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図1●東証の清算/売買システムの処理能力と約定/注文件数
図1●東証の清算/売買システムの処理能力と約定/注文件数
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図2●ジャスダックの売買システムの処理能力と注文件数
図2●ジャスダックの売買システムの処理能力と注文件数
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証券取引所がシステムの能力増強に追われている。東京証券取引所は1月23日に約定処理の清算システムを緊急増強した後、30日には同システムを全面刷新した。大阪証券取引所は売買システムの注文処理能力を約6倍に、ジャスダックも1.4倍に引き上げた。

 東京証券取引所が2度にわたりシステム能力を増強せざるを得なかったのは、ライブドア事件をきっかけに1月17日以降売り注文が殺到したためだ。翌18日、約定件数が清算システムの限界である450万件を上回る可能性があったため、14時40分に東証1部・2部・マザーズ市場の株式、転換社債型新株予約権付社債(CB)および交換社債全銘柄の取引を強制停止した。

 昨年11月に大規模なシステム障害を引き起こしている東証にとって、取引全面停止は、トラブルを最小限に抑える意味で適切な判断だったと言えるだろう。

30日の清算システム刷新を待てず

 東証は1月19日から、約定件数の増加を抑えるため、午後の取引時間を30分短縮するという異例の措置をとった。この時点では、1月30日に予定していた清算システムの刷新まで、上限450万件のシステムでなんとか持ちこたえるつもりだった。

 ところが、取引時間を30分短縮して臨んだ1月19日も、約定件数が取引停止の上限ぎりぎりの400万件に達するなど、綱渡りの状態が続いた。そこで東証は20日、清算システムの臨時増強を決断。1月21日と22日の作業で、「メインフレームに接続したディスク装置のうち、開発用に使っていた領域を、本番用に割り当てる処置を施し、50万件分の性能向上を果たした」(決済管理部)。この結果、500万件の約定処理に耐えるようになった(図1[拡大表示])。

 緊急処置の発表からわずか10日後の1月30日には、東証がかねて準備していた清算システムの全面刷新が控えていた。動作プラットフォームを日立製作所製メインフレームから同社製UNIXサーバーに移行し、アプリケーションも全面再構築するという大規模な切り替えだ。あと10日間しのぐことができれば、500万件の処理能力を持つ新システムが使えるようになるにもかかわらず、旧システムの増強に踏み切らざるを得なかった。

 東証は年内を目標に新システムの500万件という処理能力を、「700万件以上に引き上げる計画だ」(東証の西室泰三社長兼会長)。ただ、システムの処理能力をいくら高めても、取引量がそれを上回れば、またすぐに能力を増強しなければならなくなる。とはいえ投資対効果を考えると、「取引量の何倍もの処理能力を確保しておけばいい」とも言い難い。

 東証はこれまで、「基本的に取引実績の2倍程度の容量を確保する方針」(決済管理部)で性能増強を続けてきた。だがここ2~3年は、個人のインターネット取引の急増に追いつくのが精一杯だった。

大証は69億円投じ能力6倍に

 システム増強に追われるのは、東証だけではない。大阪証券取引所は2月中に、1部・2部・ヘラクレスの売買システムを刷新、注文処理能力を現行の6倍に相当する400万件に増やす。約定処理の能力も現行の1日120万件から244万件に引き上げる。東証が取引停止に追い込まれた18日の大証とヘラクレスを合わせた約定件数は約33万6000件だった。

 大証は売買システムや情報配信システムの処理能力が不足し、2005年4月以降、株価の情報配信や約定処理に遅延が頻繁に生じた。同社は2005年夏に、売買システムを富士通製メインフレームから日立のUNIXサーバーに移行する計画だった。しかし、要件定義などに時間がかかり、移行を延期していた。情報配信まで含めたシステム刷新の投資額は69億円になる。

 大証は、新システム稼働後すぐに、次の増強に取り掛かる。数カ月以内に注文処理能力を倍増する予定だ。

ジャスダックは「3~4年は対応可能」

 昨年、性能不足や設定ミスなどで3度のシステム障害を引き起こしたジャスダックも1月10日、約20億円を投じて売買システムの処理能力を引き上げた(図2[拡大表示])。コンピュータ・センター移転に合わせてハードを入れ替え、1日当たりの注文処理能力を140万件から、200万件に増強した。

 日立製作所製のメインフレームを導入、システム開発は従来通り日立が担当した。能力増強にかけた20億円の内訳は、サーバーのハード費用が13億~14億円、ルーターなどのネットワーク機器が1億~2億円、人件費やテスト費用などが5億円だった。

 ジャスダックの売買注文も、ライブドアの不正取引報道をきっかけに増加している。報道前の1月11日時点で80万件前後だった注文件数は、報道後に90万件程度に増えた。増強によりジャスダックは、今後の注文増に余裕を持って処理できる体制になった。

 ジャスダックによると、刷新した現行システムの注文処理能力は最大200万件だが、ハードウエア自体は400万件の処理に耐える能力を持つという。「ディスク装置の割り当てのうち、注文データを保存する領域を広げ、売買プログラムを最適化すれば400万件まで処理できる」(ジャスダック・システムソリューションの船戸弘常務)。これにより「今後3~4年は注文増に対応できるだろう」(同)とみる。

東阪のCIOはNTTデータ出身

 東証と大証は、システムの能力増強と並行してCIO(最高情報責任者)ポストを新設、1月末にそれぞれ人選を終えた。東証のCIOは、NTTデータフォース社長の鈴木義伯(よしのり)氏(57歳)で、2月1日に就任した。大証は、NTTデータ中国社長の有富和利氏(58歳)で、就任は4月1日付になる。

 2人はいずれもNTTデータで金融システム分野に携わってきた。証券取引所のシステム再構築はNTTデータ主導で進む可能性が高くなった。