NECがBIGLOBEの分社化を検討し始めた(関連記事)。BIGLOBEといえば会員数1320万人(2005年9月時点),接続サービスの会員数でも400万人を超える(2004年の調査)巨大プロバイダ。ライバルと目される@niftyやSo-netをはるかに上回り,プロバイダ全体でもYahoo! BB,OCNに次ぐ接続サービス会員数である。パソコン通信のPC-VANから続く老舗であり,信頼感も高い。
一見良好な状態に見えるが,それでも分社化を考えるに至ったのは,コンテンツを強化するためだという。今現在でもコンテンツ会員だけで900万人程度いるわけだから,決して少なくない。コンテンツの内容もYahoo! BBのYahoo!を除けば,他のプロバイダと比べて充実度は高い。それでも十分と言えないほどコンテンツが重要になってきたということなのだろう。また,接続サービスだけでは,今後の発展を望めないということなのだろう。
実際,数年前までは儲からないビジネスの代表みたいなものだったインターネット上での物販以外のサービスは,状況が大きく変わった。例えば無料で使える動画コンテンツのサービスだけ取ってみても日本ではGyaOやYahoo! 動画(TVバンク),海外ではGoogle Video,YouTubeなど,質量ともにこの一年で様変わりした。またiTunes Music Store(iTMS)の隆盛はダウンロード・コンテンツでも商売が成り立つことをついに証明した。
ただ,コンテンツのビジネスがプロバイダ事業と大きく異なるのは「群雄割拠」といった状況がめったに起こらないことだ。勝ち組に入れるのは1社かせいぜい2社。質で圧倒するか,量で圧倒するか,抜きん出たところがないサービスでは太刀打ちできない。
いわゆる「Web2.0」の時代になるとその傾向はさらに強まる。ごく少数の勝ち組のコンテンツを皆が再利用する,という形になるからだ。一方,現状のBIGLOBEのコンテンツが充実しているとはいってもネット上での存在感ということになると今一つ。おそらくその辺りがNECの思いにあるのではないだろうか。
接続サービスだけの時代が終わりを迎えつつあるのは,コンシューマ向けの話だけではない。企業向けの通信サービスも同じだ。拠点間をつなぐということだけならば,もはや安価なインターネットVPNだけで十分と考える企業も増えている。特にこれから先,比重が増すと考えられる企業間取引のための通信などはほとんどがインターネット上で行われる。注目を浴びるのは次第にASPサービスに移っていくだろう。例えばGoogleが企業向けにGmailの提供をするといったものは急成長する可能性がある。
企業向けサービスでも,カギはコンテンツという時代はすぐそばまで来ているのかもしれない。