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 松下電工インフォメーションシステムズは、国際基督教大学から授業で使用するシンクライアントシステムを受注した。別の案件で失注したが、“戦略価格”で敗者復活商談を制した。

=文中敬称略


 「どうかもう一度見積もりを提示するチャンスをいただけないでしょうか。お願いします」。2005年2月、松下電工インフォメーションシステムズ(NAIS-IS)ソリューション営業本部東日本市場開発営業部開発営業グループの荒井貴志は、開発営業グループ長の田籠彰とともに国際基督教大学(ICU)を訪問し、頭を下げた。

 ICUが図書館に導入を予定していたシンクライアントソリューション商談でのことだ。NAIS-ISは営業活動で先行していたにもかかわらず、途中で参入した競合よりも約100万円高い見積もり価格を提出したために、次点に甘んじたのだった。

 「やり直しは認められない」。見積もりは一度だけという厳格なルールの前に、荒井たちは「失注」という厳しい現実に直面せざるを得なかった。

突発的な変更要求にも対応

 NAIS-ISは、シンクライアントソリューションを企業や教育機関に販売してきた。2004年9月28日、荒井がICUのITセンター長、冨田重成から電話でシンクライアントソリューションについて問い合わせを受けた。

 NAIS-ISとICUはこれまで特に取引はなかったが、電話での問い合わせに荒井はICUの本気を感じ取った。2日後には、訪問する約束を取り付けた。

 荒井は、冨田から課題について詳しく聞いた。ICUでは当時、米ヴイエムウェア製の仮想化ソフト「VMware」を使い、各クライアントパソコン上で英語版と日本語版のWindows、日本語版Linuxを稼働。学生が勝手に設定などを変更しても、再起動すれば元の状態に戻る仕組みを構築していた。しかし、新たにプログラムを追加する際には、1台1台を書き込みができる状態にしてプログラムをインストールしなければならず、大きな負担となっていた。「次回の授業で新しいプログラムを使いたい」。冨田は、講師からこんな急な依頼を受けることも珍しくなかった。

 これを解決する手段として、冨田が注目したのがシンクライアントソリューションだった。プログラムに相当する仮想ディスクをサーバーに格納しておき、ハードディスクを搭載していないシンクライアント端末の電源を入れると、ネットワークを通じてシステムが起動し、イメージが各端末に配信される仕組みだ。これだと、急なプログラム変更の依頼があっても、サーバー側の仮想ディスクを変更するだけで、すべての端末で新しいプログラムを利用できる。ICUは、まず手始めに図書館で使用していたクライアント端末100台の入れ替えを検討した。

 初回訪問から約1週間後、荒井は冨田から見積もりを依頼された。荒井は手応えを感じていた。しかし、ICUは荒井が提出した見積もりに対して難色を示した。ICUが想定していたよりも価格が高かった上に、クライアントに特定メーカー製の端末を使用することにも抵抗があったからだ。