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通信やネットワークの書籍や雑誌を読んでいると,よく「チャネル」という用語が出てきます。無線LANのチャネル,携帯電話の通話チャネル,ISDNのBチャネルとDチャネル,FTP(file transfer protocol)通信のデータ・チャネルと制御チャネルなどなど。どれも目には見えない概念的なものなので,実感しにくいというのが本音ではないでしょうか。

 一方,チャネルに似た用語に「チャンネル」という言葉があります。チャンネルと言われて多くの人がイメージするのが,テレビのチャンネルでしょう。チャネルとチャンネルは,まったく違うものを指しているように思えます。でも本当に違うものなのでしょうか。

どちらも意味は「データの通り道」

 結論から言うと,チャネルもチャンネルも語源は英単語のchannelで,意味も同じです。両者の違いは,発音だけです。channelの意味は,英和辞書のはじめの方には「海峡」や「水路」などと書かれています。また,「情報が流れる道筋」や「電信の通信路」などとも記載されています。つまり,チャンネルもチャネルも,意味は「データの通り道」というわけです。

 ただ,チャネルと言うと,物理的な通信路よりも論理的な通信路のことを指す場合が多いようです。例えば,ISDNのBチャネル(データ伝送用チャネル)もDチャネル(制御用チャネル)も,物理的な伝送路は1本の電話ケーブルです。そこに流れるデータの種類を区別して,伝送路が2種類あるように見せかけているだけです。

 一方のチャンネルはというと,物理的なイメージがあります。昔のテレビ受像機なら,実際に手で回すダイヤルのことをチャンネルと言っていました。今では,リモコンでチャンネル・ボタンを押すのが普通ですが,それでも「チャンネルを回す」と言ったりします。

 テレビのチャンネルも,見かけは物理的ですが,実は論理的なデータの通り道を指しています。地上波テレビ放送とISDNを比較してみましょう。

 テレビ放送では,電話ケーブルの代わりに空間という物理的な一つの伝送路を使い,電気信号の代わりに電波を使って情報を伝達しています。しかも,テレビでは,複数の放送局からの映像を選んで受信できるようになっています。こう考えれば,テレビ放送も物理的な伝送路は一つなのに,論理的には複数の伝送路があるように見せかけているのがわかります。

 そして,この論理的に分けたデータ(映像)の伝送路がチャンネルと呼ばれるのです。私たちは,テレビ受像機に付いているボタンやリモコンを使って,論理的な伝送路であるチャンネルを切り替えて,受信する映像を選んでいるというわけです。

 では,なぜ二つの呼び方があるのでしょうか。

通信業界と放送業界の方言のようなもの

 このことをNHK放送文化研究所に聞いてみたところ,「チャンネルという呼び方は,テレビ放送の国内研究が本格的に始まった大正から昭和初期(1920~1930年)のころ,テレビの研究者たちがchannelをチャンネルと発音したのがはじまり」とのこと。その後,テレビが普及するにつれて,放送の世界では,チャンネルという呼び方が定着しました。

 一方,LANやWANといった通信技術は,放送の世界とは別に発展してきました。channelの発音は,チャンネルよりチャネルの方がネイティブに近いと思われます。このため,通信の世界では,「チャネル」という呼び方が定着したようです。チャネルとチャンネルという呼び方の違いは,通信と放送の世界の方言のようなものだと思ってかまわないでしょう。