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 技術イノベーションこそが産業発展の原動力となる---日経BP社はこうした考え方に基づき、1年に1度、新しい技術を表彰している。2005年度に開花したテクノロジーを対象にした「日経BP技術賞表彰式」が先週金曜日に開かれた。

 「たんぱく質結晶化技術」など延べ12件の技術が表彰されたが、「電子・情報家電部門」では東芝が開発した垂直磁気記録技術を応用したハード・ディスク装置(HDD)が選ばれた。東芝の携帯型音楽プレーヤに搭載したHDDでは,世界で初めて垂直磁気記録方式が採用された。既存の技術に比べて記録密度を高められるという特徴があり、今後はHDD技術の主流になる可能性が高い。実際、Seagate社も2006年1月に垂直磁気記録方式による製品を発売、さらに日立GSTも商用化を急ぐ。

 「Blu-ray Disc」対「HD DVD」の規格争いが象徴するように、光ディスク業界における日本企業の存在感は極めて大きい。ところがHDD業界においては、米国企業が常に主役だった。特にIBM社は、新技術の実用化で常に他社をリードし続けてきた。そのHDD業界において、日本企業である東芝が最先端技術の実用化に成功したことは、歴史的な価値があるといえよう。

 さて、垂直磁気記録技術の開発の歴史は約30年前にさかのぼる。1977年、東北大学教授の岩崎俊一氏が学会でこのアイデアを披露した。通常の記録技術とは全く異なる方式だったことから、産業界の期待感は高まった。IBM社を含む多くの企業が実用化を検討したが、そのプロジェクトは軒並み頓挫した。そんな中、粘り強く研究開発を続けたのが東芝である。

 日本生まれのアイデアを、日本企業が実用化できたのはなぜか。その答えは「人」にある。

 東芝で垂直磁気記録技術の開発を陣頭指揮した田中陽一郎氏は、実はこのアイデアを生んだ岩崎教授の愛弟子だった。つまり,岩崎氏が生んだアイデアを、岩崎氏が育てたエンジニアが具現化---これも、産学連携の一つの姿といえるだろう。ちなみに、東芝追う日立GSTの研究者も、岩崎教授の下を巣立ったという。

 「ものづくり」ではなく「人づくり」も、大学の大切な使命である。そう再認識させられるエピソードだ。