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■Webサイトで提供する情報・サービスが増えている<BR>Webサイトの情報・サービスの代表的な項目を、昨年の調査結果と比較してみた。十分とは言えないものも残っているが、いずれの項目も対応が進んでいる
■Webサイトで提供する情報・サービスが増えている<BR>Webサイトの情報・サービスの代表的な項目を、昨年の調査結果と比較してみた。十分とは言えないものも残っているが、いずれの項目も対応が進んでいる
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■デザインやアクセシビリティがバラバラな自治体が多い&lt;BR&gt;ある政令市のトップページ(左)と同市の議会のページ。同じ自治体とは思えないくらいデザインや操作性が違っており、Webページのアクセシビリティにも差がある
■デザインやアクセシビリティがバラバラな自治体が多い<BR>ある政令市のトップページ(左)と同市の議会のページ。同じ自治体とは思えないくらいデザインや操作性が違っており、Webページのアクセシビリティにも差がある
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■アクセシビリティ対策はまだ不十分&lt;BR&gt;ガイドラインの策定率は13.2%と少ない。個々のアクセシビリティ対策も進んでいない
■アクセシビリティ対策はまだ不十分<BR>ガイドラインの策定率は13.2%と少ない。個々のアクセシビリティ対策も進んでいない
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■個人情報の扱いの説明が不足&lt;br&gt;民間ページでは一般的となっている「個人情報の取り扱いについての説明」も、自治体の掲載率は低い
■個人情報の扱いの説明が不足<br>民間ページでは一般的となっている「個人情報の取り扱いについての説明」も、自治体の掲載率は低い
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■全庁的な管理体制も未整備&lt;br&gt;Webサイト運営に関する庁内横断の推進組織を設置している割合は13.9%と少ない
■全庁的な管理体制も未整備<br>Webサイト運営に関する庁内横断の推進組織を設置している割合は13.9%と少ない
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■情報発信の促進と品質管理の両方に役立つCMS&lt;BR&gt;CMSにより、職員は特定のスキルなしで情報を発信でき、品質の管理も可能になる。Webページの公開や削除を行う日時を設定するといった管理機能もある
■情報発信の促進と品質管理の両方に役立つCMS<BR>CMSにより、職員は特定のスキルなしで情報を発信でき、品質の管理も可能になる。Webページの公開や削除を行う日時を設定するといった管理機能もある
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■お勧め情報や履歴をページ右側に自動生成&lt;BR&gt;東京都荒川区は、今見ているページの関連情報を右側にリストアップする。神奈川県藤沢市は、過去にたどったページを最大5ページまで表示する「あしあとリンク」を用意した
■お勧め情報や履歴をページ右側に自動生成<BR>東京都荒川区は、今見ているページの関連情報を右側にリストアップする。神奈川県藤沢市は、過去にたどったページを最大5ページまで表示する「あしあとリンク」を用意した
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■広報誌作成を効率化(京都府精華町)&lt;BR&gt;CMSの導入を機に、Webページと広報誌の作成作業を統合し、作業の効率化を図った。職員が情報を入力する際、広報誌に出す情報は「広報誌掲載」欄にチェックを入れ、掲載号を指定する。広報担当はチェックが付いた情報を抜き出して、広報誌を作成する
■広報誌作成を効率化(京都府精華町)<BR>CMSの導入を機に、Webページと広報誌の作成作業を統合し、作業の効率化を図った。職員が情報を入力する際、広報誌に出す情報は「広報誌掲載」欄にチェックを入れ、掲載号を指定する。広報担当はチェックが付いた情報を抜き出して、広報誌を作成する
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■住民からの意見をWebサイトにフィードバック(名古屋市)&lt;br&gt;2005年4月にWebサイトを全面リニューアルした名古屋市。2002年度からリニューアルの検討を開始。システム構築、カスタマイズ、コンサルティング、ページ移行などに総額で約7500万円を掛けた
■住民からの意見をWebサイトにフィードバック(名古屋市)<br>2005年4月にWebサイトを全面リニューアルした名古屋市。2002年度からリニューアルの検討を開始。システム構築、カスタマイズ、コンサルティング、ページ移行などに総額で約7500万円を掛けた
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 自治体のWebサイトは独自の工夫を盛り込みながら、着実に進化している。だが、情報が増え続ける中、デザインの統一やアクセシビリティ対策などが進まないという問題も抱えるようになった。

