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 「消費の主役は女性」と言われたのは数年前のこと,最近は「男性復権」という嬉しい文字も散見される。とはいえ,顧客の大半を女性が占める当社では,やはり女性を意識したマーケティングを展開しており,流行に敏感な女性にアピールすべく女性誌を中心とした広告戦略を採っている。私は,長年にわたって20種類以上の女性誌の記事やグラビアをチェックし,それらの定性情報を商品開発をはじめ様々に活用してきた。

 女性誌を開くと,ファッションに限らず多種多様の情報が目に飛び込んでくる。このとき重要なのは「衣・食・住」に加え,「遊・寛」というキーワードを切り口に眺めることだ。基本的な欲求が満たされた現代,「遊ぶ」「寛ぐ」という部分にかなりの時間やお金をかける消費者が増えているからだ。

 経費を遣って広告会社に調査を依頼するのも結構だが,雑誌1冊あたりの投資は月に数百円の投資で済む。このように自社で手軽に情報を収集する方法もあることを,ぜひ紹介しておきたい。

 雑誌で気になった記事は無造作に破り取る。そして,コメントを書きこんだ付せん紙とともに,内容に応じて企画や商品開発等のスタッフに手渡す。すると,彼らはその情報を各自の仕事にフィードバックしていく。

 現場スタッフは,彼らなりに様々な情報を集めているだろうし,同じ記事に着目しているかもしれない。しかし,経営者と現場スタッフの視点は異なり,感じ方や物事の捉え方も当然違うので,情報が重なっても決して無駄な作業とはならない。

 もちろん,せっかくの情報も内容を理解して活用できなければ意味が無い。従って,受け取り手である社員には「情報感度」を上げる努力を欠かさないよう,常に指導している。


POSと気候データの組み合わせで仮説検証経営を実践

 さて,長く冬の時代にあった百貨店の売上げがようやく上向いてきた。昨夏のクールビズ商戦の成功と,この厳冬が影響しているらしい。

 近年,新聞の経済欄には「猛暑」「暖冬」「異常気象」などの文字が躍り,家電業界やビール業界が一喜一憂する様が報道されるが,商品動向が天候に大きく左右されることは周知の通りだ。コンビニが弁当類の発注に際して天気予報をチェックするのは,今や常識である。当社でもデザートゼリーが主力商品となる夏は,気温の変化には特に敏感になる。「天候デリバティブ」なる保険商品もすっかり浸透し,今や「天気」は,それ自体が商品になるほどの重要な地位を企業経営の中で確立している。

 当社では20年以上も前から「天気」の重要性に着目しており,多少の経費はかかったが民間の気象情報会社と契約して,気象庁よりも精度の高い長期予報を入手し,販売戦略立案に活用してきた。

 POSシステムであるMAPS(MAry's POS System)から得られた過去の商品別構成比や売上高などのデータと,主要都市における日々の気温や降水量など,過去数年間の気候データを組み合わせてグラフ化すると,様々な相関関係が見えてくる。この分析結果をこつこつと蓄積して商品動向をある程度パターン化することで,数ヵ月先の気象予測に基づいて,より精緻(せいち)な販売予測を立てることが可能となった。いわば定性と定量,両データを活用した「仮説検証経営」実践の一例と言えるだろう。

 次回は,これまで紹介した様々な定性情報をいかに社内で公開し,共有しているかを説明しよう。

夏季の主力商品であるデザートゼリー。季節商品なだけに,精確な需要予測は必須。中元商戦をにらみ、毎年4月中旬から店頭に並び始める。(写真は2005年の広告イメージ)


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■原 邦生 (はら くにお)

【略歴】
 メリーチョコレートカムパニー,代表取締役社長。1935年東京都生まれ。青山学院大学文学部卒業後,同社に入社。取締役,常務取締役,代表取締役専務を経て,1986年より同社代表取締役社長に就任。1958年に日本で初めてバレンタインセールを企画。現在の巨大なバレンタイン市場の「生みの親」でもある。営業畑を歩んで来た一方で,独自の社内情報システムも一貫して推進してきた。2004年より,経済産業省が推進するIT経営応援隊(中小企業の経営改革をITの活用で応援する委員会)の本委員会会長,東京商工会議所常議員(CSR委員会委員長)などを務める。

【主な著書】
『家族的経営の教え』(アートデイズ),『今週の提言』(ストアーズ社),『この商いで会社をのばせ!』(かんき出版),『朝礼でちょっと考えてみたい52の話』(ストアーズ社),『続・朝礼でちょっと考えてみたい52の話』(ストアーズ社),『新・朝礼でちょっと考えてみたい52の話』(ストアーズ社)『新新・朝礼でちょっと考えてみたい52の話』(ストアーズ社),『小さな変化で,大きな流れを読む 朝礼でちょっと考えてみたい52の話』(ストアーズ社),『感動の経営~想いを贈る企業を目指して~』(PHP研究所),『社長は親になれ!』(日本実業出版社)など。