2月に設立10周年を迎えた米ジュニパーネットワークスは,2004~2005年に有力ネットワーク機器ベンダーを相次いで買収。事業を拡大してきた。一方,日本ではNECとの提携により市場開拓を図っている。スコット・クレンズCEO(最高経営責任者)に日本市場への2006年の戦略などを聞いた。(聞き手は(島津 忠承=日経コミュニケーション)
--2004年から2005年にかけては,セキュリティ装置の米ネットスクリーン,WAN高速化装置の米ペリビット・ネットワークスなどを立て続けに買収した。2006年以降も買収によって事業を拡大していくのか。
現在は買収より提携関係の拡大に強い関心を持っている。一例を挙げるなら,日本ではNECとの提携を深めていきたい。NECとの提携は市場を開拓するうえでの大きな潜在力となると見ているからだ。実際,2005年の結果には満足しており,2006年も関係を深められる自信がある。
--具体的にはどのような点でNECとの提携を深めていく計画なのか。
企業向け市場でいえば,VoIP(voice over IP)事業を強化する。NECのVoIPシステムと,当社の拡張性の高いネットワーク機器を組み合わせることで成果を上げられると見ている。
通信事業者向けについては,我々が共同して取り組むことで最大手の通信事業者への売り込みに成功を収めてきた。2006年も我々の技術とNECの大規模システムの構築力を組み合わせて,共同で売り込んでいくつもりだ。
--NECとの提携強化は,日本のNGN(次世代ネットワーク)市場の開拓も狙ったものか。
その通り。2006年の日本のNGN市場で優位に立つことが,当社の事業にとって大きなカギとなる。日本で成功を収めれば,その効果が全世界に波及すると考えられるからだ。成功できるよう戦略的に力を入れていくつもりだ。
--競合相手の米シスコシステムズも,富士通と提携して日本のNGNの開拓に力を入れている。この連合に対するジュニパーの強みは何か。
もちろん両社の実力は尊敬しているが,顧客となる通信事業者が抱く信頼感では,当社の方が高いとの自負がある。この信頼感こそがビジネスの機会につながると信じている。
--SOAP(simple object access protocol)などのプロトコルを活用し,ネットワーク機器を自動制御する動きが盛んになってきた。シスコは「SONA」(service oriented network architecture)と呼ぶコンセプトを掲げたが,ジュニパーはどのような戦略を描いているか。
シスコのSONAとは別の道を進みたい。SONAはシスコが独自に定めた仕様だからだ。我々はあくまでオープンな標準仕様にのっとってSOA分野に関わっていく。
現在の当社の製品群の80%は,すでに標準的なSOAPとXMLをサポートしている。ただ,SOAの分野はまだ市場が立ち上がって間もない。これから数年で標準仕様の変更があってもおかしくないと考えている。こうした状況にある以上,標準仕様に対応しておくことで,その時々に応じて必要なものを選べるようにした方が,顧客の利益につながると考えている。