 

 自治体のWebサイトの内容が充実してきた。下のグラフにあるように情報量は毎年の調査を経るごとに着実に増加している。

 多くの自治体サイトで、引っ越したときや、住民票の写しなどの書類が必要になったときなどに、どこで何をすればいいかがすぐに分かるようになっている。さらに、子育て情報、図書館の情報、地域のイベント情報など、日ごろの暮らしに役立つ情報も充実してきた。一方、病院の案内や検索機能のように、住民ニーズがある情報やサービスの提供割合が半分以下となっているなど、十分でないところも残っている。

 住民が効率よく情報を受け取れるように、工夫し始めた自治体もある。

RSSリーダー対応や携帯電話活用も進む

 ランキングで首位になった西宮市、大阪市、名古屋市などはRSS形式での情報提供を始めた。RSSリーダーというソフトを使えば、Web上にあるRSS形式の記事、ニュースなどを自動収集して、メールソフト風の画面で一覧できる。今回の調査では1.6%の自治体がRSS形式の情報を提供している。

 一方、茅野市はメールを使った情報提供を昨年から始めている。地域コミュニティサイトの中にWebメール機能を用意、あらかじめ地域情報やグルメなど欲しい情報ジャンルを指定しておけば、該当するコンテンツがWebメールで届く。

 携帯電話を活用する事例も増えている。神奈川県厚木市では6月に、携帯電話で図書館の本が借りられるサービスを開始した。熊の出没情報、学校給食の献立、市バスの時刻表、終電案内などを携帯電話向けに提供し始めた自治体もある。

Webに求められる要件に対応できない自治体

 熱心な自治体は創意工夫を重ねて、住民に役立つ情報提供を着々と進めている。だがその一方で、多くの自治体が増え続けるコンテンツをどう管理していけばいいかについて課題を抱えることになった。

 そもそも、自治体がWebサイトで提供すべきコンテンツは、各部署が持っている。ここ数年、多くの自治体が各課から直接情報を発信する体制に変わり、「各課1ホームページ」などの仕組みでコンテンツの拡充を進めてきた。だが、庁内の職員全員にHTML作成のスキルを浸透させるのは難しい。結局、ITスキルのある特定の職員、部署のみ情報発信する状況になったり、部署によってデザインや操作性がバラバラになったりする事態に陥った。

 昨年6月にはWebページのアクセシビリティ対策の基準がJIS(日本工業規格)に加わった。自治体には、JISを尊重する義務がある。画像に代替テキストを付けて音声読み上げソフトへの対応を図るなどの対策を講じなければならない。

 だが現実問題として、各職員が個々のアクセシビリティ対策をきちんと習得するのは難しい。実際、今回の調査結果(グラフ上)から明らかなように、アクセシビリティ対策は総じて不十分だ。

 これらを全庁的に統括管理するには、全庁横断の組織が必要だ。デザインや使い勝手、アクセシビリティなど統一して取り組むべき点は横断組織が固め、一方で各部署は情報の発信に専念できるようにすることが肝心だ。現状では、多くの自治体がこういった体制になっていない。今回の調査でも、Web管理のための全庁的な横断組織があるのは、わずか13.9%だった。

 また、自治体として統一して表明すべきルールも、整備が進んでいない。「個人情報の取り扱いについての説明」や「免責事項」などは、個々の部署が考えて公開するものではなく、自治体全体が全庁横断で取り決めるべき内容だ。民間のWebサイトなら「個人情報の取り扱いについての説明」を公開するのが一般的になっているのに、これに対応する自治体の割合は2割程度にとどまっている。

 今後も拡大し続けるWebサイトを統一的に管理するには、前章で触れた「Webガバナンス」の考え方の下、体制の整備、ルールの策定、職員の意識向上に取り組まねばならない。

