を始めた。ICカード型乗車券としてスタートしたSuicaは、電子マネーとして駅周辺店舗での買い物でも使えるようになり、ファミリーマートやスリーエフなどコンビニエンスストアでも利用可能店舗が増えつつある。

 これに対抗するのがソニー系のビットワレット(東京・品川)が運営する電子マネー「Edy(エディ)」である。ICカードによるサービスに加え、既に2004年7月から携帯電話を利用したサービスを始めている。利用可能店舗もコンビニのam/pm全店など約2万6000店舗(Suicaは約3000店舗)に及び、買い物で使う電子マネーサービスとしては一日の長がある。

 ビットワレットの川合成幸社長(写真)に、今後の戦略について聞く機会があった。競争激化が進む少額決済市場を冷静に分析し、記者の質問にていねいに答えてくれた。以下でやり取りを紹介する。

---モバイルSuicaの開始をどう見ているか。

 現時点ではモバイルSuicaは、Edyのサービスとは少し違うものだと考えている。Edyは(対応携帯電話に必要ソフトをダウンロードすれば)誰でも利用できる。既にEdyによる決済全体に占める携帯電話の比率は、回数・金額ベースともに22~23%に達している。

 一方で、モバイルSuicaはクレジットカード(JR東日本系のVIEWカード)の会員でなければ利用できない。既に乗車券としてICカードのSuicaが広く行き渡っているので、「会員制」の側面を強めたのだろう。

 EdyとSuicaはある部分で競合しているので、脅威という面はある。しかし、少額決済の潜在市場は10~30兆円はあるとみているが、まだそのわずかしか顕在化していない。(Suicaの拡大によって)流通業などの間で電子マネーが便利だという認識が広がって、マーケット拡大につながるという意味ではありがたいこと。当社にとって、(他社との競争よりも)マーケットが拡大するかどうかが最大の事業成立要件になるからだ。

---セブン&アイ・ホールディングスは、グループのセブン-イレブンやイトーヨーカドーなど約1万2500店で使える、EdyでもSuicaでもない独自の電子マネー・ICカードの導入を決めた。

 電子マネーの運用には万全のセキュリティー対策などが求められ、大きな投資が必要。セブンさんほど投資余力があるなら、独自に取り組むというのも分かる。一般の流通業では難しいかもしれない。

 顧客分析などの機能面は、独自の電子マネーでなくてもEdyで実現できる。ただし、ブランド形成という面では、独自のICカードを発行したほうがいいという判断もあり得る。

 当社は、セブンさんにはずっとアプローチをしていた。今でも、決済手段の1つとしてEdyを採用してもらいたいと思っている。百貨店では、独自のハウスカードも使えるし、JCBやVISAなどのカードも使える。それと同様のことを目指したい。

---三井住友カードが携帯電話による少額クレジット決済サービス「iD」を始めるなど、ほかにも競争相手は多い。Edyの優位点は何か。

 iDなどのクレジットカード系サービスとは一定のすみ分けができると考えている。Edyが誰でも持てるのに比べ、クレジットカードは申し込みや与信手続きなどがあり、最初のハードルが高い。それに、「後でまとめて請求が来る」「買い物の内容が奥さんにばれる」といった理由でクレジットカードに抵抗がある層が一定数いる。コンビニのサークルKとサンクスでは、Edyとクレジットカードの両方が使えるが、Edyのほうがクレジットより数倍利用が多いと聞いている。

 加えて、顧客分析などマーケティング活用のためのノウハウも蓄積しているのも特長だ。am/pmのように個人情報を取得したうえでEdyによって顧客動向を把握する方法もあれば、(カフェ・バーチェーンの)プロントのように個人情報を取得せずEdyの識別番号だけで顧客を管理する方法も柔軟に実現できる。

 マーケティング面の活用を支援するため、Edyを採用する小売店や、(提携先の)全日空などを交えた情報交換会を全国各地で開いている。Edyを使ったキャンペーン情報を全日空の機内誌に掲載するなど、Edyのネットワークを使った販促も実現している。

---Edyの今後の展開は?

 まずは国内を固めるが、将来的には海外展開もしていきたい。Edyのインフラは海外展開を意識した仕様にしている。

 実は日本は電子マネーの市場として世界一難しい市場だ。他国では、偽造紙幣や店員の計算間違いなどの問題が日本以上に大きく、電子マネーのニーズがある。私は以前クレジットカード会社にいたとき、ブラジルでカード普及事業を担当したことがあるが、ブラジルでは定期収入があってクレジットカードを持てる人は全体の2割しかいなかった。こういう国でこそ、(先払い方式の)Edyに大きな可能性がある。