ホーリー・ファイバは,“曲げに弱い”という光ファイバの弱点を克服した,曲げに強い新しい光ファイバである。最大1Gビット/秒の光ファイバ回線をユーザー宅に引き込むFTTH(fiber to the home)の制約となっている,従来の光ファイバの弱点を克服し,熟練作業者でなくても工事できるようにするものだ。
ホーリー・ファイバが曲げに強いのは,その構造に秘密がある(図)。ホーリー・ファイバの心線は,コアの周りを空洞で取り囲んでいる。空気はクラッドよりも屈折率が低く,空気との境界ではより光を反射しやすくなる。このため,ケーブルを大きく曲げても光がコアに閉じこめられる。
一般の光ファイバ・ケーブルの心線は,内側の「コア」とその周囲を覆う「クラッド」の2重構造になっている。通常,コアを通る光はコアとクラッドの境界面で反射され,コアの外部に漏れることはない。しかし,ケーブルを大きく曲げると,光はコアの外に突き抜けてしまう。
光ファイバを宅内に引き込むFTTHの工事はこれまで,(1)配管を通した光ファイバ・ケーブルの余った部分を切断する作業(余長処理)と,(2)ファイバが急激に曲がらないように宅内側のコネクタを設置する作業——という二つが必要だった。これらは両方とも,光ファイバの工事に熟練した作業員でなければできない。
そこで,NTTと松下電工は共同で,ホーリー・ファイバを活用し一般の工事作業者だけで(1)と(2)を完了できる「FTTH対応先行光配線キット」を開発した。(1)については,曲げに強い特徴を生かしてカール状にした「光カール・コード」を使い,1mの縮んだ状態から最大25mまで伸ばせることで,配管の長さに合わせた余長処理の必要をなくした。(2)については,コネクタとケーブルの接続材(ブーツ)を短くすることで,ファイバを急激に曲げなくとも壁内にコネクタを設置できるようにした。
また,NTTはホーリー・ファイバを使った宅内用のケーブルも開発した。従来はユーザーが余ったケーブルを勝手に結んだりして,通信できなくなるというケースがよくあったという。今回開発したケーブルでは,図の写真のように固く結んでも通信できる。