CMSで一元管理して情報発信を促進

 アクセシビリティ対策や、Webサイト全体でのデザインの統一を進めるには、基準を満たしたひな形(テンプレート)を用意するのが従来からの一般的な手法だ。最近は、職員が一定の方法で入力したデータを基に、基準を満たしたWebページを自動生成するコンテンツ・マネジメント・システム(CMS)を利用して、アクセシビリティ対策などを進める自治体も増えている。

 CMSを導入すれば、職員がフォーム上でデータを入力するだけで、すぐにWebサイトに情報を提供できる。その際、画像に代替テキスト(alt属性)がない場合などに警告を出すこともでき、Webページのアクセシビリティ対策は格段に進む。今回の調査では、9.3%の自治体がCMSを導入済みと回答している。

 東京都墨田区、足立区、神奈川県藤沢市などの導入自治体は、「住民に対する情報提供を充実させながら、同時に品質やアクセシビリティを確保するために必要」と判断、CMSの導入に踏み切った。導入した自治体は、各課の担当者が情報提供しやすい仕組みになったことから、導入以前に比べて情報量が増えている。昨年12月に導入した京都府精華町では、CMS導入前の11月末時点では職員が作成したページは587ページだったものが、今年7月1日時点で3135ページと大幅に増えた。

Web管理だけではもったいない

 CMSの導入をきっかけに、サイトの使い勝手向上や業務の効率化を図る自治体もある。通常の自治体サイトは、各課単位で情報を発信するために、リンクの張り方も“縦割り”になりがちだ。「子供が生まれた」「引越しする」といったイベントごとに情報を提供するなら、組織横断のリンクがあった方が便利なのは明らかだ。しかし、実際には組織の壁により実現できていない。

 荒川区は、今見ているページに関連する情報へのリンクを、画面の右側に用意している。このリンクはCMSによって自動で挿入している。また、厚木市や藤沢市のように、印刷用ページをCMSで自動生成している自治体もある。このほか、精華町のように、住民に発信する情報をCMSのデータベースに一元化し、広報誌の作成業務の効率化を進めた例もある(左下図)。

 名古屋市は、CMSを多面的に利用すると同時に、Webサイトの質向上を目指して、組織・体制面での取り組みを進めている(右図)。

 「ユーザーからの声をフィードバックするサイクルを作る」(市政情報課の綱島正人主事)ため、Webページの下部に、ページの評価を聞くアンケートの入力欄を配置。利用者の声が担当者に届くようにした。ここで集めた記事評価のベスト10とワースト10は、担当者が確認できる。

 住民から寄せられた問い合わせは1週間以内に対応しないと、担当課に対応を促す体制にした。綱島氏によると、サイトのリニューアル後、住民からのコメントや問い合わせが大幅に増えたという。実際に住民からの指摘により、イベント案内ページに地図へのリンクを用意するといった改善を実施した。

 CMSは現在自治体のWebサイトが抱えるさまざまな問題を解決する道具として有効だ。ただし、Webページのデザインが画一的になりがちで、掲載できる写真の数に制約が生じるケースもある。

数百万円から数千万円高い導入費用が難点

 最大の問題は、導入費用が掛かる点だ。自治体の規模やCMSの種類にもよるが、CMSのシステム構築を外部に発注すると、数百万円から数千万円程度の費用を要するケースが多い。例えば、従来のWebサイトからの移行作業を庁内で実施した小田原市の場合、ハードウエアとソフトウエアを合わせた費用は4年リースで約700万円。移行作業を外注した墨田区や足立区は、約2000万円の費用が掛かったという。ちなみに、神奈川県横須賀市や西宮市のように自力でCMSを開発したところもある。

 住民が満足できるWebサイトにするには、デザインの統一やアクセシビリティ対策と同様に、情報の質にも気を配る必要がある。いくらデザインが整っていても、言葉が分かりにくく、内容が乏しかったら意味がない。役所言葉や専門的な用語は避け、より具体的な記述を心掛けるなどの取り組みが望まれる。

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