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 IDFでは,ノート・パソコンなどの携帯機器に向けた2次電池や燃料電池に関する出展も多かった。2次電池では高エネルギー密度のLiポリマ2次電池や,Liサルファ2次電池など,そして燃料電池ではメタノール改質型の試作機が出展された。

 Liポリマ2次電池を開発中のパイオニクスは,体積当たりのエネルギー密度が615Wh/lの試作品を使ったノート・パソコンの駆動を披露した。同社は既に試作品を過去のIDFで数回出展しているが,今回は負極に用いるSn系合金材料の組成最適化を進めた結果,体積膨張率を従来の20%以上から,10%~15%程度に低減できたことを明らかにした。電極の膨張/収縮の減少と固体電解質の特性向上により,課題だった充放電サイクル特性を改善できたとする。250サイクルの充放電を繰り返した際でも元の容量の80%程度を維持できることを確認したという。「やっと250を超えて300サイクル程度まで行くようになった。300サイクルでも80%は維持できているはず」(パイオニクス)。

 さらに電池セルの量産出荷に向けて約20億円を投資して工場を建設中であり,2006年夏ころに完成予定であることも明らかにした。「当初の量産規模は月間40万~50万セルで,その後月間150万セルまで高める方針」(パイオニクス)。今回のIDFの出展でノート・パソコンを開発するメーカーのニーズを探り,製品化に生かしたいという。

 米Sion Power Corp.が出展したLiサルファ2次電池は,電荷のやりとりにS(硫黄)を使う2次電池で,重さ当たりのエネルギー密度が高いことが特徴である。「重さ当たりのエネルギー密度は350Wh/kg以上ある。従来のLiイオン2次電池の1.5倍程度のエネルギー密度になる」(米Sion Power Corp.)。ノート・パソコンの電池パックなどに適用した場合,同容量の電池パックを2/3程度の重さで実現できるという。今回のIDFではノート・パソコンに向けた電池パックとして試作し,実際に米Dell Computer Corp.の「Inspiron 600m」を4時間駆動する実演を行った。従来型のLiイオン2次電池では同寸法の電池パックが約700gなのに対し,Liサルファ2次電池では約400gで済むという。ただし体積当たりのエネルギー密度は従来のLiイオン2次電池よりは低い値にとどまっている。量産出荷までにさらに特性改善を目指す考えで,「販売は2007年末以降」(米Sion Power Corp.)としている。

ノート・パソコンを16時間駆動

 燃料電池に関しては,米UltraCell Corp.がメタノール改質型の燃料電池を出展し,ノート・パソコンを駆動する実演を行った。同社は前回のIDFにモックアップを出展していたが,今回はより最終製品に近い試作機での実演を行った。「液晶パネルの表示部を設けるなど,ほとんど製品版に近い形に仕上がっている。2006年後半から一部の顧客にテスト出荷し,2007年前半には民生分野と米軍用途の両面で販売していきたい。価格は未定だが,500ドルは下回るはずだ」(米UltraCell Corp.)。

 燃料には,濃度が67%のメタノール水溶液を使う。この燃料を200cc使い,標準的なノート・パソコンを約16時間駆動できるとする。会場では松下電器産業のノート・パソコン「TOUGHBOOK CF-29」を駆動させていた。「当初の用途の一つに米軍での使用がある。その要求では2日間の実使用に利用できることが求められており,それにあわせるため16時間以上(1日当たり8時間で計算)という目標を設定している」(米UltraCell Corp.)。システムは燃料カートリッジと本体で構成する。システムの外形寸法は150mm×230mm×43mm で,200ccのメタノールを格納した場合の重さは1.26kg。出力は25Wで,出力電圧は7.2V。燃料電池セルは2000時間以上の利用が可能とする。

(蓬田 宏樹=日経エレクトロニクス)